「新規事業をやりたい」クライアントのコンサルティングを行っていて、最も多い失敗がこちら。
一見、何の問題もないことのように思えるが何が間違いなのだろうか?
我々の感覚では、サービスや商品を「作ること」は、全工程のまだ3合目。
どれだけ苦労して作っても、それがマーケットに受け入れられ、利益が出なければ新規事業として完成しない。
当然のことだと思うかもしれないが、いざ自社が新規事業をやることになると、「どんな事業をするのか?」「何を作るのか?」「何を差別化ポイントにするのか?」などの検討から始まり、まとまった費用と労力と時間をかけて、新商品/サービスを作り上げると何か“成し遂げた"ような感じになる。
もちろん心血を注いで作った自信作なので、そのような気持ちになるのも人情として理解できるし、「売れるに決まっている」と多くの人が思うものだ。
しかし実際にはどうだろう?
我々の経験では、多くの企業が最も苦労するのが、新商品/サービス開発直後の販売であり、マーケティングだ。
自社の商品/サービスが市場に受け入れられている状態、いわゆるPMF(Product Market Fit)が達成されないのだ。
米国のスタートアップでもPMFが達成されるのは、約22%というデータもある。いわゆる"死の谷"であり、簡単ではないのだ。
PMF達成に必要な要素は販売やマーケティングだけではないが、最も重要であり、尚且パワーを要する。我々が思うに、新規事業の失敗要因の大半は「販売がうまくいかないから」だと考えている。
これについては、伝説的な経営コンサルタント・一倉定氏も『事業経営で最も大切で、最も難しく苦しく、最も根気強く推進しなければならない成功しない仕事は「販売」である』と仰っている。
やっと時間をもらえた見込み顧客からの厳しいフィードバックを、まだβ版の商品/サービスに反映したり、想定より伸びないリード獲得数を伸ばしたり、計画より高くついている顧客獲得コストをどのように下げるのか?など、大して売上があがっていない段階でもやることや、追加でコストがかかることなどが多数ある。
PMFが達成されて6合目。
組織体制が徐々に整えられて、黒字化など収支も納得できる状態が見えてきて、初めて新規事業ができた と言える。
お伝えしたかったことは、儲からなければ意味がない新規事業も、始めると「作ること」にゴールを置きがちになり、辛い販売やマーケティングへの時間的、金銭的、精神的余力が残されないケースが多いということ。また、そのやり方も代理店任せであったり、一方的に過度な期待を寄せる提携先へのアライアンス営業、プレスリリースを打ち、自社サイトやECサイトに掲載しただけといった場合が多い。何よりもその商品やサービスが売れてくれなければ困る存在である自社による主体的で積極的、そして継続的な営業・マーケティング活動を推進しなければPMF達成はおろか、知り合い以外の最初のテストユーザーを獲得することすら難しい。
「作ること」は3合目、「PMF」達成で6合目、「納得できる収支」達成でゴール。またそれらを達成するための最も重要で主体的に取り組むべきプロセスが、「販売」であり「マーケティング」である点を念頭に置き、取り組みたい。