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2024.6.24
オープンイノベーションとは?メリットとデメリットや成功の秘訣を解説
新規事業

新規事業開発マネジメントは、プロセスの標準化と効果的な資源配分を通じて再現性を高めます。イノベーションの再現性を高める新規事業開発マネジメント戦略を策定することで、事業運営におけるリスクを軽減し、持続可能な成長を実現することが可能です。オープンイノベーションは、新規事業開発マネジメントを成功させる手法のひとつです。

本記事では、オープンイノベーションのメリットや成功の秘訣について解説します。

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、他企業や有名実業家などの知識やアイデアを活用して新しい価値を創造する手法です。従来の閉鎖的なイノベーション手法とは異なり、企業の枠を越えて外部の知見を取り入れることで、革新的な製品やサービスの開発を目指します。

アクセラレータープログラムとは

アクセラレータープログラムは、大企業や自治体がスタートアップや起業家を支援し、短期間で事業成長を促進する取り組みです。スタートアップや起業家に必要なリソースを提供し、スタートアップのスケールを支援します。成長段階は、「シード」、「アーリー」、「ミドル」、「レイター」などに分かれており、数週間から数ヵ月の短期集中型とされています。

政府によるオープンイノベーション支援施策

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)と共に日本のイノベーション創出の現状と課題を分析し、2020年6月「オープンイノベーション白書 第三版」にて日本のイノベーション創出における改善策を提示しました。第三版では、イノベーションの本質に立ち返り、歴史をマクロ・ミクロの視点で整理し、世界や日本の市況を分析して日本のイノベーション創出を促進するための方策を検討しました。

オープンイノベーションのメリット

オープンイノベーションのメリットは、以下の3つです。

自社だけでは得られない新しいリソースを獲得できる

オープンイノベーションでは、自社の限られたリソースや知識を補完し、外部の専門知識や技術、アイデアを活用できます。結果として、新製品やサービスの開発スピードが向上し、市場競争力の強化が可能です。また、異業種との協業により新たなビジネスチャンスが生まれ、持続可能な成長が実現します。

新製品・新サービスの提供スピードが上がる

オープンイノベーションは、自社の限られたリソースや知識に加え、外部のパートナーから技術やアイデアを取り入れることで、開発プロセスが効率化します。これにより、市場ニーズに迅速に対応でき、競争優位性を保つことが可能です。また、多様な視点や専門知識が融合することで、革新的なソリューションを短期間で提供できるようになります。

新規ビジネスチャンスが広がる

オープンイノベーションは、パートナー企業と協力することで、自社だけでは発見できない市場ニーズや技術的な可能性に参画できます。これにより、革新的な製品やサービスの開発が促進され、新しい市場への参入が可能です。また、多様な業界や専門分野との連携により、既存の枠を超えた新たなビジネスモデルや収益源を創出することができます。

当社でも独自のアプローチで新規事業の立ち上げに役立つアイデア出しをサポートしています。

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オープンイノベーションのデメリット

オープンイノベーションのデメリットは、以下の3つです。

機密情報が外部に流出するリスクがある

オープンイノベーションは外部のパートナーや協力企業との情報共有が必要なため、機密性の確保が難しくなります。特に競合他社や悪意ある第三者からの情報漏洩のリスクが高まり、知的財産の保護が困難になる場合があります。このため、適切なセキュリティ対策や契約条件の検討が欠かせません。

自社の開発力が低下する可能性がある

オープンイノベーションは、外部パートナーとの協力に頼りすぎることで、自社内での技術やイノベーション力が衰える恐れがあります。また、外部への依存度が高まることで、独自性や競争力の低下につながる場合もあります。自社の開発力が低下するのを防ぐためには、バランスの取れたパートナーシップ戦略や内部の技術力強化が必要です。

ステークホルダーが増えることによる薄利化

オープンイノベーションは、多数のステークホルダーが関与するため、利益や権益の分配が複雑化し、利益が分散される可能性があります。また、意見調整や合意形成に時間がかかり、効率性や生産性が低下することも懸念されます。

オープンイノベーションを成功させるポイント

ここからは、新規事業の立ち上げにおいてオープンイノベーションを成功させるポイントを3つ紹介します。

事業の特徴を理解する

オープンイノベーションを成功させるには、事業の特徴を理解することが不可欠です。事業の特徴を理解するためには、まず、自社とパートナー企業の強みや弱みを明確に把握し、それぞれの事業が提供する価値を理解しましょう。次に、共通の目標や相互補完ができる分野を特定し、効果的な協力関係を構築します。これにより、リソースの最適化やシナジーの創出が可能となり、持続的なイノベーションを実現できます。

当社では、クライアントが提供している製品やサービスのマーケティング戦略に必要な市場調査をサポートしています。

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事業計画に合わせた製品やサービスを選定する

オープンイノベーションを成功させるには、事業計画に合わせた製品やサービスを選定することが重要です。事業計画に合わせた製品やサービスを選定するためには、まず、自社の事業計画を詳細に分析し、目標やニーズに合致する技術やアイデアを見極めます。次に、パートナー企業と協力して、計画に沿った製品やサービスを共同開発・選定しましょう。これにより、計画に沿ったリソースの最適な活用が可能となり、イノベーションの成功確率が高まります。

協業パートナーをどう見つければよいかわからない、という企業様には当社の壁打ちやリサーチサービスをお勧めしています。

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協業先リサーチ

適切な人材を採用する

オープンイノベーションを成功させるには、適切な人材を採用することが重要です。適切な人材を採用するためには、まず、イノベーションを推進できるスキルや経験を洗い出します。必要な知識やスキルをピックアップした上で、社内外のチーム間で円滑なコミュニケーションと協力を促進できる人材を揃えます。これにより、オープンイノベーションの成功率が大幅に向上します。

新規事業の立ち上げに向いている人材について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。

新規事業に向いている人材とは?求められる資質や特徴を交えて解説

オープンイノベーションの落とし穴

オープンイノベーションは、自社でなかなか新規事業を生み出せない企業にとっては渡りに船のような存在で、既存のスタートアップと協業・提携できさえすれば、あれほど得難かった「新規事業」を得られる方法です。

しかもゼロから新規事業を考える場合と異なり、そのスタートアップが世の中からの評価が確立していればいるほど社内への説得材料も豊富で、不確実性を嫌う大手組織との相性も良く、話を通しやすい側面もあります。

しかし、ほとんどの場合これは表面的・形式的な新規事業に過ぎないと言わざるを得ません。なぜなら協業先であるスタートアップはすでに自社単体で成立するソリューション(≒ビジネスモデル)を持っており、多くの場合、自社でも資金調達を行っているため、皆さんを含む多くの企業、世の中から見つけてもらえる状態になっています。

つまり、オープンイノベーションという「イノベーション」を謳っていながら、実態としては単に資金提供や、客付け、一部信用向上などの役務提供にとどまり、肝心の「イノベーション」や「事業創造」には関与できていないケースがほとんどです。

これは「乗っかり」というべきスキームで、大企業がスタートアップに「新規事業をさせてもらっている」状態とも言えます。

見え方としては、何やら新しい取り組みのようで、実態は大企業側がいなくても成立する大企業の「新規事業創出」という名目のためのどこか哀しさや虚しさを伴うスキームが世の中に多くあります。

弱者であるスタートアップにとってはありがたい話であるのも事実であるため、無駄とはいえませんが、大企業としては時間と労力、そしてそのプレスリリースの派手さの割に、ほとんど新たな価値を生んでおらす、出資もマイナー出資である事例を多く目にします。

オープンイノベーションが活性化している業界

上記のような落とし穴が存在することも事実ですが、オープンイノベーションを取り入れている企業、業界は多数存在しています。ここからは、オープンイノベーションを導入している代表的な業界を3つ紹介します。

自動車産業

自動車産業では、自動運転技術や電動化、コネクティビティなどの革新的な技術の導入に向けて、オープンイノベーションが進んでいます。自動車メーカーとテクノロジーカンパニーやスタートアップ企業との協業が増えており、新しいモビリティサービスや次世代車両の開発が進んでいます。

ヘルスケア産業

ヘルスケア産業では、医療機器や医薬品の開発において、オープンイノベーションが重要な役割を果たしています。大手製薬会社が大学や研究機関との共同研究を進めたり、データ解析やAI技術を活用したりして医療サービスの提供範囲を広げています。

情報技術(IT)産業

IT産業では、新たなテクノロジーやビジネスモデルの創出において、オープンイノベーションが頻繁に活用されています。特にクラウドコンピューティングや人工知能、ブロックチェーンなどの先端技術を活用したサービスやプロダクトが、企業間や学術機関との協業によって生み出されています。

オープンイノベーションの活用事例

近年は、社内のアイデアやノウハウだけでは限界を感じ、スタートアップとの協業を希望する大企業が増えています。また、政府や自治体でもオープンイノベーションを導入している事例は少なくありません。ここからは、オープンイノベーションの活用事例を3つ紹介します。

東急東京急行電鉄(東急不動産)×リノべる

東急東京急行電鉄(東急不動産)は、2015年11月に開催した第一回「東急アクセラレートプログラム」の参加企業だった、中古マンションのリノベーションを手がける「リノべる」と翌3月に業務資本提携。当初は、東急沿線の住宅市場活性化を目的とした一棟まるごとリノベーションマンションといったリノべるの事業分野での協業を想定していた。しかし、その協業範囲は広がり、オフィスや商業施設、民泊施設といった想定していなかった分野でも進んだ。経営課題でもある沿線の価値向上や既存事業のビジネスモデルの高度化について、大企業・東急電鉄がアセットと資金を提供し、スタートアップ・リノべるがノウハウとコンテンツを担い、事業共創が実現した。リノべるにとっては「中高年層にもよく知られた、大企業ブランドの『信頼』を得られたことで、採用面の安心材料にもなった」という。また東急不動産にとっては、「表面的なただのビジネス上の利害関係だけでなく、企業同士の思想や文化といった深い部分で一致したことが好循環を生んだ」という。2022年には東急不動産が事業主として、リノべるがプロジェクトマネジメント、総合企画・設計・監理・施工を担当し、企業社宅のリノベーション事業にも着手している。

KDDI×ソラコム

KDDIはスタートアップとの協業プログラムに10年以上取り組んでおり、「ソラコム」についても取引先の拡大支援などで成長を後押しした。

ソラコムはあらゆるモノがネットにつながるIoT通信事業を手がける。商談中の会話から業務提携が決まり、17年にKDDIから約200億円の出資を受けて子会社になった。大手の傘下に入ったことで、経営基盤が安定し、顧客からの信頼も厚くなったというソラコムは、ニチガスやソースネクストといった大口顧客を獲得し、7年間で回線数を75倍の600万回線に拡大した。24年3月期の連結売上高も79億円と19年3月期(単体)の6倍超に伸ばし、2024年3月にグロース市場に上場、スタートアップ企業が大企業の傘下に入りながら成長しIPOを実現する、スイングバイIPOと呼ばれるようになった。

ヤフー×dely

ヤフーは、2014年に創業した日本最大級の料理動画レシピサービス「kurashiru(クラシル)」を提供するdely株式会社に対し、2016年より子会社であるYJ2号投資事業組合による出資を行っており、2018年7月に約93億円で株式を追加取得し、同社を連結子会社とした。この取り組みによりdelyは、ヤフーが有するメディア・コマース事業等の多様なリソースを活用することが可能となり、delyが持つ独自性や優位性がより強化される、という。具体的には、ヤフーのメディア・コマース関連サービス等の利用者がクラシルのコンテンツを利用しやすくする取り組みをすすめ、ユーザー体験の向上を図るとともにdelyの更なる収益強化の実現、双方のシナジー創出の実現を目指す、としている。2020年からは「クラシル」のプラットフォーム規模を最大限に活用し、小売事業の集客・販促を支援するネットスーパー事業や電子チラシ事業にも参入している。

まとめ

本記事では、オープンイノベーションのメリット、デメリット、成功の秘訣、注意すべき点、活用事例について解説しました。オープンイノベーションは、新規事業のソリューション強化、マーケティング強化やマネジメント強化に役立ちます。メリットとデメリットを理解した上で、オープンイノベーションを活用し、新規事業の立ち上げを成功させましょう。

問い合わせ先


【代表取締役】
津島 越朗
【設立】
2016年 10月21日
【本社所在地】
東京都渋谷区恵比寿3丁目9番25号 日仏会館5階
【事業内容】
新規事業立上げの支援・コンサルティング
【公式サイト】
https://unlk.jp/