新規事業の立ち上げは、企業にとって成長を加速させるための重要なステップです。しかし、すべての新規事業が成功するわけではありません。失敗を最小限に抑えるためには、適切な撤退基準を設けることが不可欠です。
本記事では、新規事業の撤退基準と事業継続の判断基準を考えるポイントについて解説します。
目次
ここからは、新規事業が撤退する主な理由を5つ紹介します。撤退理由だけでなく失敗の確立などについても知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
新規事業が十分な利益を生み出せない場合、その事業を維持することは意味がありません。
企業が投入したリソースと収益のバランスが取れない事業は、経営上の負担になります。投下したコストや時間が見合う利益を生み出せない場合、企業は成長のための資源を効率的に活用できていないことになります。そのため、費用対効果が見込めない事業は早めに見直さなければなりません。
巨額の赤字や負債は、企業の財務状況を悪化させ、将来の成長に大きな障害となるでしょう。
企業が持つ赤字や負債が増加すれば、その分だけ財務リスクが高まります。特に新規事業が持つ赤字や負債は、将来的な事業計画や資金調達に影響を与える可能性があります。経営上のリスクを最小限に抑えるためにも、巨額の赤字や負債は早急に解消しなければなりません。
競合他社の台頭により、市場シェアを失い、売上や利益が減少すると、新規事業は存続の危機に直面します。
競合他社の市場参入や新商品の投入により、競争環境が変化することは避けられません。このような状況下では、企業は市場の動向を正確に把握し、競争力を維持・向上させる必要があります。競合が激化すれば、新規事業の存続性を再評価し、戦略の見直しを行うことが不可欠です。
経済状況の悪化により、消費者の購買力が低下し、市場が縮小する場合、新規事業は影響を受けます。
不景気による需要の低迷や景気回復の見通しが立たない場合、事業の継続はリスクが高まります。そのような状況下では、企業は市場縮小に対応するための柔軟性を持たなければなりません。需要の低迷に対処するために、コスト削減やマーケット戦略の再編成が求められます。また、新規事業の存続性を検討する際には、不景気の長期化や回復の見込みなど、経済情勢を踏まえた慎重な判断が必要です。
優れた商品やサービスであっても、適切なマーケティングが行われなければ成功することは難しいでしょう。マーケティング戦略の失敗により、商品やサービスが市場で受け入れられないと、新規事業の存続は困難となります。
効果的なマーケティングは、新規事業の成功に不可欠です。適切なターゲット層の特定や競合分析、プロモーション活動など、慎重な計画と実行が求められます。
マーケティングの失敗は、企業のリピーター獲得やブランド認知に大きな影響を与える可能性があります。したがって、新規事業の立ち上げに際しては、マーケティング戦略の慎重な検討が欠かせません。
新規事業を立ち上げる際には、あらかじめ撤退基準を定めておくことが重要です。ここからは、新規事業において撤退基準を設定しなければならない理由を3つ紹介します。
あらかじめ撤退基準を定めておかなければ、新規事業の状況を正確に分析できないでしょう。その結果、問題が放置されたり、失敗を認識するまでに時間がかかることがあります。失敗をしていることに気が付かないまま、取り返しのつかない状況に陥ることも少なくありません。
撤退基準がない状況では、事業の存続や撤退の判断が主観的になりがちであり、間違った判断を下す可能性が高まります。
事業の失敗を素早く認識することは、企業の資源を保護します。
撤退基準は、企業が失敗の兆候をいち早く察知し、迅速かつ適切に対処するためのガイドラインです。これにより、事業が深刻な赤字や負債に陥ったり、競合他社によって市場シェアを奪われたりする前に、対策を講じるでしょう。
あらかじめ撤退基準を定めておくことで、やるべきことが明確になります。それにより、モチベーションの維持という副次的な効果も期待できるでしょう。
このように、新規事業の立ち上げにあたりあらかじめ撤退基準を定めておくことは、経営上極めて重要です。そして、どのように撤退基準を定めるかも新規事業の成功確率にも大きく寄与します。
新規事業の撤退には、積極的な撤退と消極的な撤退の2つの主要なタイプがあります。ここからは、2つの撤退基準の特徴を紹介します。撤退基準以外にも新規事業に必要な知識やノウハウを得たい方は、当社のアカデミアをご利用ください。
積極的撤退は、事業がまだ成長段階にあるうちに戦略的に撤退することです。
積極的撤退は、利益が出ている間に適応される基準で、将来的なリスクを回避することを目的とします。企業は、事業が最高の成績を記録している間に手放すことで、資産を最大限に活用し、将来的なリスクを最小限に抑えます。
消極的撤退は、やむを得ず事業を撤退することです。
赤字や不景気、競合他社の影響など、外部要因により事業が継続不可能と判断される場合に適応されます。消極的撤退は、合理的な判断が難しく、企業は投入した資源に見切りをつけなければなりません。
ここからは、撤退基準を定める際に考慮すべきポイントを2つ紹介します。撤退基準の定め方について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
あらかじめ定めた数値目標や目標達成率に基づいて、事業の成果を評価し、撤退するかどうかを決めるのも見極めるポイントのひとつです。
あらかじめ数値計画に基づく撤退基準を定量的に定めることで、撤退判断をするに際して主観を挟む余地が少なくなります。そのため、客観的な数値に基づいて冷静な判断ができます。
また、撤退基準が明確であるため、主観的な要素が少なく、リスクを最小限に抑えることも可能です。
市場や競合他社の動向も事業撤退における判断基準のひとつです。
市場や競合他社からのアプローチでは、最新の情報に基づいて事業の将来性を評価します。それにより、状況に応じて適切な判断が可能です。しかし、主観に依存するため、判断ミスのリスクも伴います。計画通りの進行が必ずしも成功を保証しないため、常に最新の状況を確認し、柔軟に対応しなければなりません。当社のマーケットリサーチでは、さまざまなリサーチメニューを通じて、市場や競合他社の分析をサポートしています。
ここからは、有名企業の撤退基準を6つ紹介します。
サイバーエージェントは、営業利益によって事業を3つにランク分けしています。
2四半期連続で減収減益になった場合は事業責任者の交代し事業を撤退させます。これにより、業績低迷や市場変化に柔軟に対応した成長戦略の策定が可能です。
リクルートは、事業の成長性や収益性が見込めない場合、迅速に撤退を決定します。
具体的な基準のひとつが、事業開始後1年以内に収益が見込めないことです。これにより、限られたリソースを有効活用し、将来の成長に集中できます。
ソフトバンクは、投資回収期間が長期化する場合は、事業を再評価し、必要に応じて撤退します。
一例として、ロボット開発事業のPepperについては、投資回収期間が長期化することが見込まれました。そのため、事業の見直しを行い撤退を決定しました。これにより、リソースの効率的な配分を実現し、成長戦略を調整しています。
メルカリは、サービス開始後3ヶ月での成長指標を基に撤退を判断します。
具体的には、広告費の投入に対する成長率などの数値などがあります。このような迅速な判断基準により、競争激化や市場変化への迅速な対応が可能です。
DeNAは、KPIが計画に対して順調かどうかを確認し、3ヶ月に1回事業を継続させるかどうか判断します。
満足度の伸びやユーザー熱量などを基準にすることで、事業の進捗状況を把握し、適切な戦略の調整を実現しています。
ユニクロは、事業の収益性や市場の反応が事業撤退における判断基準のひとつです。
具体的には、一定期間内に目標売上を達成できない場合や、顧客からのフィードバックが悪い場合に撤退を決定します。これにより、ブランド価値の維持と資源の最適利用を実現しています。
今回は、新規事業の撤退基準と事業継続の判断基準を考えるポイントについて解説しました。
撤退基準の設定は、経営者や経営陣の重要な責任です。新規事業の立ち上げとともに、計画的かつ慎重に撤退基準を設定し、企業の持続的な成長をサポートするために、適切な判断基準を設けましょう。

