ニュース・コラム

2025.3.05
ネーミングの威力(前編) ~新規事業成功のためにどう名付ければよいか~
新規事業

※本コラムは2025年2月12日(水)に開催した株式会社unlockのウェビナーを、前編・後編の2回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツです。

【登壇者紹介】

津島 越朗(代表取締役)

2005年 株式会社リクルート入社(人材事業営業部)

2008年 同上(インターネットマーケティング局、マーケティング・新規事業企画)

2013年 株式会社DeNAライフサイエンス(東大医科所と遺伝子検査の立ち上げサービス&マーケ責任者)

2014年 株式会社DeNAロケーションズ 代表取締役社長(海外テクノロジーベンチャーとのJV)

2016年 株式会社unlock設立

皆様、本日は「ネーミングの威力~新規事業のためにどう名付ければよいか~」にご参加いただきありがとうございます。

今日はこの3部構成でお届けします。ネーミングが持つ驚くべき影響力を、改めて皆さんに感じていただきたいと思います。

  • 第1部 ネーミングの威力
  • 第2部 ネーミングの分類
  • 第3部 どう名付けるべきか?

    古今東西いろんなヒット商品サービスを分析し、共通点や法則を探るのが第2部で、自社の新規事業プロダクトにどのようにネーミングするべきかを考えられるようになるのが、第3部です。早速、本編に入りましょう。

    第1部:ネーミングの威力

    たかがネーミング、されどネーミング。単なる名前なので、製品サービスの本質的な機能や品質を変えるものではありません。

    いくら立派な名前があっても中身が伴わないと駄目だし、名前が良くなったからといって別に中身が良くなるわけでもない。当たり前です。なので「中身が良ければ名前なんて関係ない」とお考えの方も多くいらっしゃいます。

    しかし、ネーミングには単なる名前以上に、成果に影響を及ぼす驚くべき例がいくつもあります。今日はこのネーミングの威力が発揮された例から見ていきましょう。

     

    まずはこちらの「ワゴンR」、スズキの看板商品です。実はまさかの、社長のダジャレから生まれたネーミングで、元々は「ZIP」という名前だったそうです。既に役所への申請書類にもその名前を書いていたのに、当時の鈴木社長はこの名前があまりしっくりきていなかったみたいです。車のタイプ名称はワゴン、「スズキにはワゴンもある、だからワゴンあーるでいいじゃないか」と、ちょっと信じられない経緯で「ワゴンR」になったそうです。

    もしこれがフィットしなかったらどうなっていたのかとは思うのですが、効果的に「軽にしてワゴン」という特徴や、ワゴンであるという商品カテゴリーを「ZIP」に比べると訴求できているという点で、結果論ですが非常に良かったのではないでしょうか。ネーミングの威力ビフォー・アフター比較はできませんが、成功した例と言えると思います。2021年には軽自動車販売台数ランキングで1位など、素晴らしい実績を出していますね。

     

    続いて、伊藤園の「お〜いお茶」です。これも皆さんご存知のプロダクトですが、知られざるストーリーがありまして、最初は「缶入り煎茶」という名前で発売していたそうです。

    当初は4年間全く売れず、どうしてだろう?と考える中で、顧客から「煎茶という字が読めない」という声が寄せられたそうで、製品の魅力が十分に伝わらず、売上が伸び悩むというふうになっていました。

    この「缶入り煎茶」のテレビCMでの中で「お〜いお茶」というフレーズが使われていて、それに馴染みがあったので商品名にして「お〜いお茶」になったそうです。このリニューアル後、売上が6倍まで急増しています。

    プロダクトは同じなのですが、ネーミングが変わって売上が変わったという、ネーミングの威力がまさに発揮されたビフォー・アフターの実例です。こちら、リニューアル4ヶ月前のデザインをご覧ください。「煎茶」の字が読みにくいということで、ひらがなの煎茶というデザインも入っていますが、現在の「お〜いお茶」の原型が既にあります。こういう形で候補が並べられていたそうです。

    ちなみにこちら、時代を感じる島田さんという方が出ていたテレビCMが「お〜いお茶」の由来になったということです。前時代的とも受け取れるネーミングですが、それを現代の人に感じさせつつ、時代を超えるブランド戦略も非常に素晴らしいと思います。

     

    続いてご紹介するのは、医食同源ドットコムさんの「Nanoniフェイスタオル」という商品です。元々は「使い捨てnonpaper towel」という名前でリリースしたそうで、使い捨てでペーパー紙じゃないタオル、という説明的でわかりやすい名前でした。

    ぱっと見て何のことかわかるネーミングで出ていたにも関わらず、「何に使うの?」という用途の解釈が分かれて、売り場がおそらくドラッグストア等で分散し、知名度が上がらなかったことがあったそうです。

    消費者の声を分析すると洗顔シーンで重宝されているとことがわかり、「いつでも清潔Face towel」と改名して、さらに2年後に現在の「Nanoniフェイスタオル」へ変更したところ、月平均出荷数が1.5倍になったという事例です。

    最初、説明的で決して悪くないように思えた名前だったのに売れなかった。そこでネーミングで商品カテゴリーを整理してヒットに繋がったというケースですね。少しの工夫かもしれませんが、ネーミングが売上を左右する力がこういう事例になるわけです。

     

    続いて有名な事例、大ヒットした「鼻セレブ」です。元々は「モイスチャーティッシュ」という名前だったそうです。

    「モイスチャー」と「ティッシュ」なので、おそらく多くの方はイメージが湧く、何のことかわかるネーミングと言えるでしょう。こういう名前で出したにもかかわらず、ウェットティッシュと間違えられ、「濡れてないじゃないか」という混乱を招いたそうです。なかなか予測できませんよね。

    100個近い代案から、「鼻」というインパクトのある漢字と「セレブ」という高級感を示す言葉を組み合わせることで、商品コンセプトが一目でわかるように再考されたそうです。結果、ネーミングを体現するパッケージも非常に秀逸で、これらの変更も相まって売上が10倍以上になり、ネーミング大賞2022で大賞を受賞したという例です。

    「モイスチャーティッシュ」は非常に説明的でしたが、図らずも誤解も生んでしまったのです。鼻セレブがすごいのは、単にその誤解を解けば良いというアプローチではなく、大胆かつクリエイティブなネーミングに変更したところです。

    商品の品質の訴求とブランドイメージ形成、差別化を一気に実現したという、真似できそうでなかなか真似できない例です。燦然と輝く、ネーミングのビフォー・アフター事例と言えるでしょう。

     

    続いて直近の例で、昨年末にリリースされました「mixi2」です。mixiはあの有名なサービスで、特に私のようなアラフォー世代はすごく使っていたSNSなので、登場したときに思わず「おー」と言った方も多いかもしれません。この「mixi2」は個人的に非常に研究しがいがあるというか、すごく効果的だと思ったネーミングです。

    元々、プロジェクト開始時点から社内では自然と「mixi2」と言われていたそうです。意図としては、SNSブランドとしてわかりやすく、社名もミクシィであることからmixi2が一番良いという判断で決定されました。

    この経緯を自然な感じで書いていますが、私からすると、外から見ると、結構大胆なネーミングだと思います。今まであったブランド、ややもするとオワコンって言われたりしているブランドを、その知名度にあえて乗っかるような形で大胆なネーミングじゃないかと。

    こういう大胆なネーミング戦略がうまくいって、リリース1週間で登録ユーザー数が120万人です。非常に大きな数字だと思いますし、それだけ期待や驚きが多かったということだと思います。

     

    ネーミングの威力を表す事例は、挙げればきりがありません。先ほどの「お~いお茶」のように、中身は一緒でもネーミングが変わったことにより売上が変わるということで、ネーミングは売上に影響を及ぼす要素であることは疑いようがないと思います。

     

    改めてネーミングの効用を整理してみましょう。大きく4つの要素が、ネーミングの効用・効果と言えます。

     

    まず①第1印象は、いわゆる「つかみ」です。これをネーミングによって担保していく。

    ②は記憶・認知、③が差別化・ブランディング、④がメッセージ・世界観の伝達です。この4つによって結果的に売上を左右する力をネーミングは持っている、と理解できると考えています。

     

    では、自社のサービスや商品など新規事業のプロダクトはどう名付ければいいのか、という本題へ徐々に入っていきましょう。

    おそらく「たった1つの法則」というのは無く、このようにネーミングをつければヒットする、売上がUPする、というのは無いと考えています。次の第2部で、自社に合うケースを見つけていただき、そのケースの中で自社に合うネーミングの法則にたどり着いていただきたいと思います。

    第2部:ネーミングの分類

    今回のウェビナーにあたり、100個のヒット商品・サービスのネーミングを我々のほうで集めてみました。

    ネーミング分類のアプローチをどう選定するか、かなり苦労したのですが、一旦このような形にまとめました。BtoCとBtoBに分け、さらにそれぞれのモノ・サービスで分けて、合計4カテゴリーです。

    その4カテゴリーには1990年以降~直近までのヒットしたサービス・商品を対象に25個ずつ、日本で展開されている商品サービスに限定し、各年代をバランスよく織り込んでいます。(※本記事では当該図表を掲載しておりません)

     

    ヒットした25個の1つ1つを見ていくと長くなってしまうので、ざっと顔ぶれをご覧になってください。まずはこちら、BtoC×製品(モノ)のカテゴリーの25件です。缶コーヒーのBOSSから始まり、プレイステーション、Windows 95、ヤクルト1000、GoProもありますね。

    続いて、BtoC×サービス(コト)のカテゴリーです。カラオケのビッグエコーから、ゼクシィ、PayPay、chocoZAPまで25件。

     

    3番目、このBtoB×製品(モノ)のカテゴリーの製品は一気にターゲットが狭くなり、聞いたことがないネーミングばかりになって見づらさが出てきます。コピー機やロボットなどが多いですね、例えばこの「LIMEX」は素材系です。

    最後にBtoB×サービス(コト)のカテゴリーは、社名じゃないかという日本M&Aセンターからアスクル、WeWork、Slack等ですね。

     

    unlockではこの25件×4カテゴリー、合計100のネーミングをリストアップして、あらゆる切り口で分析し、要素の抽出を行いました。ここから何が見えてくるかをお伝えします。

    いきなり結論として、大まかにこういったことが言えると考えています。

     

    BtoC・BtoB、それからモノ・コトでのマトリックスの4象限あります。

    左上のBtoCの「モノ」はブランドイメージや所有欲を刺激する造語で、例えばSony α7など親ブランド名を活用しているものもあります。それから、機能やデザインの先進性を想起させる名前が多いです。Dyson Supersonic等ですね。

    右上のBtoCの「コト」は、体験価値や利便性をわかりやすく示す、例えば「ほけんの窓口」。それから短い造語・日本語で「利用シーン」を想起させるような、例えばPayPay等ですね。こういったものがヒットサービスの中で多い傾向にありました。

     

    続いて左下のBtoBの「モノ」、先程のリストで見づらかったのは企業名に加えて型番が名前になっているからです。例えば「FANUC Robot M-6i」など、一般の方をターゲットにするわけではないこともあり、読みづらい、見づらいのですが、こういった名称が多いのです。技術機能を直接表現して導入メリットを強調するような「無人コントローラー」等も多い傾向にありました。

    最後は右下、BtoBの「コト」。機能や導入効果を単語の組み合わせで表現しているものが多かったです。「SmartHR」とか。あとは短くて覚えやすい名称で、企業を導入担当者に訴求する「Lancers」とか、こういったものが全体としての大きな傾向と言えると思います。この他にもいくつかの切り口で分析をしています。

    先ほどの4象限と重なるところは大きいのですが、BtoBとBtoCで見てみたとき、それぞれどんな傾向があるのかを記しました。

    まずBtoCはモノ・コト関係なく、短くてキャッチーな造語・英単語が多いです。ここにあるロッテのFit'sやTikTok、それから直感的に機能や価値がわかる名前で、ほけんの窓口、超立体型マスク、iPhone等。あとは、親ブランドから派生したサブネーミングでWindows 95、ヤクルト1000、mixi2、こういったネーミングはBtoCに多いです。

    BtoBもやはり企業名ですね。ブランド名+型番、それから業務効率化やコスト削減、技術優位性などの価値が連想できるもの。先ほど紹介した例ではChatwork等です。

     

     

    BtoBにおいても、短くて覚えやすい造語が増えている印象です。スタートアップに多いのですが、freee、SmartHR、ビズリーチとか、こういったものがBtoB向けのネーミングでも増えてきているようです。

    続いて、時代性です。時代にどういった傾向があるのか、特に直近の傾向はどうなのか。AI、DX、サブスクなどで新興企業が乱立しているのが2020年代かと思いますが、より短い造語でどんどんネーミングが短くなっています。短い造語や英単語、機能直球型のネーミングが増えている傾向です。先ほどのPayPay、造語ではSlackとかですね。今、若い人の間で爆発的にヒットしているBeRealとか、こういう短い単語や造語が非常に増えています。長い名前がとにかく減ってきている印象です。

     

    次は、モノ・コトでBtoB・BtoC関係なく、その傾向を改めてまとめてみました。重複もありますが、左側のモノでいうと、まず物理的商品としてはブランド力を冠したネーミングが多い印象です。dyson supersonic、Apple Watch、SONY α7、ネスプレッソなど。iPhoneは、iPhone自体がブランドなので、iPhone16ですね。こういう形で企業のブランド名を持ってきて、プラスアルファがBtoC・BtoB問わず多い印象です。

    それから右側のサービス(コト)は利用シーン、体験価値を想起させるネーミングが多いです。先ほどご紹介していないものでは、マッチングアプリのpairs、AskDoctors、ふるさとチョイス、こういった名前はコトで言うと非常に多い印象です。

     

    このように、いくつかの切り口で100のヒット商品・サービスのネーミングから、いろんなことが見えてきたかと思います。後編では、自社のプロダクトにはどう名付ければいいのかをご紹介いたします。

     

    ※続きはこちらからご確認ください。

     

    問い合わせ先


    【代表取締役】
    津島 越朗
    【設立】
    2016年 10月21日
    【本社所在地】
    東京都渋谷区恵比寿3丁目9番25号 日仏会館5階
    【事業内容】
    新規事業立上げの支援・コンサルティング
    【公式サイト】
    https://unlk.jp/