※本コラムは2025年3月12日(水)に開催した株式会社unlockのウェビナーを、全3回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツとなります。
前回の記事はこちら:技術の再解釈による新規事業アイデア考案(その1)


では具体的にどうするのかという話です。まずは、先程の2つのステップ「①価値への変換」と「②需要とのマッチング」です。価値への変換から具体的にどのように行っていくのかを見ていきます。
そもそも技術は何のためにあるのでしょうか?
本来は、特定の目的を達成するために生み出されたものです。そうではないものもあるかもしれませんが、ほとんどがそうだと思います。
そして現状、ほぼそのためだけ。何かを製品の性能を出すために生み出されたものが、そのためだけに存在している手段となっている場合がほとんどだと思うのです。これを「価値へと変換」していくというのが今日のお話です。


具体的な手法としては、技術の規定を最初に行います。この技術はどういう技術なのか、ということを規定します。その規定した技術にどういった特性があるのかを、今の用途、活用されている技術の特性、機能、これらに限定せず、精査します。他にどんな技術特性があるのかということを、今更感はあるかもしれませんがたくさん出していきます。
そして、それぞれ出した特性を“価値”に変換していくのです。ここで言う価値とは、特定の対象(ユーザーや市場)が抱える課題を解決することによって生まれる利益や利便性です。
特性を価値に変換するという手法はこの後で具体例を使ってお話ししますが、まずは抽象的な形で、こういうようなステップで進めるということをご理解いただければと思います。
実際にはもう少し細かいステップを踏むことでより精度が上がります。それは有償版でご提供していますので、今日のところは大まかな考えの中で、これでも新規事業が生まれることはあるので、ぜひ持ち帰っていただきたいと考えております。
では、具体的な例を挙げていきましょう。
最初はシリウス社という新興メーカーです。この会社の製品を例に、先ほどのステップに当てはめてご説明しますが、まず具体例となる製品のご説明をします。
画面には2つの製品が並んでいますね。左側は元となる製品で、右側が新たに生み出された商品です。
左側の元の商品は「switle(スイトル)」という商品です。これ自体が掃除機みたいですが、実は掃除機につけるヘッドの部分です。「水洗いクリーナーヘッド」とあるとおり、ここに掃除機の吸い込みの部分をヘッド交換のように連結する使用方法になります。右側は介護用洗身用具「switle BODY」と書いてあります。
それぞれヒットしていますが、説明をもう少し詳しくさせてください。
まず、元の技術が使われているのが左の「switle(スイトル)」という製品です。水を噴射して、同時に吸引を行うという世界初の技術であり、掃除の常識を変えているということでヒットしています。
一番象徴的なのは、おそらくカーペットの掃除でしょう。子供の食べこぼしとかペットとか、なかなか洗いにくいカーペットの汚れを、面倒な工程なく普通の掃除機のようにきれいにするという製品です。水を噴射して汚れを浮かせてそのまま吸い取るので、実際には洗濯をするのと同じような効果が出ているという画期的な製品になります。
もう一つ、ここで使われている技術を使って生み出されたのが、右の洗身用具です。
ピンと来られた方いらっしゃるかもしれませんね。私は最初あまりピンとこなかったんですが、これは同じくシャワーヘッドの部分を先ほどと同じく人の体に水を吹きつけます。ここで言う人とは介護される側の方、お年寄りの方ですね。介護される側の方に、水を吹きつけて吸い取るという入浴です。
入浴は、介護される方にとってリラックスできる時間ですし、衛生面でも重要ですが、介護現場において人手不足かつ負担が重い作業です。これをベッドに寝たまま介護される方の体をきれいに洗って、入浴と同等の効果を得ることができるのが「switle BODY(スイトルボディ)」という製品です。
女性でも、老老介護というお年寄りの方でも手軽に持ち運べる軽量設計が実現されていて、非常に優れた製品になります。
この2つの製品を例に、先ほどのフレームに当てはめてお話をさせてください。
まず技術の再解釈です。技術の規定をして、特性を精査して、価値を検討するということを実際に見ていきます。
画面左側の「技術の規定」は、「水を用いた洗浄と吸引を組み合わせることで、対象物の表面の汚れを効率的に除去するクリーナーヘッド技術」と規定できると精査します。
ここでの精査とは、ここで使われてない技術特性を出すことと、ある意味一緒になっている技術を分解する、という意味合いもあります。
まだまだありますが、大きなもので言うと「水を吹きつける、それから吸引する、同時に汚れを除去する」ということも言えると思います。それから「接続型デバイス」ということも技術というように広く解釈できますし、「水と吸引のバランスを制御している」とも言えると思います。
こういったこと、自分たちとしては当たり前としてやっていることも書いて出していくのがポイントです。
次に、価値を検討していきます。
この辺も見方によっては冗長といいますか、面倒で今更感のあるプロセスに見えるかと思いますが、画面のような形で細かく1個1個出していただきたいところです。後々に重要なマッチングで役に立ちます。
例えば「水を吹きつける」だと「汚れを落とす」「対象物を湿らせる」「冷却する」。いかがでしょう?
1個1個見れば当たり前でも、この「水を吹きつける」という技術の特性だけで、この3つがパッと出てきますでしょうか?
これがまず重要なのです。1個1個考えるのが面倒であれば、それこそチャットGPTなどにこの技術特性を入力すればバーッと出てくるので、ぜひこれを言語化し、表出するということをやってみていただきたいと思います。
技術の再解釈の2つのうち、「①価値への変換」の部分はこれで終わりです。これが①でやっていただきたいことです。技術はこのような形で存在していても、特性を精査、分解して、それぞれの価値に置き直すということをやっていただきたいと思います。
ここは非常に重要なパートなので、もう一つ、別の例で同じフレームに当てはめてみましょう。
こちらの画面は京セラさんの例です。祖業であるセラミックスにおいて、エンジニアリングセラミックスという製品カテゴリー名だそうですが、粉砕、結晶、研磨などの技術を使って作られている耐摩耗・高靭性セラミックス材料・製品になります。
今回の例は、その結晶技術を応用して最近ヒットしてきているのが人工宝石「クレサンベール」です。
人工宝石は以前から長く開発に着手されていて、実際の販売もされていたようですが、最近は宝石を掘る労働環境が悪いということの改善、減らすということやエシカル消費、自然破壊につながるという背景があるようです。
この記事に、品質の良い人工宝石が40代以上に人気とありますね。価格帯的にも決して安くはないのですが、コストも半分~10分の1で人工宝石が作れるということで非常に人気になっているようです。
こちらを先ほどのフレームに当てはめて考えていきます。
まず、セラミックスの結晶技術の特性を精査します。原料の調合、粉砕、混合のノウハウ、焼成プロセスと結晶化の制御、研削・研磨技術。実際はもっともっと細かくて、専門的な精査になると思いますが、今日はこの画面のようにわかりやすく抽象度の高い状態で分解して置いてみました。
それぞれを価値検討という形で価値に置き換えるわけですが、専門的な内容で私も読むのがおぼつかなくなるので、ここは「こういうふうに分解して価値を検討できるんだな」と、ざっと見ていただければと思います。
先ほどの宝石は「結晶化」ですね。これだけではありませんが、その元の技術が使われていることが強調されていました。
こういったものを「需要とマッチング」させていくことで新製品を生むというのが、繰り返しですが、本日お伝えしている手法になります。
シリウスさんとこの京セラさんの例で、技術の価値転換まではなんとなくご理解いただけましたでしょうか?
ここから需要とどうやって結びつけるのかというところですね。そもそも「ベースとなる需要はどうやって探すのか?」というところで苦しまれている方も多いかと思うので、そこについてもご説明します。
では技術の再解釈の2つのうち、「②需要とのマッチング」のお話に入ります。
実はベースとなる需要の探し方はたくさんあります。


なぁんだ、と感じるところも結構あるかもしれません。大きく分けてミクロとマクロがあり、ミクロはまずお客様に聞くということです。それから自分の周りにいる人に聞くっていうのも、立派な需要の探し方です。自社の同業である競合を調べるというところも、もちろんです。
あの競合が何を狙っているのか、どういうニーズを見つけたのか?みたいなことも、日常的に皆さんがやっていらっしゃるかと思いますし、立派な需要の探し方の1つだと思います。
マクロでは、世界の動向を読むというのがちょっと大きい話のようですが、「需要」は言い換えると「課題」ですね。これは本当にたくさん転がっていて、例えば国連の世界経済状況予測で、こういったところで解決されてない問題、世界の課題、そういったページもあるので、今何が問題になっているのかは世の中に溢れています。こういった情報からも取れます。
もう少し身近な消費トレンドみたいなものも立派な需要の探し方になると思います。いわゆるヒット番付とか、ヒット予測、伸びるビジネスとか、当然こういったものに当たる・当たらないはあるものの、一定の根拠があります。社会構造の変化で、今後こういうのが伸びるのではないか? 例えばお一人様消費ですね。あらゆることが伸びるんじゃないか、ということを知ってはいても常に頭に置いていないものもあるので、こういったものを参考にするというのも非常に有効なやり方です。
技術動向を読む。これも業界リーダーや業界団体が技術ロードマップを出しているケースもあると思いますし、こういった技術ロードマップから見ていただくというのも一つかなと思います。
このような形で需要の探し方は他にも色々あると思いますが、どうやって需要を探せばよいのかと考えると、一見難しくても、実は需要・困り事は世の中に溢れているのです。
では、そんなにたくさん探し方があるなら、難しいのは「どれがいいのか?」ということだと思います。我々としましては、一番良い方法は「お客様に聞くこと」だと考えております。もうメリットだらけです。


お客様へのヒアリング。これはまず「接しやすい」のがメリットです。全く知らない相手よりもコンタクトを取りやすいことが多いです。特に今お取引のあるお客様の場合、我々もよくお客様へ「新サービスを考えたので、一度ちょっとお話を聞いていただけませんか?」という感じですね。
実は今日もあるお客様にお願いしたのですが、快くお話を一時間ほど聞いてくださったり、ご意見くださったりということがありました。大変ありがたいことで、こういったような特徴、メリットがあると思います。
それから「顧客になりやすい」というメリットがあります。いざ販売の段階になった時、その課題がお客様とマッチしている場合、そのお客様の課題を解決する場合、お客様に実際なっていただきやすい点があります。
この辺は実際に新規事業案として上に上げるときにも、非常に重要な説得材料にもなります。既にこのお客様にはこういう課題があって、製品が出たら買ってくださるという確約はいただいていなくても、かなり前向きに検討してくださっている、と言えます。N=1だったとしても、これがあるかどうかというのはかなり重要で、顧客になりやすいというところも非常にメリットです。
もう1つのメリットとしては「アピール」ですね。少し打算的に聞こえるかもしれませんが、今よりももっと目の前のお客様の役に立とうとしている姿勢が伝えられる。こういった効果もあって、お客様のヒアリングは非常に重要だと思っています。
これに対して「目の前のお客様に聞くな!」という反対意見もあり、確かに様々な進め方があるものの、我々の経験的にお客様へのヒアリングは非常に有効だと思います。
我々unlockはお客様に「新規事業アイデアをご提案する」という「アイデアプランニング」サービスを運営しています。これを3回ほどご利用いただいたお客様で、さすがに我々単独ではご提案できるネタが無くなってきた時がありました。
そこでお客様へ、「大変申し訳ありませんが、よろしければ皆様のお客様に、我々unlockがヒアリングさせていただく機会を頂戴できせんか?」とお願いしたのです。つまり、「お客様のお客様」のお話を聞くということです。そこで我々がヒントを得られるかわからないとしても、ご協力をいただけて、その結果ちゃんとご提案できるものがたくさん見つかりました。そういった経験も踏まえて、お客様へのヒアリングは非常に有効だと考えています。
お客様の話を聞くのは良いし、様々な方法で課題や需要を集めるのは良くても、目の前にそういった情報が集まってからの分析が十分にできないことでお困りの企業様も多いです。こちら、unlock総研のアンケートでも見えてきます。


自社技術を活用して、新規事業を検討、推進するにあたって、最も苦労されたテーマは「需要・マーケティング分析が十分できない」。ここを踏まえて、お話を進めていきます。
いったん先ほどの「①技術の価値変換」に戻ります。switle(スイトル)の画面を再掲します。この中で「汚れを除去する」「しつこい汚れを簡単に取り除く」ということにフォーカスし、需要をマッチングさせたいと思います。
「しつこい汚れを簡単に取り除く」という価値に対し、どういった需要があるのかを調査するという形で、例えばお客様に聞く、自社でいろんな調査をする、ということは有効です。
世の中に既にある製品でお話をしたので、やや出来レースっぽいところはありますが、一番は介護です。身体洗浄ができる製品。でもそれ以外に「しつこい汚れを簡単に取り除く」技術が生きる領域はたくさんあります。
例えば、自動車のシート、それからアウトドア、車中泊とかもそうです。介護に限らず、ホテルリネンの清掃、こういったBtoBも非常に人手不足ですし、食品工場の衛生管理。食品を直接乗せる搬送ベルトの洗浄などは課題が大きく費用も高いです。
このように価値にフォーカスするだけでも、あらゆる領域の需要が出てきます。
先ほど「お客様に聞く」と申し上げました。お客様にぜひ聞いていただきたいのですが、今の時代、初期仮説はチャットGPTなど生成AIで非常に効率よく、そこそこ質の良い仮説も出すことができます。
ゼロからオープンでお客様に聞きに行くのも良いのですが、そういったことに抵抗があるようでしたら、お付き合いがあるお客様、例えばホテルの清掃・リネンの清掃をやっているクリーニング業界のお客様がいるのであれば、生成AIで得た仮説を持っていくと、「何も準備してこなくて話をしているんだな」という印象も無くなります。事前にチャットGPTなどで当たりをつけて仮説を持った上で聞きに行くというのも、皆さんご自身のハードルを下げるやり方として有効かと思います。
ここで中間のまとめとして、やり方を画面に再掲します。
技術の再解釈。本日のメインの趣旨ですね。


技術の再解釈というのは、①価値への変換、②需要とのマッチングという2つのステップを経て、新製品を生むという手法でした。
技術を価値に変換するということ。変換した価値のどれかにフォーカスして、需要をお客様に聞くということですが、お客様に聞いて、それのマッチングを図るということで、新製品を生み出すという手法になります。
この手法には独特のメリットも3つありまして、新規事業案の検討の王道というと、まずは「課題」です。つまり「負」を探すということですが、この課題がまず不要とも言えると思います。課題から入らなくても、これといって製品化できそうな課題を見出せない場合でも、需要アイデアを出すことができる、というところが1つ。
2つ目は、技術者優位です。やはり技術を理解している必要があるという意味では、技術者優位のアプローチと言えると思います。知っているがゆえの弊害もあるかもしれませんが、技術者優位と言えるでしょう。
3つ目は、独創性です。やはり今の自社製品や競合製品を軸に考えるわけではないので、割と思考がフラットになって、独創的なアイデアとなるケースが多いと感じます。
こういったメリットもあるので、ぜひ使ってみていただきたいと思います。
※続きはこちらからご確認ください。

