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2025.7.22
今こそ学び直す「プラットフォームビジネスの構造と成長モデル」 ~生成AIでどう変わるのか?~【その2】
新規事業

※本コラムは2025年6月25日に開催した株式会社unlockのビジネスセミナーを、3回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツ(第2回)です。

前回の記事はこちら

 

第3部 7つの特徴

 

次にプラットフォームビジネスに共通する「7つの特徴」を見ていきます。

まず1つ目は「マルチサイド構造」。マルチサイド、つまり「横」「サイド」ですね。先程2者以上という言葉を定義に使いましたが、異なるユーザーグループを同じ場所に集めて、直接的に相互作用させる。両面または多面の市場の生態系を形成する。言葉は少々難しいですが、内容は結構シンプルです。

 

先程の需要と供給、消費者と生産者。プラットフォームビジネスで言うと、airbnbは、部屋を提供してくれる人と、旅行者を結びつけています。マルチサイド、つまり2者以上のサイド、両面があるわけです。Uberも、車に乗る人と車を運転する人。楽天も、出品者と消費者がいるわけです。こういうマルチサイドの特徴があるのです。

 

2つ目の特徴は、先程も少し触れた「ネットワーク効果」です。これはプラットフォームに切っても切り離せない特徴の1つです。これは様々な言い方があり、ネットワーク外部性と言われる時もあるのですが、今一番メジャーな言葉が「ネットワーク効果」と言われるものです。

これは利用者・参加者が増えるほどに、サービス、つまりプラットフォームの「場」の価値が向上して、さらなる参加者を呼び込むという、自己増強的な成長モデルをネットワーク効果と呼んでいます。

例えば、インスタグラムはみんなが見ているからたくさん投稿する、とか。Amazonは本ならなんでもある、本を買いたい人はなんでもあるからここに来る、だから本を売りたい人はみんなAmazonで本を売る。こういう構造がどんどん増強してくるわけです。

 

実はこれ、新しいビジネスだけではなくて、昔からあるビジネスも実は同じです。ネットワーク効果でおそらく一番有名なのはVHSとベータでしょうか。お若い方は馴染みが薄いと思いますが、2つの規格を持つビデオ再生機です。同じようにビデオテープを再生する機械が2規格あって、どちらのプラットフォームで、ビデオのコンテンツ制作者がビデオを出すのかという際、この本体(ビデオ再生機)を持っている人たちが大勢いるほうの規格でコンテンツを出した方が売れるということで、どちらに軍配が上がるのかが注目されていました。結果、VHSのほうが本体がたくさん売れたので、ネットワーク効果があったと言われています。これはニワトリと卵のどっちが先なのか、いいコンテンツが出たからVHSが売れたのか、といろんな説がありますが、とにかくこういう時代からネットワーク効果というのは存在していたのです。

 

続いて3つ目の特徴は、「限界費用ほぼゼロ」です。これは特にデジタルプラットフォームで外せない特徴ですね。参加者の数が増えると、普通はサービスの提供コストが増えますが、その費用の増加がほぼ無いということです。

限界費用とは、追加で増える変動費のことです。例えば、飲食店の場合、お客さんが0人でも1万人が来ても家賃は一緒で、お客さんが0人の場合は買っておいた食材や在庫が無駄になるというのもありますが、お客様が増えた場合は使う食材とか、油などの調味料とかこういったような変動費が発生します。

 

プラットフォームビジネスでは、YouTubeの会員が100人の時でも1万人の時でも、それほど変動費は変わりません。サーバーの使用量はそこまで変わらない。こういったところから、顧客が増えても変動費がほぼゼロという特徴があり、いわゆる損益分岐点を超えた後の儲かり方がなかなかエグいわけです。こういったところもプラットフォームビジネスの特徴です。

 

それから、4つ目は「情報の非対称性の橋渡し」です。知らない人同士の取引が基本であるため、評価・レビューの制度、レーティングの機能を備えて、過去の取引に基づく信頼情報を蓄積、公開することで取引の不安を解消しています。

 

例えば有名なのが、食べログ。旅先では、初めて行くレストランの評判を調べますよね。地元の人は知っていて、行ったことある人は知っている。けれど、行ったことがない、知らない人は全然知らないという情報の非対称性があります。クラウドワークスのようなサービスで、エンジニアやフリーランスの方に仕事を発注するときも同じです。それから、転職総合サイトの「転職会議」。その会社で働いている人や退職者が会社のことをよく知っていてレビューを書くのですが、当然これから入社する人はそこを知らない。こういう情報の非対称性を橋渡しするビジネスも、プラットフォームの特徴だったりします。

 

5つ目は「マッチング効率の最適化」。異なるグループを1つの場に集めるものの、その場の価値というのは、「適切な組み合わせを見つけ出す能力」にかかっているのです。結局、その場に行ったときに自分が欲しいものを適切に与えてもらえない、あるいは見つけることができないと、ユーザーは満足できません。そこをプラットフォームが最適なマッチングを演出するわけです。

 

ここでは高度な検索アルゴリズムやレコメンデーション機能、AIによるマッチングエンジンなどを駆使しています。例えば、YouTubeでは「おすすめ」が一番上にあって、つい私もYouTubeを開いて「おすすめ」のところでポチって見てしまうのですが、あれはもう完全にYouTubeにやられているわけですね。非常に優秀なアルゴリズムによって、私が普段こういうのが好きだから、きっとこれも好きだろうと表示していて、まんまとやられている。

ご提示できるデータが見つからなかったのですが、90%以上の視聴はレコメンド(おすすめ)経由であるというデータを昔に見たことがあります。やっぱりそれぐらい強烈で強力なのですよね。これはあらゆることに言えると思います。

 

6つ目の特徴は、「間接的収益の選択」。言葉がやや難しいですが、直接的収益というのは欲しいものに対する対価を払ったものです。例えば、車が欲しいという人に車を売った。車を買うので、お金を渡すということです。いわゆる直接的なやりとりになるわけです。

間接的収益というのは、画面にはでちょっと昔の例を出していますが、かつて「ハローページ」というものがありました。これが非常に革命的なモデル、いわゆる電話帳だったわけです。分厚い電話帳を無料でもらえて、インターネットが無かった時代でもこのハローページをもらった人は自分が気になるお店に電話をかけたり、便利に利用できたのです。無料でもらえる(使える)代わりに、企業が広告を掲載してハローページを支えていたという構図です。これは今のGoogleやYouTubeも同じですね。欲しい人・見たい人に無料で検索結果や動画を渡して、その代わりに、見ている人たちにフィットする広告を出したい広告主からお金をもらう。つまり、動画を見たい人からお金をもらうのではなくて、動画を見ている人に広告を配信したい企業からお金をもらう。こういった意味で間接的な収益が選択できるのがプラットフォームビジネスのもう1つの特徴です。

 

最後、7つ目は「取引安全の担保」です。先程ちょっとお話したことに被ります。

初めて取引する人が多い、しかもその初取引が連発するのがプラットフォームです。適正に財と商品の交換が行われないという不安はつきものですよね。じゃあどうするかというと、このプラットフォームが「安全を担保します」と言わないと、なかなか取引が行われません。典型的なのはメルカリでしょう。売上金のエスクローで、事務局が一時預かりをしたり、匿名配送、相互評価等をやっています。これによって、「モノは売るんだけど、お金払ってくれないときはどうしたらいいの?」というのを、メルカリが担保して、大勢のユーザーに安心して出品・購入をやってもらっているわけです。

 

これはクラウドワークスにも言えます。やっぱり見ず知らずのフリーランスの方に何かお仕事をお願いするとき、「これ、ちゃんとやってくれるのかな」「やってくれなかった時、どうするのか」「ちゃんとお金払ってくれるのかな?」とお互いにすごく不安があるものですが、そこをプラットフォームが担保しているわけです。airbnbも同じだと思います。こういう取引安全の担保をしているのが特徴です。

 

まとめです。7つの特徴をお話ししました。マルチサイド構造から取引安全性の担保までありましたね。重要なのは上の3つです。マルチサイド構造とネットワーク効果、それから限界費用ほぼゼロ。

 

このあたりが一番重要な特徴と言えると思います。本当はここでじっくり味わいたいところですが、時間の関係もあるので次に移りたいと思います。

 

移りたい、と言った後に余談ですが、私はリクルート出身で、思い起こすとリクルートではプラットフォームビジネスばかりやっていました。この画面をご存知の方もいらっしゃると思うのですが、「リボン図」と言われる、結んだリボンの形をした図ですね。リクルートのビジネスを理解したり、自分たちのやっていることを分解したりするときによく社内で使われていたものです。これが書籍として、この図と一緒に出版された時に結構有名になりましたが、実際に社内で本当にこれが使われていました。リクルートは基本的にこの左側に一般カスタマーですね。昔リクルートは出版をやっていたので、読者です。今だとインターネットのユーザーとクライアント、企業、主に広告を出す方々ですね。この両者をつまりマルチサイドでつないで、これをぐるぐる回していました。最初は人材ビジネスで、次に住宅をやって、ゼクシィ、結婚をやって、ホットペッパーをやって、進学、カーセンサーとか、こういうあらゆる領域に展開していたことに他ならない、と考えています。だから、リクルートのビジネスモデルはプラットビジネスそのものだった、と言えると思います。

 

さて、ここで改めて、プラットフォームビジネスのunlock的な定義です。

 

「複数のユーザー群を1つの場に集め、参加者同士のやり取りを通じて、参加者の連鎖的価値創造による成長を実現するビジネス構造」と定義しました。どうしても言葉が多くなったのですが、ポイントは「連鎖的価値創出」というところにあります。先程見ていただいたように、ネットワーク効果を表現しています。連鎖的に増えていって限界費用がゼロなので、指数・関数的にぐっと急激な成長を迎えるのがプラットフォームの特徴だと定義したいと思います。

 

第4部 どう伸びるのか?成長を支える5つの設計原理

 

このパートでは、プラットフォームビジネスを自分たちで作るとき、どうしたらいいのか、どうしたら伸ばせるのか、という話をさせていただきたいと思います。

 

まず1つは、「ネットワーク効果の徹底設計」です。ネットワーク効果、つまり自己増殖ループをいかに作るのか、それが非常に重要です。既存チャネルの活用、一方の供給を一時的に補助する、紹介、招待によるバイラル拡大、そういった当たり前に思うようなこともきっちりやる。

画面のように、直接・間接のどっち側のユーザーを先に集めるか、という問題もあるのです。プラットフォームにもよるのですが、そういう問題や構造をうまく見極める。大体の場合、片方が獲得しにくいので、その獲得しにくいほうのユーザーをうまく集めて、ネットワーク効果を早期に成立させるというのが1つポイントです。また後で詳しく説明します。

 

それから2つ目、成長させる共通点として「アマチュアエコノミーを活用する」というところが、プラットフォームビジネスの特徴だと思います。先程、プラットフォームじゃないほうのビジネスとして、パイプラインビジネスの話をしました。自動車を作って売ったり、小売店でモノを販売したりするのと、このプラットフォームの違いで一番大きいのは、素人、いわゆるプロじゃない人を巻き込んで、その人たちを供給者、サービス提供者、モノの供給者にするというところが、プラットフォームのすごく重要な特徴です。

 

例えば、YouTubeは映像を撮るプロである元テレビ局の人とか、テレビ局も入っていますが、もともとは一般の素人クリエイターさんが、クリエイターとも呼ばれてない人が、今も大勢で動画配信(投稿)をしているわけです。これはテレビの時代だと考えられないことです。

それから、airbnb。これは宿泊業で、日本でも民泊の免許で揺れましたが、もともとはちゃんと免許を持った、いわゆるプロでしか提供者になれなかった領域です。しかし、普通のアマチュアがホストとして一般の家の部屋を貸します、とプラットフォームに供給者として参入することができたのです。Uberも一緒ですね。日本ではまだできなかったりしますが、プロのタクシードライバーじゃなくても、Uberとドライバーをやることができるのです。こういう素人、アマチュアエコノミーを活用することが非常に重要です。

 

そして3番目、「成長を阻害しないマネタイズ」です。これも繊細な設計が必要で、「どの側、どの程度、どのタイミングで」マネタイズをするのか。どっちからもらうのか、どのくらいたくさんもらうのか、両方から同じくらいもらうのか、最初は無料にして取引発生した時だけもらうのか等々。その部分の設計が非常に多様で、それぞれ正解が違います。これをプラットフォームの成長と収益にあるべき形に設計するというのが非常に重要です。

 

画面のように、これは様々な形があります。両面手数料モデルは、例えばairbnbは、宿を提供する人・宿を使う人がairbnbを経由して、この両方から手数料をもらっています。Googleは片側からしかもらっていません。つまり、検索する人は無料で、広告を出したい人からしかもらっていません。この辺もどうするのかという設計で重要なポイントです。

 

次は、「役務の“染み出し”による価値拡張」です。特に最近のプラットフォームでこれをやらないと、成長が見込めないんじゃないかと思うぐらい本当に重要です。この“染み出し”というのは、マルチサイドを巻き込んだエコシステム化の第一歩です。

例えば、ホットペッパーグルメやホットペッパービューティーは、最初は飲食店やヘアサロンの予約だけでした。しかしそこから、サービス名は若干違いますが、リクルートとしてエアペイという決済機能まで提供することにしました。そうすることで顧客管理やスマホPOSまで可能になって、リクルートは顧客情報をたくさん知ることができて、顧客に適切な提案ができるようになったわけです。

お店からすると、リクルートへたくさんお金を払うことが増えているのですが、当然それは価値があるからやっているのです。単なる予約サイトから予約があったということは、その後にそのサービスを使ってお金を払うような、「この店に行ってみよう」というサプライチェーン、バリューチェーンと言われるビジネスフローの中で、自分たちが提供している場所から川上・川下に染み出していって、自分たちの役務の範囲をどんどん広げていくということが、いろんなプラットフォームで行われています。

 

それから水平展開ですね。配車、Uberをやったら、次はUberイーツをやるとか、いろんなことをやっていくのがプラットフォームの成長には欠かせません。ここを1つ強調したい成長ポイントとしてお伝えします。画面、このあたりも先程ご説明したようなことも一部被っているのと、少し時間がなくなってきたので申し訳ないですが、今日は割愛させてください。

 

さて、皆さんがプラットフォームをいざ作るという時、今思い浮かぶアイディアがある、または既に作っているという時、「需要者」と「供給者」のどちらから集めるのが正解なのでしょうか? 

プラットフォームビジネスの究極の命題である”ニワトリと卵”論があるのですが、どちらから集めるのが良いのでしょうか?

 

非常に重要な観点ですが、ある程度答えが出ていると思います。これは、「供給者」なのです。需要者と供給者において先に集めるべきなのは供給者。先程のairbnbの例で言うと、泊まる人か、宿を提供する人なのかというと、「宿を提供する人から集めましょう」ということです。

 

供給者から集める理由として、画面には3つ挙げています。1つ目は「利用価値の提供が可能」。先程のairbnbで言うと、需要者は宿に泊まりたい人で、彼らがプラットフォームに参加する理由は「いろいろな宿が載っているから」ということです。宿が無い状態だと、もう二度と来てくれません。フリマアプリも、何も出品されてない状態は使えません。こういう意味で利用価値の提供ができないと、需要者が離れていってしまうということです。

当然、供給者も「出品したのに誰も買ってくれない」となると、もう出品してくれなくなりますが、リードタイムが少し長いです。モノは出した瞬間に売れないとダメという人もあるかもしれませんが、やって来て何もモノが無いという人よりは、売れない期間が長い人のほうがまだ我慢できると思います。そういう意味で、やはり供給者からの集客という順が重要ですね。

 

それから、「需要者側の獲得コストを削減」。ある程度のコンテンツやサービスの供給が揃っていれば、需要者の獲得を広告や口コミで効率化することができます。逆の場合は、とにかくユーザーが離脱しやすくなるリスクが出るので、同じ理由で供給から集めることが重要です。

 

3つ目は「信頼性やブランドの形成」です。これも一緒で、供給者が先に参入することでプラットフォームに厚みや専門性が加わり、需要者に対する信頼感を与えやすくなります。これは領域にもよるのですが、特に教育・医療・専門家マッチングでは非常に重要となります。

例えば、アスクドクターズというサービスがありまして、病院に受診することなくお医者さんに病気の相談ができるのですが、そのアスクドクターズにあまりお医者さんがいなかったら使わないですよね。逆に大勢のお医者さんがいると、「ここはすごいのかな」ということになります。

 

こういう意味で、供給者から集めるというのがセオリーですが、やはり例外もあります。かなり、プラットフォームに依るのです。ネットワーク外部性が需要側の主導で、お客さんが増えると変動費も増えるような場合です。SNSのように他の人も使っているから自分も使うという形のサービスは、需要者を先に集める戦略が必要です。特に初期のFacebookやインスタグラムはそんなふうにやったそうで、とにかく需要者を先に集めたそうです。Facebookの場合は特に投稿が無かったとしても、誰かと誰かが友達で、この人は自分の友達を呼んでくれた、みたいな。そんなふうに友達を先に作るということが喜びだったりするものは、例外とも言えます。

 

それから、供給が限定的な場合も同じです。例えばUberです。日本ではUberイーツだけになっていますが、東京でドライバーの供給登録がたくさんあったとしても、大阪のユーザーにしてみたら東京でいわゆる白タクに当たるドライバーがたくさんいますと言われても、直接的な価値にはなりにくいですよね。そういったものに関しては、供給者から集めるのではなく、事業者を集める戦略を先に取ったほうが良いという場合もあります。

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【代表取締役】
津島 越朗
【設立】
2016年 10月21日
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