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2025.8.14
カスタマージャーニーとは?新規事業に役立つ作り方・実践ポイントを解説
新規事業

新規事業で最初に直面するのは、「顧客が本当に求めているものが見えない」という課題です。
アイデアはよくても、市場では「反応が薄い」「売れない」といった事例が後を絶ちません。
その原因は、自社視点や技術起点に偏り、顧客視点が欠けていることにあります。
そのような事態において注目されているのが「カスタマージャーニー」という手法です。
本コラムでは、新規事業におけるジャーニーの活用法を、手順や事例を交えて解説します。

2. カスタマージャーニーマップとは?概要と定義を整理

カスタマージャーニーマップとは、顧客がサービスと出会い、利用・継続に至るまでの行動や感情を時系列で可視化するフレームです。
マーケティングやUX領域で使われてきましたが、近年は新規事業でも注目され始めました。
カスタマージャーニーマップが注目されている背景には、顧客の行動とその裏にある感情・動機を捉え、価値提供の本質を見極める重要性があります。
カスタマージャーニーマップでは、以下のような情報を軸にして顧客体験を可視化していきます。

・認知のタイミングとチャネル(どこで出会ったか)
・検討・比較時に重視する視点(何を期待し、何を不安に思うか)
・購入・導入を決める要因(誰が決定するのか)
・利用時の体験と評価(満足、不満足のポイント)
・リピート・継続・紹介などの後続行動

これらのプロセスを時系列で整理することで、「どのフェーズで顧客が離脱しているのか」「どの瞬間に感情が動いているのか」といった価値提供のチャンスやボトルネックを明らかにできます。
とくに新規事業では、既存のサービスと違って「当たり前の導線」が存在しません。だからこそ、仮説の積み上げと検証の繰り返しを支える思考の道具として、カスタマージャーニーマップの価値が高まっています。

3. ジャーニーマップの構成要素と6つの典型ステージ

カスタマージャーニーマップを作成するうえで重要なのが、「顧客の体験をどのようなステージで捉えるか」という観点です。
ジャーニーは、単なる時系列の行動リストではなく、顧客の“思考”と“感情”を軸に構造化されたプロセスです。
新規事業においては、この構造の理解が仮説設計の質に直結します。
代表的な6つのステージは、以下の通りです。

① 認知(Awareness)

認知(Awareness)は、顧客がその商品・サービスの存在を初めて知る段階です。
SNS広告や口コミ、展示会、検索エンジンなど、タッチポイントは多岐にわたります。認知では「どうやって見つけてもらうか」が重要であり、新規事業においては想定ユーザーが“どこで情報を得ているか”の仮説が鍵になります。

② 興味・関心(Interest)

興味・関心(Interest)は、顧客が「もう少し詳しく知りたい」と思う段階です。
興味・関心では、製品・サービスの特徴、メリット、ブランドコンセプトなどが訴求されます。
ユーザーの期待値や興味の引き方をデザインするために、感情面の仮説が必要です。

③ 比較・検討(Consideration)

比較・検討(Consideration)は、他のサービスや代替手段と比較され、最終的に選択肢を絞り込む段階です。
BtoBでは複数人の意思決定者が関与することも多く、説得材料や判断基準が何かを深掘りすることが求められます。

④ 購入・契約(Action)

購入・契約(Action)とは、「買う」、「申し込む」、「問い合わせる」など、行動に移す段階です。
購入手続きの簡便さや不安の払拭(保証・返品ポリシーなど)が影響します。
購入・契約では、スムーズな導線設計や心理的ハードルの把握が鍵になります。

⑤ 利用・体験(Usage)

利用・体験(Usage)は、サービスを実際に使ってみる段階です。
利用・体験では、UX(ユーザー体験)の質が問われます。
利用・体験では、「期待に応えたか」や「想定外の不便はなかったか」といったリアルな使用感の分析が重要です。

⑥ 継続・離脱(Retention/Churn)

継続・離脱(Retention/Churn)は、継続的に使ってくれるか、それとも離脱するかを左右する段階です。
特にサブスクリプション型サービスではここが事業収益に直結します。
継続・離脱では、カスタマーサポート・アフターフォロー・コミュニティ形成などが継続率に影響します。

4. 新規事業におけるカスタマージャーニーの作成手順

カスタマージャーニーマップを活用することで、顧客視点に立った仮説を整理し、新規事業の方向性を明確にできます。
しかし、ジャーニーをただ「作る」だけでは意味がありません。
カスタマージャーニーでは、検討初期の不確実性を前提とした、実践的な設計手順を踏むことが求められます。
ここからは、新規事業の立ち上げフェーズで効果的な5つのステップを紹介します。

① ターゲットペルソナの設定

カスタマージャーニーを作成するためには、「誰のジャーニーを描くのか」を明確にしましょう。
具体的には、年齢・職業・生活スタイル・価値観などを整理し、1人の具体的な人物像(ペルソナ)として定義してください。
カスタマージャーニーで重要なのは、“理想の顧客像”を描くことではなく、自社の仮説が刺さるであろう顧客層を具体化することです。
現実の顧客インタビューや既存のデータがあれば、そこから得られる生の声を反映しましょう。
新規事業のターゲティングでお困りの方は、新規事業で培ったノウハウをもとにターゲットを明確にするunlockのターゲットファインダーをご検討ください。

② タッチポイントの洗い出し

次に、ペルソナがサービスや商品に接するすべての接点(チャネル)を洗い出しましょう。
具体的には、SNSやウェブ検索、店頭、紹介、口コミなど、情報との出会い方や接触経路を可視化してください。
新規事業では、既存チャネルが使えないこともあるため、「どの接点なら見つけてもらえるか」の仮説を立て、それに基づいて導線を設計しましょう。

③ 顧客の行動・思考・感情をマッピング

カスタマージャーニーでは、ステージごとに、以下の3要素をマッピングしましょう。

行動(Doing):具体的に何をしているか
思考(Thinking):何を考えているか、疑問に思っているか
感情(Feeling):どんな感情が芽生えているか、不安や期待はあるか

このフェーズがジャーニーマップの核心です。
「感情の起伏(エモーショナルカーブ)」を捉えることで、どこに施策の打ち手があるのかを浮き彫りにできます。

④ ボトルネックや阻害要因の抽出と仮説設計

次に、マップ化されたジャーニーから、顧客が離脱しやすいポイントや、不安・迷いを感じやすい箇所を特定しましょう。
ボトルネックや阻害要因は「課題の仮説」であり、そこに対して打つべき施策が「解決策の仮説」です。
新規事業においては、この仮説→施策→検証というサイクルが何よりも重要です。
数値では見えにくい「顧客の納得感」を扱う上で、ジャーニーは最適な道具となるでしょう。
新規事業の課題について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。

新規事業になる課題とならない課題(ビジネスは万能か?)

⑤ フィードバックを取り入れたジャーニーの反復修正

完成したジャーニーマップは、「一度きりの資料」ではありません。ユーザーインタビューやテストマーケティングで得られた声を反映し、何度も更新することが求められます。作成後の運用設計を含めて考えることで、単なる整理図ではなく、事業成長の「ナビゲーション」として機能させましょう。

5. カスタマージャーニーを設計するうえでの実践ポイント

カスタマージャーニーは、整った図を作ることが目的ではありません。
仮説を共有し、意思決定につなげるためのツールとして使うことが重要です。
とくに新規事業では、不確実性を前提とした仮説思考と対話の場が欠かせません。
完璧さよりも、チームで会話できる状態の設計図をつくることを意識しましょう。
設計図は、付箋やホワイトボードでも構いません。
認知〜利用までのステージと、行動・感情・疑問の3要素程度から始め、テストやインタビューを経て更新していきましょう。
また、事前に仮説ジャーニーを描くことで、検証の焦点も明確になります。
手を動かしながら仮説→検証→修正のループを高速で回すことこそが、新規事業における実践的なジャーニー活用法といえるでしょう。

6. 継続的にジャーニーを活用するための運用設計

カスタマージャーニーマップは、一度作成して終わるものではありません。
むしろ、新規事業においては「変化し続ける顧客理解をどう更新し続けるか」が、競争優位を保つ鍵となります。
そのためには、いかのような運用の仕組み化=継続的なアップデート設計が欠かせません。

アップデートのルールを設ける

多くの企業では、ジャーニーを作った後、日常業務に追われて放置されてしまう傾向があります。
これを防ぐためには、「更新のタイミング」を明確に定めておくことが効果的です。

・ユーザーインタビューを実施したらマップを見直す
・新機能のリリース前後でジャーニーを比較する
・3ヶ月に1回、クロスファンクショナルなチームでレビューする

といったように、「いつ・誰が・どう更新するか」の運用ルールを決めることで、マップが「生きた資料」として機能し続けます

部門横断での共有と活用を仕組みにする

カスタマージャーニーの価値は、単に顧客理解を深めるだけではありません。
営業、マーケティング、プロダクト、カスタマーサポートなどの各部門で、共通言語として使えることが大きなメリットです。

一例として、

・マーケティングチームが広告の訴求ポイントをジャーニーに沿って設計する
・開発チームがプロダクトの改善優先度をジャーニーのボトルネックから決める
・CSチームが問い合わせ対応を、感情の起伏を意識したトーンで調整する

といったように、部門間の認識を揃えることで、顧客体験全体の一貫性が生まれます

組織の「考え方」に根づかせる

ジャーニーマップは、運用することそのものが目的ではなく、「顧客の視点で事業を捉える」という思考様式を文化として根づかせることが目標です。
定例MTGや施策提案時に、「この施策はどのジャーニー上の課題に対するものか?」という問いを立てるだけで、チームの顧客理解は飛躍的に高まります。

7. まとめ|新規事業成功のカギは「顧客の一日」に潜む

今回は、新規事業におけるジャーニーの活用法を、手順や事例を交えて解説しました。
新規事業開発には、優れた技術や斬新なアイデア、スピード感のある実行力など、さまざまな成功要因があります。
しかし、どれだけ構想が優れていても、「顧客が本当に望んでいるもの」とズレていれば、その事業は市場に受け入れられません。
そのズレを最小化するための強力なツールこそが、カスタマージャーニーです。
ジャーニーマップを描くことで、企業は単に「商品を売る側」から、「顧客の一日をともに歩む存在」へと視座を変えられます。
売る側の都合ではなく、「顧客のリアルな生活や感情の流れ」を出発点とする事業づくりを目指しましょう。

問い合わせ先


【代表取締役】
津島 越朗
【設立】
2016年 10月21日
【本社所在地】
東京都渋谷区恵比寿3丁目9番25号 日仏会館5階
【事業内容】
新規事業立上げの支援・コンサルティング
【公式サイト】
https://unlk.jp/