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既存事業で生み出された事業のアイデアは、定量・定性調査などを含めたあらゆる調査や、社内の審査・指摘を乗り越えた有望なアイデアです。
しかし、既存事業のアイデアは、ほとんどが重要な要素について「仮説」である状態のままです。
そのため、「本当に新規事業でも通用するような価値や効果があるのか?」を見極めるためには、本番に近い形でバイアスを排除し、社外の実際のユーザー候補の方に使ってもらうことでしか検証できません。
検証せずにいきなり市場投入すると、スピードや短期的に見たコストは抑えられます。
しかし、致命的な欠陥があったり、そもそも新規事業において既存事業で見出した仮説が成立しないと、その損失はPoC(Proof of Concept:概念実証)にかかるコスト(金銭的なもの以外に社内外への説明含む)に比べて大きくなることが多くあります。
新規事業では「小さく産む」という言葉がよく言われますが、PoCはまさに「小さく産む」事業の生み出し方の主要な方法論といえるでしょう。
PoCについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
PoC(Proof of Concept:概念実証)を実施する最大の意義は、「机上の空論(仮説)」と「市場の現実(事実)」のギャップを、傷が浅いうちに埋めることです。
多くの新規事業担当者は、企画書を作り込む過程でアイデアに愛着を持っています。
そのため、「顧客もきっとこれを求めているはずだ」という確証バイアスに陥ることが少なくありません。
社内会議でどれほど絶賛された企画であっても、顧客が同じ反応であるとは限りません。
PoCをスキップしていきなり本開発・市場投入し、製品リリース後に「ニーズがなかった」ことが判明すると、それまでに投じた開発費や広告費、人的リソースが無駄になります。
PoCを実施すると、新規事業において以下のような利益をもたらします。
つまり、PoCにかかる費用と時間は、将来の巨額損失を防ぐための保険料であり、成功確率を高めるための必要経費といえます。
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世界的な成功企業であるAmazonでさえ、PoCを怠ったことで手痛い失敗を経験しています。
PoCに関する失敗のひとつが2014年に発売されたスマートフォン「Fire Phone」です。
当時、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスは、「3Dディスプレイ機能」こそがiPhoneなどの競合に勝てる革新的な差別化要因だと確信していました。
そして、「顧客は自分が欲しいものを知らない(だから我々が提示するのだ)」というスティーブ・ジョブズ流の持論を展開し、市場検証を一切行わずに「Fire Phone」の開発を4年間もの間強行しました。
しかし、いざ発売してみると、ユーザーにとって3D機能は単なるギミック(目新しいだけの仕掛け)に過ぎず、日常的な利便性や購買意欲を喚起する価値はありませんでした。
結果として、大量の在庫の山を抱えたAmazonは、約190億円(1億7000万ドル)もの評価損を計上し、事業撤退に追い込まれました。
仮に、開発の初期段階でプロトタイプを用いて「この機能にお金を払うか?」というPoCを実施していたら、4年という歳月と巨額資金を溶かす前に「この仮説は間違っている」と気づけたはずです。
このようなAmazonの事例は、「どんなに優れた経営者の直感であっても、PoCによる事実確認には敵わない」ことを示す典型的な教訓です。
参照元:https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/040400026/040400001/
Amazon以外に新規事業の失敗例を知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
PoCは「転ばぬ先の杖」と言える存在であり、社内での評価と市場からの評価にズレが生じることは珍しくありません。
新規事業におけるズレを事前に見極め、修正するためにPoCは実施されます。
PoCを省略することは、一見すると短期的なコスト削減につながるように見えます。
しかし、実際には、失敗した際の損失がPoCにかかる費用をはるかに上回ることは少なくありません。
Amazonの事例のように市場検証を省くのではなく、PoCにより新規事業の成功を目指しましょう。

