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2024.11.11
「飛び地」禁断の新規事業~12の新旧・コト・モノ成功事例分析~
新規事業

※本コラムは2024年9月18日に開催された株式会社unlockのウェビナーを書き下ろしたオリジナルコンテンツです。

 

unlock代表の津島です。

本セミナーでは、「新規事業の禁じ手と言われる飛び地は何なのか」ということ、12の事例からの成功法則分析、最後に飛び地への参入方法、この3部構成でお話しします。

第1部 新規事業の禁じ手

企業の失敗の代表例と言えば「多角化」と言われています。企業の業績が悪化すると、多角化に失敗とか、あの会社が倒産したのは多角化に失敗したからだ、というニュースを目にすることはよくあると思います。

倒産の原因になるという恐ろしい領域ですが、この多角化は新規事業の世界では「飛び地」と言われていて、現在の事業ドメインとは全く関連のない事業領域を指します。本セミナーではこの「飛び地」という言葉をそこまで厳格に定義せず、「多角化≒飛び地」のような緩やかな定義でスタートします。その意図は後ほどお伝えします。

さて、当社は「新規事業を立ち上げたい」「新規事業の立ち上げを支援してほしい」というお客様からご相談をいただくのですが、最初にリクエストされるのは「飛び地は避けたい」。これは実に9割以上のお客様がそうご要望されます。避けたいところなのは当然と思います。

理由としては、まず知見、経験、ネットワークが生かせないこと。既存の経営資源やノウハウも活用しにくい、というのが一番大きいでしょう。

それから組織力です。内部リソースが分散して専門性があまり活かせないわけで、新たな人材を採用しなければいけなかったり、リスク管理のコストが増大したり、 ブランドの一貫性維持の難易度が向上したり、組織力が低下したりすることも考えられます。

もう1点としては、今までの見通しが利かない、土地勘がないところですから、仮説・計画の精度が既存事業と比べて大きく低下するのも理由として挙げられます。

 

実際の失敗事例について、その挑戦に敬意を込めつつ、見ていきましょう。

 

1 新日鉄住金

かつて半導体事業に参入されました。鉄鋼業界が当時成熟化し、新たな成長分野として期待されていた半導体に目を向けられたのです。半導体は今やAIで飛ぶ鳥を落とす勢いであるものの、アップダウンの激しい業界です。新日鉄住金さんの目の付け所は決して間違っていなかったと思いますが、鉄鋼製造の技術や資源は半導体製造には直接的には活用できなかったのです。

2 AmazonのFire Phone

Amazonさんもかつてスマートフォン市場に参入しFire Phoneを出されましたが、こちらも撤退されました。一見、先ほどの例より事業ドメインが近い感じもありますが、見方によっては小売りと製造、通信、のような多角化・飛び地と言えるでしょう。

既存のスマートフォン市場における競争の激しさや、Amazonの強みであるエコシステムとのシナジーが十分に発揮されなかったことが挙げられます。世界的な企業でも失敗事例がある、難しい領域と言えると思います。

しかし、この禁断の新規事業とも言える領域に興味を持つ企業もあり、我々も飛び地のご相談やご希望をいただくことが時々あります。それがどんな企業かといいますと、この3つが当てはまるようです。

・既存事業の中ではアイデアが出ない

・既存事業ドメインに行き詰まりを感じている

・違うドメインで事業を持ちリスクヘッジをしたい

 

3つともある程度はどの企業でも当てはまるか、と思います。飛び地を実際にやるかどうかはさておき、飛び地を覗いてみたり検討したりする企業も多いだろうというのも、本セミナーの開催理由の一つです。

繰り返しになりますが、飛び地は不用意に提案しても社内で通る可能性は少ない。もし踏み出して失敗すると会社が傾いてしまうかもしれない。どうしよう?とお考えになると思います。

飛び地は危険ではあるものの、成功例もあります。

どんな成功事例があるかは知らない方も多いと思いますが、数少ない飛び地の成功事例を集めましたので、早速それを見ていきましょう。そこから成功の共通点や、自社が飛び地に合っているのかを考えていただければ幸いです。

 

今回、我々が調査したのは、以下の12社(サービス)における飛び地の成功事例です。

■新(2000年以降)

富士フィルム、シリウス、花王、セブン&アイ、AWS(Amazon)、ヤフージャパン

■旧(1999年以前)

トヨタ自動車、ダスキン、オーディオテクニカ、ソニー、So-net、DIC(旧 大日本インキ化学工業)

 

飛び地の成功事例を見つけるのは本当に難しく、また成功と言えるぐらいまで成長するのに時間がかかるため、便宜的に2000年を分岐として新旧を分けさせていただきました。

 

第2部 12の事例から成功法則を検証

1事例ずつ、ある程度ご理解いただかないと分析結果も分かりづらくなると思うので、それぞれコンパクトに説明をさせていただきます。画面の資料と共にお聞きください。

(※本記事では画面の資料ご紹介はありません)

 

1 富士フィルム

これは有名な事例だと思います。元々は写真フィルムの会社で、写真フィルムの縮小により新事業を探していた結果が、この化粧品の事業でした。化粧品以外にも医療なども手がけている中、写真フィルムのコラーゲン技術や紫外線による褪色を防ぐ抗酸化技術を活用し、今後アンチエイジングが伸びるだろうと参入されて、4年目で売り上げ100億円突破です。素晴らしい結果を出されています。

 

2 トヨタ自動車

トヨタ自動車さんも、飛び地と言われる事業があります。トヨタホームです。自動車の会社がハウスメーカーの事業をされたのは、豊田さん一族では「一代一事業」というモットーがあるのが大きかったそうです。

事業に参入したのは1975年。戦後の住宅不足があり、200万戸以上の住宅焼失を受けて住宅建設が重要課題だったことや、戦時中に木材乱伐で木材不足があり、コンクリート建築を住宅建設に応用する構想が生まれたという背景から勝機を見出されたようです。創業者の想いや、日本の社会課題を解決すること、自動車のお客様を活用できる点、というのもあったそうです。

現在、単体売上高は900億近くあります。愛知県での戸建て住宅販売戸数は16年連続ナンバーワンと、すごい実績を出されています。

 

3 セブンアンドアイ

セブンイレブンさんのセブン銀行は、小売業が 銀行業を始めたという見方もできると思います。

2001年にセブン銀行を始めたきっかけは、既存のお客様へアンケートです。「コンビニにどういうサービスや商品があったら良いか?」とアンケートを取ったところ、「ATMを置いてほしい」という要望が多く寄せられたそうです。当時、多くの銀行ATMが限られた時間帯でしか稼働しておらず、24時間営業のセブンイレブンでいつでも動くATMの要望が大きかったところから始まったわけです。

「銀行」とありますが、厳密には融資で収益を上げるモデルではなく、ATMの利用手数料で収益を上げるという、銀行業の方々からすると思いつかなかった発想だそうです。今年3月期で約2000億円の過去最高売上があり、全国に2万5千台のATMを設置して、国内最大のATMネットワークを築いた大成功の飛び地という事例です。

 

4 ソニー

ソニーミュージックさんの知名度は高いので、「これ飛び地なの?」と思われる方もあるかもしれませんが、これも当時は飛び地でした。

電気機械のソニーさんが、ソフトである音楽に入っていったのです。1967年に外国資本の規制緩和が背景にあり、翌年にはアメリカの大手CBSさんとジョイントベンチャーを組む話が出て、そこにソニーさんが手を挙げたのがきっかけです。

飛び地に参入した理由は、あのウォークマンです。当時はレコードプレーヤーも作っていたので、AVハードウェアとソフトウェアの相乗効果を狙ったようです。「ハードとソフトはソニーグループのビジネスの両輪だ」という考えが当時からあったそうです。

これはアップル社のiPhone、Apple Storeの考えと同じですね。活用アセットとしては、そのブランドです。結果、音楽レーベルとしては日本一、世界でもTOP3になりました。日本コロンビアさんやテイチクさん等、その時点で30年以上も歴史がある大手レーベルを抜いて、1979年に日本でトップになったのです。

ちなみに、ソニーさんは参入時にあえて音楽業界の人を採用しませんでした。音楽業界はソニーさんにも接点がありましたが、「自分たちの詳しい領域ではない新領域に入る、しかも後発で入るのに、その業界に詳しい方や染まった方を入れて革新的なことができるのか?」という考えがあったそうです。全てにそうすべきとは思いませんが、これもヒントになる考え方だと思います。

 

5 シリウス

こちらは新興の家電メーカーさんです。元々、水洗いクリーナーヘッド「switle(スイトル)」というヒット商品をお持ちです。気体と液体をそれぞれ分けて吸い込むという独自開発技術の気液分離システムがあり、それを家庭用の掃除機の先端に取り付けるだけで、水を吹き付けながら同時に吸い取る水洗い掃除機に早変わりさせるという世界初のクリーナーヘッドです。

床に敷くカーペットはなかなか丸洗いできないものですが、カーペットの表面だけを濡らして、しかもそれをすぐ拭き取って、掃除機も壊れない。ペットを飼う家が増えて、ペットの毛や匂いが気になる家庭、アレルギー持ちの家族がいる家庭等に非常にヒットしているそうです。

そしてこれを別の用途、介護用の洗身用具「switle BODY」という商品に転用しました。ベッドに寝ている高齢者の方の入浴は大変で、介護する方にも大きな負担がかかるものですが、このノズルで寝たままの人の体をなぞることで、ベッドを濡らさず汚さず、手軽に体を洗うことができるのです。しかもお湯が出せるという、世界初のポータブルシャワーです。

シリウスさんは元三洋電機だった方が社長です。三洋電機時代に「人間洗濯機」という近しいコンセプトの商品を考えられていて、このswitleを人間の体に適用できないかとお考えになったそうです。

介護現場における入浴介助の負担軽減という潜在ニーズを認識し、独自技術を転用できる点から参入されたという事例です。まだ参入されたばかりで、前述のようにわかりやすい成果はまだありませんが、公表では2024年度に国内で2万台、海外で1万台の販売を計画されています。

 

6 オーディオテクニカ

レコードのレトロ回帰で人気が出ているオーディオテクニカさんは、元々レコードの再生機を製造販売されていました。そこがシャリ玉成型機の「すしロボット」を作ったという、本当に飛び地らしい事例です。

1984年に参入されたこのすしロボット、きっかけは本業ビジネスの危機でした。CDが発売されて、オーディオ業界がアナログからデジタルに移行し始めた、さてどうしようか?となったそうです。

ユニークなのは、社内アイデアコンテストで出てきた案という点です。すしロボットのアイデアを出した方も素晴らしいですが、経営陣がそれを支持したのです。当時の社長の「独創的なアイデア、オリジナルの技術を目指そう」というポリシーと、すしロボットのアイデアが合致したそうで、経営陣の支持を得たことで実現に向けて開発が始まりました。

社内の活用アセットは一見無さそうですが、 音響機器の製造で培った精密な機械制御の技術やモーター制御の技術を活用したそうです。初めは家庭用として販売したら、市場に出した結果、業務用の方にニーズがあるとわかり、そちらへ主軸をシフトされました。この展開も素晴らしいと思います。

現在、寿司ロボットのラインナップは10種類まで拡大し、業務用「すしメーカー」は毎月40台が売れているそうです。その売上比率は国内4:海外6で、実際は海外のほうが売れているという、非常に面白い事例です。

 

7 Amazon(AWS)

先程Fire Phoneのご紹介をしましたが、こちらも素晴らしい成功例です。AWSと呼ばれるクラウドコンピューティングのAmazon Web Servicesです。馴染みがある方はすごく馴染みがあるけど、馴染みがない方は全く馴染みがないというサービスで、この時間内で詳しく説明するのは難しいのですが、とんでもない成功事例と言えます。

きっかけは「自分たちの会社で必要だったから」ということらしいです。Amazonがどんどん大きくなって内部インフラをどうする?ということから始まり、自社のために作ったそうです。なので、成長は予想外だったそうです。

当然、そのEコマースで培ったIT基盤等を生かして作り、クラウドインフラ30%というものすごいシェアがあり、年間売上は日本円で15兆円規模という大成功の事例です。日本がデジタル赤字などと言われるように、今や国の問題になっていますが、この一端を担ってしまうぐらい破壊力のある新規事業が、EC事業から生まれた事例です。

 

8 So-net

ソネットさんは元々プロバイダー、つまりインターネット接続事業者でした。こちらがM3(エムスリー)という医療向けビジネスを作ったという成功事例です。

M3の創業社長であり、現社長である方は元々マッキンゼーのパートナー(役員)で、 製薬ヘルスケア業界では有名なコンサルタントだったそうです。その時に、このM3のコア事業である「MR君」というドクター向けの医療情報プラットフォームを構想されました。

医療情報はそれまで製薬会社のMRがドクターへ提供したり、場合によっては接待でお話したりというものでした。それをドクター自身が手元で情報収集したり、MRともそこでコミュニケーションができたりするプラットフォームを考案して、ソネットに持ちかけたという経緯があったそうです。

ソネットさんには飛び地ですが、インターネット技術でプロバイダーとしての強みがあり、コミュニケーションに関する辺りもお手のものという背景がありました。さらに、当時のIT革命が医療情報領域にも波及するだろうと見越していたわけです。

今や日本最大級の医療ポータルサイトに成長し、2022年3月期の売上は2000億円超、時価総額は約3兆円という大手企業を上回る規模になっています。

 

9 花王

花王さんは化学の会社ですが、健康サポート飲料の「ヘルシア」を作りました。今までの事例より少し近めな印象もありつつ、見方によってはシャンプー等を作っていた会社が飲料を作るのは、飛び地と言えると思います。

直近で事業譲渡されましたが、花王さんは「エコナ」という抗肥満をコンセプトとした植物油のヒット商品をお持ちでした。1991年に栄養改善法の改正が行われ、特定保険用食品制度、いわゆるトクホが始まったのもきっかけだったようです。

飛び地に参入した理由は、トクホが背景にあり、健康保険用食品の需要拡大を見越したこと、そして体脂肪や内臓脂肪に関する長年の代謝研究の成果を生かせることも大きかったそうです。

ロングセラー商品としてヘルシアという名前をお聞きになったことがある方も多いと思います。発売から20年間で累計約31億本を販売されました。

 

10 ダスキン

こちらも有名な事例かもしれません。掃除用モップやマットのレンタル事業をフランチャイズ展開しているダスキンさんが、食品であるドーナツ、飲食事業をされたというケースです。

当時はダスキンの清掃事業をフランチャイズで展開されていたので、 創業者がその勉強のために渡米した際にミスタードーナツに出会って、この美味しいドーナツは絶対に日本でいける、日本に持ってこようと決断されたのが背景でした。

当然、それ以外にも、日本でダスキンに加盟してくださっているオーナーさん達にも新しいビジネスチャンスになると考えたそうです。

すごいのは、当時のダスキンさんの資本金の2倍に相当する高額な契約金を払って、日本でフランチャイズビジネスを展開する権利を得る決断をされたことです。参入を決めるだけでなく、ここまでやるのは本当にすごいと思います。

飛び地なのに参入する理由として、商品の良さ、商品が必ず売れるという確信。そして得意なフランチャイズビジネスを展開できる点もあったようです。

結果は皆さんもご存じのように、ミスタードーナツの店舗は全国展開されています。直近は縮小傾向らしいですが、2023年3月期のミスタードーナツの売上高は1055億円。全国に1000店舗ぐらいあるというのがミスタードーナツ、ダスキンさんの事例です。

 

11 ヤフージャパン

ワイモバイルです。今や当たり前のようになって、飛び地という認識を持つのが難しいぐらいだと思いますが、インターネットサービス事業が携帯電話回線事業をしているということです。

きっかけは、2015年に電気通信事業法が改正され、仮装移動体通信事業者(MVNO)の参入が容易になったことが大きかったそうです。参入した理由は、それまでPCやガラケーが中心でしたが、スマホの普及に伴い、モバイルインターネットのトラフィックが増えるだろうということ。

ヤフージャパンさんは主な収益源が広告なので、当然トラフィックを自分たちで管理したり、ユーザーの行動データをモニタリングしたりするのが非常に重要だったということです。それにより、精緻なターゲティングや個人化されたサービス提供が可能になったのです。

既存の顧客網をアセットとして活用して、結果としては契約者数は今や700万人を突破して楽天モバイルと同水準です。格安SIMの携帯会社ランキングではUQモバイルに次ぐ業界第2位になっています。

 

12 DIC(旧 大日本インキ化学工業)

こちらが最後の事例、スポーツクラブ、フィットネスクラブのルネサンスです。このルネサンスの運営会社をご存知でしょうか?

実はDIC(旧 大日本インキ化学工業)という会社が運営されています。これも飛び地感の強い事例ですね。ルネサンスは今フィットネス業界で第2位の大手です。

元々、ルネサンスの創業者になる方が、社内ビジコンのようなところにこの企画を出したところが始まりだったそうです。ウレタン樹脂を売るためにテニススクール事業とつなげる事業の企画書を提出したところ、当時審査した役員の方々は「起案者はウレタン樹脂を売りたいわけではなさそうだ」と見抜いたそうです。

なぜ化学メーカーがテニススクール事業をやるのかを言わないといけなかったので、ウレタン樹脂はこじつけで書いたようなのですが、参入を決定した背景は、健康ビジネスは将来性がありそうだというところに一番反応されて通ったそうです。

プラスアルファとして、この起案者が会社の敷地の隣の空いたテナントで、自分たちのために簡単な運動器具を置いて社員向けのフィットネスクラブを簡易的に、サークル的に作ってみたところ、好評だったという小さな実績があった点も後押しになったそうです。

 

長くなりましたが、ここから12の事例について分析をしていきます。

まずは「共通点」を見ましょう。

 

先ほどの12のケースを新旧、コト・モノの軸で分析したところ、「なぜ飛び地に行ったのか」というきっかけは、「既存市場の減少懸念だった」というのがほとんどでした。12例中、7例です。これはあまり驚くべきことではない、とは思います。

 

続いて、「それがトップダウンだったのか」という点です。

トップが思いついて始まったとか、トップが非常に熱意を持ってやろうと言ったのか。この12例だけの話にはなりますが、発案者やリードした人がトップだったというのは半分以下に留まりました。少し意外な印象もありますが、従業員の方には希望が持てるかもしれませんね。

 

「参入した先の業種が成長市場だったか」という点は、全てYESになりました。つまり、12例全てが成長市場に参入していました。成功事例を集めたので 当然と言えば当然かもしれませんが、これは全部に共通していたのです。

 

では、「活用アセット」の視点からの表をご覧ください。

(※本記事では画面の資料は掲載しておりません)

 

ここでのアセットとは、自社の技術・ノウハウ、 既存の顧客など広義のアセットを指します。例えば、セブンイレブンさんならば、コンビニ店舗に来るお客様にATMを提供することですね。

多角化にあたって、技術をアセットとして活用できることが理由になるケースは多く、反対に、既存顧客を活用するケースは少なかったのが見て取れます。

 

次に、直近のトレンドがあるのかどうかを見てみます。「新」に分類した6事例については、技術、ノウハウ、既存顧客など、何らかの自社アセットを活用しているのが見て取れました。何にもアセットが絡まっていないように見えるのは、「旧」の6事例です。

 

「モノ・コト」のカテゴリーで分けた場合についても調べってみました。ここでいう「コト」とは、例えばインターネットやサービス業などです。特にネット系は自由度が高そうで、事業の自由度も大きいように感じますが、案外、メーカーさんのように「モノ」事業にもそれなりの自由度があって、事業の表面的な関連度の無さが大きいという傾向も見えてきます。

 

さて皆さん、 私が先程「アセット」と申し上げた技術や既存顧客、その両方とも活用しなかったケースが、「飛び地」と言う割に少ないように思いませんか? 

本当の意味で、これは「飛び地」だったのでしょうか?

 

有名なアンゾフの成長マトリックスをここで表示します。横軸に既存市場・新規市場、縦軸に製品の既存・新規があり、4つの区分に分かれています。

左上(市場も製品も「既存」に該当する)が皆さんの事業ドメインで、今ビジネスを展開されているところで、右に行けば新市場、 下に行けば新製品で、右下に行くのを多角化とか、飛び地と言っています。この右下に行くのは避けたい、という会社が多い中で、今の12事例をここにプロットしてみました。

(※本記事では画面の資料は掲載しておりません)

 

アンゾフで見ると、色付けたところは純然たる飛び地ではないと言えると思います。例えばセブンイレブンさんがコンビニなのに銀行ATMビジネスをやるのは、脈絡が無さそうに見えても、アンゾフで見るとそうではないことが分かりますね。いわゆる純然たる飛び地は7事例だけだった、というのがこの表からわかるメッセージです。

 

次に、飛び地のうち「アセット活用あり」のケースを見ましょう。

この表で色付けたものは何らかの技術・ノウハウの 活用があったもので、アンゾフでの飛び地に当たる事業にも関わらず、何らかのアセットを使っていることが見えてきました。

 

では、ここまでのまとめです。

  • きっかけは、既存事業に対する危機感
  • トップダウンばかりではなく、従業員発案とか技術起点の新規事業もある(法改正が後押しするケースもある)
  • 参入事業は全て成長市場
  • 一見して既存事業との関連性が見えない参入であっても、全く何のアセットも絡まってない「完全な飛び地」は珍しい(2000年以降の事例でも完全な飛び地の成功事例はあまり見当たらなかった)

 

第3部 飛び地に向く企業と向かない企業

飛び地への参入方法をお伝えする前に、飛び地という切り口で調査分析をしてみた我々の、飛び地参入に対するスタンスをまずはお話しさせてください。

 

我々unlockとしてはやはり「飛び地はお勧めしない」というスタンスです。

 

今回の企画において、成功事例の探索に苦労しました。成功事例がネットで情報として落ちていないこともありますが、実際にあまり成功事例が無いのだろうと思います。このセミナーでは成功事例をお伝えしているので、「なんかいけそうだな」と感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは要注意です。このセミナー自体に“生存者バイアス”がかかっているからです。

 

何の武器も使えない市場で戦うのは、冒険度合いがあまりにも大きすぎます。アンゾフで言う飛び地にカテゴライズされても、実際のところは丸腰ではなく“飛び地ふう”な事業が多く、完全な飛び地はかなり少ないのでお勧めできません。

 

ですが、今日のセミナー趣旨に基づいて、どうしてもという企業様のために参入の方法をお伝えします。

 

 

その前に、少しunlockの事業の紹介をさせてください。

上場企業を含む多くの企業様とお取引をいただいており、我々がお客様に新規事業案を単に助言するだけではなく、我々が社内ビジコンに参加させていただくケースもあります。

日々、自分たちでゼロから新規事業を考えてご提案する中で、その採用率としては、新規事業の検討採用率で89.7%、クライアント様の社内承認プロセスで正式承認されたものは75%となっています。

 

unlockのメソッドとしまして、まずは「制約」の条件をお客様にたくさん頂戴して、ファクトからの予測を重視します。なぜ御社なのかを非常に重視し、お客様からは見えないけれども我々だから見えるものがあり(人材開発「ジョハリの窓」を応用)、そこに新規事業ノウハウを掛け合わせて、事業案をご提案しています。

また、アイデアの志向性チェックを非常に重視しています。どこにでも受け入れられるアイデアは無いと考えており、どういうアイデアが採用されるのか、やりたいのかをしっかりインタビューをさせていただきます。この辺が先ほどの高い採用率のパーセンテージの秘訣です。

アイデアを考案するだけでなく、じっくり検討し、作る、売る、この全てのプロセスをカバーしております。

弱いところとしましては、物作りの企業様においては我々が物作りをできないという点がありますが、それ以外は非常に重点的にやらせていただいております。

 

その他には、unlockで人気のサービスを5つ合わせた「unlockプライム」というサービスも展開しております。直近では、社内ビジコンの運営をお願いしたいと依頼いただくケースも多く、我々の方で事務局を含めた運営ノウハウやフレームをご提供することも手掛けております。

 

今更ですが、私もnoteを始めました。当社のホームページの「コラム」に「社長コラム」があります。前述の富士フィルムさんの例にも一部触れております。これからも少しずつ書いていきますので、よろしければぜひフォローをお願いします。

それでは本題に戻ります。

まず、1番に「取りこぼしを再チェック・灯台元暗し」、2番が「技術、ノウハウの転用の可能性を再チェック」と書いています。再チェックを2回書いたのは、やはりいきなり参入市場を選ぶのではなく、何度も自分たちの足元の確認をするのを強調させていただきたいからです。
飛び地は危険なので、できるだけ最後の手段にした方が良く、これは本当に飛び地に行かないといけないのかと考える意味でも、1番、2番をまずはお勧めさせていただきます。

飛び地ではなく、先程のアンゾフのマトリックスの右下ではなく右側に行くだけでも、非常に苦労があるものです。当然、業種や内容によるとは思いますが、 例えば、軽自動車のスズキさんが日本からアメリカやインドに進出するにも大変な苦労がありました。
鈴木修氏の著書「俺は、中小企業のおやじ」に詳しく載っていますが、既存事業の海外展開とは言え、並々ならぬ困難の数々があったことが読み取れます。ぜひ一度読んでみてください。
なので、飛び地は、さらにこれよりも心細い始まり方をするはずだと思います。

それから、同じくアンゾフのマトリックスの右側に行くのも、BtoBをBtoCにするのも、単純化するとそうだとはいえ、例えば、ヤマト運輸さんの事例を見てください。
企業向けの運送事業から始まり、最終的にはそれを止めて、今のクロネコヤマトの個人向けの事業を始めたわけですが、ここでも非常に苦労があったようです。クロネコヤマトの生みの親である小倉昌男さんの著書「経営学」から、それが読み取れます。

まして、何も自社アセットが使えない領域に飛び込むのは、やはりお勧めできません。最後の手段というべき領域だと思います。参入前によくよく検討いただいて、本当に参入すべきか慎重に決定する必要があります。

次に、どういう成長市場があるのか。
既にお伝えしました通り、 12事例の全てが成長市場での参入でした。やはり参入するなら成長市場であるべきで、どんな成長市場があるのかをリストアップするというのが3番です。

ただ、ここでも注意してください。私もDeNA時代に同じプロセスをやったことがあるのです。
これをやっている時は“希望”を感じるものです。成長市場なので「これがすごく伸びるみたいだぞ」と語りやすいのですが、浮かれてはいけません。「隣の芝は青い」とはよく言いますが、隣の芝は“©誰かの庭”なのです。事業検討していた当時、それを強く感じました。
私が思いついた“誰かの庭”という表現、ネットで調べると誰も言っておられないので、小さく©を入れておきましたが、ぜひ覚えていただければと思います。一見魅力的に感じますし、誘惑は非常に大きいのですが、“©誰かの庭”なのです。これは注意が必要だと思います。

続いて、4番です。3番の「成長市場をリストアップ」をしたら、そこに自社の技術とかノウハウを転用できないか確認するのは当然重要です。飛び地の参入検討に当たり、この4番がもっとも重要だと思います。
先程にもありました通り、アンゾフでは飛び地に見えても、実際に全く関連が無い事業に参入したケースは意外と少なかったわけです。なので、飛び地ふうなことをやるにしても、なんとか自社のアセットを絡められないかをしっかり確認していただきたいと思います。

比較的低リスクな飛び地の入り方としては、FC加盟、代理店取得、他社とコラボ、といったことも挙げられますね。自社だけでリスクを取らない方法ですが、デメリットとしては収益性が自社だけで参入するのに比べてやや低めであり、自前で始める際には結局同じことをやるために(相手側と)モメやすいようです。簡単に始められるという方法論になります。

結局、飛び地はどんな事業を選ぶべきなのか?
究極的には、どの会社が何をやっても良いと思います。

今日ご紹介した、全く何のアセットも絡まってない完全な飛び地のケースだったルネサンスさんは、5000億円の市場で業界第2位です。「勝てば官軍」はこの世界のルールなのです。
当然ながら自社アセットを絡めるのは非常に重要です。繰り返しですが、強調させていただきたいと思います。

本日のまとめに入ります。

  • やはり飛び地は「最後の手段」
  • どうしても参入する際は、足元の点検を怠らない
  • 「隣の芝は、誰かの庭」を忘れず
  • 「勝てば官軍」でも、なるべく何らかのアセットを活用できる市場を選び、丸腰になることは避ける


最後に、次回セミナーの予告をさせてください。
ほぼ毎月、当社ではセミナーを開催しておりまして、次回のテーマは営業です。

新規事業の製品は、実は営業であると私は考えておりまして、営業に関する新規事業の支援事例を基にした無料セミナーになります。
皆様のお申込みを心よりお待ちしております。

 

問い合わせ先


【代表取締役】
津島 越朗
【設立】
2016年 10月21日
【本社所在地】
東京都渋谷区恵比寿3丁目9番25号 日仏会館5階
【事業内容】
新規事業立上げの支援・コンサルティング
【公式サイト】
https://unlk.jp/