※本コラムは2025年3月12日(水)に開催した株式会社unlockのウェビナーを、全3回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツの最終回です。
前回の記事はこちら:技術の再解釈による新規事業アイデア考案(その2)


これまでの内容を復習しがてら、実際に製品を生むだけではなくて、生んだ後にヒットさせる、売るところまでが大変なので、そこまでを例に当てはめてみていただきたいと思います。
例に出すのは、㈱フンドーダイという熊本にある中小企業さんです。透明醤油という製品をヒットさせた創業150年の会社です。人口減少や和食の頻度が下がって売上が低迷する、会社がこのまま行くとジリ貧だということで、門外漢の社長が新たに着任されて2つのことを実施されたそうです。
1つは、本格醤油。どこに出しても恥ずかしくない本格醤油の開発、そしてもう1つが、新発想でこれまでにない新商品を作るという二つの柱でした。これからの話は、この2番目の新商品を軸に進めていきます。
先に結果をお伝えすると、年間10,000本の販売目標に対して500,000本売れました。ここに今日のテーマである「技術の再解釈」が使われていますので、ぜひ改めてご覧ください。
まずアプローチの全体像です。画面にあるように、5つのステップでヒットまでを実現されています。
ステップ1は、存在していた技術を再解釈。ステップ2が顧客の意見を拾う。ステップ3が技術とニーズの結合。ステップ4が製品価値の検討。ステップ5が新規顧客の開拓です。


今日の「技術の再解釈」ということでお話ししたのは、ここに当たります。この要素もしっかり入っていて、生み出すところまでで終わりではなく、ちゃんと成功させるところまでを見ていただきたいです。
まずステップ1、技術の再解釈です。存在していた技術を再解釈するというステップで、外から見ると画期的な技術のように見えるのですが、醤油の色素を消す技術というのは10年以上前から存在していて、この業界では特に珍しい技術ではなかったそうです。あ、そうなのか、と私は思いましたけれども。
これを聞いたとき、我々のお客様にもたくさん当てはまると感じました。というのは、我々が支援するお客様の場合でも、実際にヒットした新商品や新サービス、それから、社内で採用されたアイデアでもよく「評価が良いんだけど、実はこんなのは前からあってみんな知ってんだよね、あまり新規性ないんだよ」という評価をよく聞くのです。
ということは、ある意味、どの会社でもまだまだチャンスがあるということかと思うのですが、実際にこういったケースはよくあるのです。自社業界ではあまり珍しくないものでも、その市場性、マーケットとの接続ができていない、というものがたくさんあるのです。最先端、最高の技術ということでなかったとしても、ヒット商品につながる可能性があると捉えていただきたいと思います。
続いてステップ2、顧客の意見を拾う。これは「需要とのマッチング」をもう少し分解して、我々のお勧めする「顧客の意見を聞く」ということを実際にやられていたので、フォーカスしています。
透明醤油を作った商品開発チームは、まずマーケットリサーチから始めたそうです。醤油会社なので、アプローチがBtoCです。実際に販売している先は問屋や小売だと思いますが、BtoCの製品ということもあり、知り合いの保育園に聞いてみるという原始的なアプローチをされました。「こんな醤油があったらいいなと思うもの」を保育園の子どもたちやそのお母さんたちに書いてもらったそうです。
実際に書かれた付箋は画面でご覧ください。そこに「色のつかないお醤油があったお料理によってはきれいな見栄えになると思う」「汚れない醤油があったらいいな」というのが出てきたそうです。
ステップ3、技術とニーズの結合です。醤油の色素を消す技術。色のつかないお醤油、汚れないお醤油というニーズ。これらを合わせて透明な醤油を実現したということになります。少し出来レースみたいですが、実際にこういうステップを踏まれたケースです。
醤油の色素を消すということと、色のつかない醤油があったらいいな、汚れない醤油があったらいいなというのは、意外と結びつくようで結びつかないこともあると思いますので、改めて探してみるのは重要と思います。
大切なことは、「新製品ができました、終わり」にしないことです。
なぜかというと、新しいものを作ることと、売ることは大きく異なるからです。今回のように、明らかに製品の技術が需要と一致している場合でも同じだと思います。
「特許があるからこれをなんとか製品にしたい」というご相談もよくいただきますが、すごい特許があるけれどなかなか売上につながらない、そんな技術や製品が星の数ほどあるのは今日ご参加いただいている方はよくご存知でしょう。「作ること」以上に「売ること」に、しっかり神経を使っていくことが重要です。
続いてステップ4、「製品ができました」が終わりではなくて、この「製品価値を検討する」ということです。
透明な醤油を実現しただけでは売れない。次にこのチームがやったことは、この醤油を欲しい人はどこにいるのか、どんな人か、どういう活用方法があるのか? ターゲット顧客と用途開発を行ったということです。
透明な醤油があったらいいなぁという人がいるから、透明な醤油ができました、はいどうぞ。これももちろん立派な商品開発、ビジネスだと思いますが、できた製品に対して、今までとは違うどういった顧客がいるのか、どういう用途があるのか、これを考えたということです。
醤油が透明だと色合いが、例えばマグロだとマグロの漬けとか、色合いが良くないというわけではなく、お刺身と同じような鮮やかさを保ったまま提供できる!と自分たちで開発したり、もともと言われていたように床のカーペットにこぼしても目立たないことも追求できると考えたりしました。
余談ですが、お客様から色のつかない醤油、汚れない醤油があったらいいなというニーズが寄せられたとしても、すぐ透明醤油というネーミングに行き着かないんじゃないか、と私は思います。
例えば、「汚れない醤油」「色のつかない醤油」というネーミングの選択肢もあったかもしれません。製品価値を考えて、「透明醤油」という商品が完成したのではないでしょうか。こういうことを適切に考えて選んでいくのがマーケティングだと思います。まさに、この会社はそういったマーケティングを実践したところが、新しいものを生むだけではなく、ヒットまで行ったところの大きな要因だと思います。
そしてステップ5、新規顧客の開拓。考えるだけではなく実際にそれを実行したというところです。
実際にこういうのがあったら欲しい、という人に売るのも当然素晴らしいのですが、考えた用途、考えた新しいお客様。これを実際にアプローチして開拓していったこと。ニーズを示してくれた保育園のお母さんたちなど、従来の顧客層に提供して終わるという「営業の限界」を作らなかったところですね。
新商品の機能価値をもとに、新しい顧客を開拓した。店頭や展示会も活用したそうで、訪日外国人も含めて幅広い層に販売できたというのが大ヒットの理由だったという事例です。
ページを遡りますが、今日お話しした価値への変換、技術とのマッチングというプロセスを含んで最後ヒットまで行く、という事例でした。
ここまで聞いていただいて、アイデアを考えてから需要を聞くのか、需要を聞いてからアイデアを考えるのか、いったいどっちなのか?と感じた方もあるかと思います。
我々としては、これはもうどちらも良いと考えております。実際に我々が携わった、支援した新商品・新サービスでヒットしたものにも、どちらのパターンもありました。なので、どちらからだったとしても、便宜的に「需要と供給」と言い換えた場合でも、結果的にうまく結びつけることができれば問題ないと思います。
いずれにせよ、新規事業はやっぱり市場活動だと考えています。我々のおすすめとしては、ぜひ会議室を出て、実際にお客様に会ってお話を聞くということが思わぬヒントをいただける一番の活動だと思っております。


しかし、今日お集まりの方々は規模の大きい製造業の方が多いと思います。この場合、営業の方と距離が遠くて、なかなかお客様と自由に会えない、ということはないでしょうか? ましてやまだお取引のないお客様なんてとても会えない。こういう声もよくお聞きします。
実際には組織の壁です。非営業部門の方が多いと思いますけども、「顧客の悩みを聞いてきてほしい」と営業部門に頼んでも、営業は「今月までの納品で忙しい」とか、通常業務の話に終始してしまい、こういった視座での話をなかなか聞いてきてくれません。
あとは社外の壁です。外の方の話を聞きに行く、玄関のベルを鳴らす、電話でアポを取るのも抵抗がある。あとは単純にリソース不足で、少ない人数で回しているので難しい。こういった壁があると思います。
ご安心ください。unlockが代わりとなってお客様の声を聞いてくることができます。ちょっとここからCMです。
お客様と顧客とのギャップを埋めるための「セールスインタビュー」というサービスを新たにリリースしております。いくつか特徴がありまして、まず我々unlockのコンサルタントは1人当たり年間50人以上、標準的にインタビューをしているメンバーばかりで、インタビューに非常に長けております。
そして弊社独自のネットワークで、100社を超えるほぼ全業種、会社のコンタクト情報があります。
それから経営者、役員、経営企画室といった方々に限定すると1200人程度のバイネームでのネットワークもあります。こういったことを活用して、インタビューをunlockのコンサルタントが行います。既存のお客様はもちろん、既存のお客様だけではなく、まだ皆さんがお取引されてないお客様も我々はコンタクトを取ることができます。
それから、時々いただくご要望ですが、自社の「競合他社」にも話を聞いてみてほしい等、こういったことにも対応が可能です。また、協力パートナー候補、業界団体、研究機関といったところにもアプローチできます。皆さんだけでは引き出せない先、それからアプローチできない先、かつ引き出せない情報を我々が取ってくるということが可能です。
取ってきた「声」は様々な活用方法があり、新規事業アイデアに使う方法もできれば、既存アイデアの製品の立て直し、戦略の見直し等にも活用できます。ここまで我々がしっかりサポートできますので、ご興味がある方はぜひご相談ください。
以上CMでした。お聞きいただいてありがとうございます。
本編に戻ります。
このように、顧客の声はやはり宝の山です。言い古されていますが、新規事業をやってみて本当にそう思っています。新規事業のアイデアにもたどり着けるはずです。
しかし、1つ注意点があります。多くの製造業のお客様で見られるのですが、「アイデアの質にこだわりすぎること」にご注意いただきたいのです。
これは日本のユニコーン企業であるラクスルの創業者・松本さんもおっしゃっていますが、新規事業がアイデア1発で成功することはほぼありません。
アイデアの質も大事ですが、アイデアはそもそも初期仮説と言えると思います。この画面は見づらいかもしれませんが、縦軸がユーザーの数で、初期段階ではアイデアの質とも言えると思います。
横軸に時間で、アイデアを思いついた時はここです。この段階での「質」は当然重要ですが、ここが高いことにあまりこだわりすぎるのも場合によってはナンセンスになると思います。
というのもご存知のように、製品化のハードル、製品改良のハードル、といったものも当然ありますし、先ほどの透明醤油で見ていただいたように、販路を構築する、売れるっていうところまで持っていくまでにハードルがあります。
最初のアイデアが良いに越したことはありませんが、良いアイデア以外は成功しないのかというとそういうことでもありません。
あまり最初のアイデアの質にこだわりすぎると、結局は全く手が出せずに検討だけして終わることになってしまいます。アイデアは質が変化するので、それにご注意いただきながら、悪いアイデアに手を出す必要はないにせよ、ちょっと可能性あるかな?というものはなるべく調査を進めたり、お客様にニーズがあるかというのはぜひインタビューを実施したりしていただきたいと思います。
では、今日のまとめになります。


まず1つ目。技術の再解釈により、既存の技術アセットを生かしつつ、これまでと全く異なるプロダクトのアイデア着想が技術の再解釈で可能になります。
2つ目。需要というのは、お客様に聞くということが非常に有効であると我々は考えております。自社で選択できない場合は外部を使うのも選択肢かと思います。
3つ目。顧客の声を元に製品を開発できても、製品の価値をさらに見出し、従来の顧客以外の新たな顧客を開拓することも重要だと考えます。
最後に次回セミナーの予告をさせてください。
1つ目は8割通るセミナーです。実は弊社で過去一番人気だったセミナーで、他社様からもぜひ一緒にやらせてほしいとお声がけいただいて一緒に開催したくらいのセミナーです。
新年度、新規事業の社内ビジコンをスタートさせる企業様も多いと思いますので、ぜひご参加いただければと思います。
もう1つは中小企業様向けの内容です。
「結局、中小企業が新規事業を作るにはどうすれば良いのか」、こちらもぜひお申込み、ご参加いただければと思います。
本日は以上とさせていただきます。
ご参加いただき、誠にありがとうございました。

