本コラムは2025年4月16日(水)に開催した株式会社unlockのウェビナーを、全3回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツ(第2回)です。
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会社ごとに評価される基準が違う理由。我々unlockでは、それを「会社ごとにスイートスポットが異なるから」と考えています。
ここにアンゾフの成長マトリックスがあります。今日ご参加の中ではご存知の方も多いと思いますが、平たく言うと、今の皆さんの既存事業からの距離感、どれぐらい離れるのか、という話です。


既存事業との距離感はどれぐらいが会社として望ましいか、ちょうど良いのか、それは会社によって異なるため、どんなアイデアが採用されるかも変わってくるのが大きな要因だと考えています。
例えば、ここに既存の事業があるとします。横軸に市場、顧客。今のお客様に販売する場合は、左側。全く新しいお客様に販売する場合は、右側。商品も今の商品を売るのは下。全く新しい商品を売るのは上。
当然近すぎると、オプション商品扱いのような見え方をするものもあって、これは新規事業と呼ばないという会社もあるのですが、もうここからスイートスポットになっている。なるべくこっちに近いのがスイートスポットだ、という会社も実はよくあります。
飛び地というのは成功確率が低く、多くの会社は避けるのですが、むしろここを目指してほしいぐらいの会社もあったりして、会社ごとにかなり個性があり、これが大きな要因だと考えています。
ここまで傾向と対策が重要、スイートスポットが要因とお伝えしてきましたが、ではその傾向とはどう見たらよいのか、うちの会社の傾向はどうやったら見たらよいのか、という話をします。
まず、新規事業の「募集要項」がある場合はそれを熟読しましょう。画面のこちら、ここにあらゆるメッセージが詰め込まれています。もしそれが1行しか書かれていなかったとしても、非常に多くの情報があります。事業アイデアのエントリーシートや募集要項には、その会社が欲しいアイデアのイメージやリクエストが書かれているので、会社の傾向を読み取って対策を立てましょう。
これは実際、クライアント企業様のエントリーシートにあった内容を一部お借りして、我々が再加工したものです。こんな形で基本情報、注意事項がありますね。本当は注意事項という項目の中にあるより、もう少し「こういうアイデアが欲しい」とちゃんと表出してほしいのですが、実際にこういうシートが何千人もの従業員に配られたわけです。この注意事項の中に、審査の重要なポイントという項目があり、そこに重要なメッセージがぎっしり詰まっておりました。
こちらの例は大手製造業のお客様です。ここから読み取れることは、世界観への共感性、アイデアの独自性、アイデアの有用性、アイデアの実現性、社会に対するインパクト等です。冷静に見れば当然それが新規事業アイデアと思うのですが、よく見てください。
例えば、ここに「アイデアの独自性」とあります。当然それは求められますが、「着眼点」はかつてなかったのです。しかも線が引いてあります。かつてなかったような斬新さがあること、つまり、この会社はいわゆる一般的な新規事業を求めている会社よりも、かなり新規性を重視していることが読み取れます。
それから、「アイデアの実現性」です。実現性の箇所に「ムーンショットレベルの壮大なアイデアを歓迎します」と書いてあります。これは壮大で大きな事業を求めているということを意味しますね。ここもポイントになります。そして、「社会課題に対するインパクト」です。アイデアの実現が社会課題の解決に貢献するかどうか。これは社会課題との関連性を伝える必要がありそうだと読み取れると思います。あくまでも1例ですが、1行だったとしてもこれだけメッセージがあるという話です。
募集要項とか、今のようなメッセージが無かったとしても、実はあらゆるところに既に会社からのメッセージは散りばめられています。会社の目指す方向を確認しましょう。 これは、例えば大きな会社で言うと、中期計画や社員にだけ語られる事業戦略、社長・役員・部長が折に触れて発言する内容等です。なかなか社長と話す機会がない方は、外部に向けた社長のインタビュー記事。こういった中に、会社が目指す方向の話があるので熟読しましょう。
冒頭から「傾向と対策」と言っていますが、皆さんが考えたアイデアを会社の方に迎合していきましょう、迎合したアイデアを考えましょう、ということではありません。あくまでも皆さんが考えたことを主軸にするのですが、会社が目指す方向との一致を起案者自身が明示して証明していかなければなりません。そこが重要なのです。
その際も、そこ(会社側のメッセージ)で使われている用語をそのまま使ってください。言い換えもせずにそのまま使っていくということが結構重要です。採用される新規事業案は会社が目指す方向の先にあるものが多いので、「私の新規事業案は会社が目指す方向と一致しています」と明示的することで加点されやすいのです。
なぜそんなことをする必要があるのでしょうか? 自分が良かれと思い、これが会社の事業としていけるのではないかと思っているのに、なぜ中期計画を読んだりして、傾向と対策をしないといけないのでしょうか?
こういった事業案の審査会議、役員の方がたくさんいらっしゃる中に私も参加させていただくことがよくあるのですが、実際にどういう話がなされているかと言いますと結構、意見が割れます。だいたい賛成、反対で割れます。満場一致で、これはよし、これはダメということはほとんどなく、反対と賛成に分かれます。しかし、その中で決めなくてはいけません。これは本当にどうやって決まるのでしょうか?
結局、「うちがなぜこの事業をやるか」ということが最後の決め手になり、ここにすごく多くの時間が割かれているからというのが理由なのです。儲かりそうだというのは当然ですが、実態として「うちがなぜこの事業をやるか」が非常に重要で、ここで議論されるので、この点をある意味より明快に説明できている。そして、その一致を評価者に示すことができる事業案というのは通りやすいということです。なので、会社が目指す方向をまず確認し、会社がどんなアイデアを求めているかを知る、つまり傾向を知ってそこの一致を示す対策をすることが非常に重要なのです。
「この事業をうちの会社がやるべきなのか」という、そのWHYが会社と一致していればいるほど有利です。自社がやるべき事業であると明示できる案は強く、スローガンにしているものは反対しづらい。会社としてこの領域に行くと言っているのに、その領域に行く事業に反対するのはどうして?ということになるわけで、反対しづらい、つまり通りやすいということです。
次に、対策の仕方です。もう少し具体的に見ていきましょう。本日紹介するのは、3つの対策です。
1つ目がリーンキャンバスで特に見るべき項目、2番目が事務局の活用、3番目が自分でリサーチする。これらを1つずつご説明します。
まず1つ目、リーンキャンバスです。
最近少し減ってきつつあるのですが、2~3年前は大流行した印象があります。主にアメリカの西海岸のスタートアップで流行ったのですが、スタートアップが投資家やベンチャーキャピタルからに選んでもらうために、このリーンキャンバスを埋めていっていました。ビジネスをある程度は精度高く評価するための便利なフレームワークシートで、これを新規事業、社内ビジコンの応募シートにする企業さんが非常に多かった印象です。なので、あえてこれを例に対策の方法をお話します。
新規事業で必要な要素、チェックしないといけない要素が網羅的に項目として存在するので、評価する側としては非常に便利なシートではあります。この問いを埋めていけば新規事業が出来上がるのですが、落とし穴もあります。これは、フレームワークの落とし穴と言えるのではないかと思います。
フレームワークというのはよく日本人が揶揄されて、特にエリートと言われる人はフレームワークが大好きで、項目に入れたら完成するし、方程式みたいにこの式を解けばいい。つまりこの問いに答えるだけというのは迷う余地が少なくて良いですよね。多くのホワイトカラーは、方程式があれば解があるという教育を受けてきていますから。最大のリスクとしては、ここを満遍なく埋めることで満足してしまうことです。埋めて満足するのではなく、「本当に?」「なぜ?」と何度も問うことで深めることができるものなのですが。
「ビジネスフレームワークの落とし穴」という本、この著者は早稲田大学の山田教授ですが、この方は新規事業方面で様々な執筆をされているのですが、この本でもフレームワークの落とし穴が指摘されておりました。一冊も本ができるぐらい指摘がされておりましたが、要はま満遍なく埋めることで満足してしまうことが、こういったフレームワークの場合の最大のリスクです。これは綺麗に埋まっていて、よく見ると大した内容ではないと言ったら失礼ですが、埋めて本人も多分満足してしまっているところがあるのではないかと思います。この辺が注意点です。
リーンキャンバスは注力するべき項目とそうでない項目があって、特に実際、お客様の審査に入ってみて、審査で見られているのは主にこの2つです。
課題と解決策。全ての項目を深く問うことはそもそも現実的ではありませんし、おそらく評価者の方々もしんどくて、おそらく全部は見られないと思います。この内容でここの2つがたくさん議論されているので、ここの2つに注力することが起案者、つまりこのシートを埋める方の立場からすると、傾向と対策という意味ではすごく重要だと思います。
先ほど申し上げた会社の方針などは、この課題の中に織り込むわけです。「こういうことを会社としてこういう領域に行こうとしている。我々はこの課題を取り上げました」というふうに説明するわけです。とにかくこの2つが重要です。申し訳ありません、構造が少々わかりにくいかもしれません。
今、リーンキャンバスで特に見るべき項目をお話しました。そのお話がこの課題と解決策です。ここをしっかりと重点的に対策しましょう、ということです。
次は2つ目、事務局を活用しようという点です。
私は自分自身が会社員で起案者だった時に全くできていませんでしたが、今は事務局の方々とお仕事することが多くなり、事務局の仕事や立場を知ると、言い方は悪いですが、事務局を使い倒さない手はないかと思います。この事務局の方々の仕事上のミッションを、皆様はご存知でしょうか?
この方々は審査員でもあるのですが、私が知っている限り、審査員であることは少ないです。なのでアイデアが現段階で稚拙であっても、安心して使い倒してください。そもそも事務局の目標は1件でも多く、質の高い事業案を審査で通すことなのです。実は起案者の皆さんと目的や方向性は一致しているのです。
事務局のリアルと書いてありますが、目的達成のためならば必要なことはやりたい。しかし事務局にはシャイな方も多くて、働きかけが積極的にできる方が少ないです。起案者からすると「僕たち(事務局)を頼ってと思っていないのでは」と感じられてしまいがちですが、事務局の方々はこういうミッションを持っていて結構シャイな方が多いのです。
実際どう使い倒すのか、それは起案者の方が自分では突破しにくいことを積極的に協力してもらうというのが一番良いと思います。大きな会社の場合、特に組織をまたぐアポイントを取るということって結構難しいです。例えば、営業部門に現場の実態をヒアリングしたい、お客様にこういう課題があるかどうかを聞きたい。こういったアポ取りも事務局に頼めば、基本的にはやってくれます。それから、技術部門にこのアイデアの実現性はどうか、実現方法をどうやってやったらいいのか、そんなことを確認したい場合も事務局にぜひ頼んでください。
それからブラッシュアップです。アイデアの壁打ち、企画の企画書の書き方ということも事務局を頼って、自分ではできないことをどんどんブラッシュアップするのも、傾向と対策のその対策という点で非常に重要です。彼らも経営から依頼を受けているので、経営との方針の一致とか、そういう点に関してヒントをくれることが非常に多いと思います。
そして3つ目、ご自身でリサーチをしてみましょう。
当然リサーチをご自身でする方は多くて、ネットで少し探して終わるというケースも多いのですが、傾向と対策で言うと、新規事業案は一次情報が入っているとぐっと企画の魅力が上がるのです。
新しいファクト情報、それは例えば自分の家族へのヒアリングでも構いません。実際に今こういった課題があって、それをまだ解決できていない状況で、その代替手段である商品を使っている方や実際に困っている人に聞いたところ、この一言です。人数が何十人、何百人ではなく、極端に言うと1人でも良いと思います。直接、当事者の一次情報を聞いて、それを企画に織り込むというのはとても重要です。
一次情報だけではなくて、新しいファクト情報。最近はAIでハードルが下がっているので、論文情報や特許情報も織り込まれる提案書が増えてきて、海外情報もほとんどボーダーレスです。日本語しかできなくても、生成AIが全部翻訳してやってくれます。
ここで強調したいのは、やはり一次情報です。これは様々な交流会とか、直接自分が知っている人に尋ねていくというのも含まれます。イベントや展示会に足を運ぶというのも、一次情報を得る一つの手段です。あとは売り場ですね。例えば実際にドラッグストアに行って、買い物をしているお客さんに声かけるのはハードルが高いと思うのですが、そこの店員さんに話を聞くというのも一次情報と言えると思います。見方によっては二次情報かもしれませんが、実際に話を聞いてきた、これが「傾向と対策」という意味では皆さんの企画をぐっと引き上げる内容になります。ぜひやっていただきたいと思います。
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