プロトタイピングとは、製品やシステムの試作品を作り、動作や仕様を検証する手法です。
新規事業の立ち上げにおけるアイデア出しなどで活用されます。
本コラムでは、新規事業におけるプロトタイピングの手順やコツなどを紹介します。
目次
プロトタイピングとは、新しい製品やサービスのアイデアを具体的な形(プロトタイプ)にして、実際に顧客や関係者からのフィードバックを得ながら仮説を検証するプロセスのことです。
単なるモックアップやデモだけでなく、以下の3点も確認します。
仮説検証について詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
新規事業においてプロトタイピングが重要とされる理由は、以下の3つです。
新規事業では不確実性が高く、初期の段階で全てを計画通り進めるのは困難です。
プロトタイピングを実施することで、顧客の反応や技術的課題を早期に発見できます。
これにより、大きな投資や開発の前に問題点を洗い出せるため、新規事業失敗のリスクを最小限に抑えられます。
新規事業では、仮説に基づいて進めます。
プロトタイピングを通じて顧客の反応や課題を具体的に把握することで、実践的な学習が進みます。
その結果、当初の想定と異なる点を見つけやすくなり、事業の方向性を柔軟に修正しながら、より成功確率の高い形に磨き上げられるでしょう。
新規事業では、関係者間でアイデアの理解にズレが生じやすい傾向があります。
些細な認識の違いが新規事業の進行を妨げることも少なくありません。
プロトタイピングを活用することで、アイデアを具体的な形で示せるため、社内のメンバーや外部パートナーとの共通認識を形成しやすくなります。
また、視覚的・体験的に共有することで、議論が具体化し、スムーズな意思決定と連携が期待できます。


プロトタイピングは、製品やシステムの試作品を作ること自体が目的ではありません。
あくまで仮説の検証を通じて学習と改善を進めるための手段として活用されます。
ここでは、一般的な新規事業プロジェクトにおける5つのステップと、それぞれにかかる目安期間を紹介します。
プロトタイピングを含めた新規事業の実行/推進のノウハウを身につけたい方は、弊社の顧問サービスをご利用ください。
プロトタイプを作る前に、対象となる「顧客の課題」と「その課題を解決する仮説(ソリューション)」を明確にしましょう。
課題の特定には、ユーザーインタビューや観察調査(エスノグラフィー)が有効です。
具体的には、リーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスなどを活用して、事業アイデアを仮説群として整理し、「誰に・どんな課題を・どう解決するのか」を明文化していきます。
また、課題を特定するのと同時に、競合分析やトレンド調査を実施し、独自性と市場性の両方を捉えます。
新規事業の課題を見つける方法について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
課題と仮説が明確化したら、仮説を検証するための最小限のプロダクト、いわゆるMVP(Minimum Viable Product)を設計しましょう。
MVPは、完璧なものを目指すのではなく、"何を学ぶか" を目的に設計してください。
一例として、アプリであれば紙芝居形式の画面遷移モック、サービスであればスライド1枚とヒアリングによる検証、ハードウェアなら3Dプリンタで作成した物理モデルなど、目的に応じたフォーマットを選びましょう。
近年では、ノーコード/ローコードツールの普及により、非エンジニアでも実際に動作するプロトタイプを短期間で作成できる環境が整っています。
ノーコード/ローコードツールで効率化を図りつつ、検証すべき仮説に必要な最低限の要素だけを盛り込むことを意識しながらMVPを設計・作成しましょう。
MVPを設計・作成したら、MVPを実際の顧客やステークホルダーに提示し、使用感・反応・改善点をフィードバックとして収集しましょう。
BtoBの場合は、特定のクライアントとPoC(概念実証)やパイロットテストを実施してください。
PoCについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
テスト方法としては、ユーザビリティテストやインタビュー、定量調査、A/Bテストなどがあります。
短期間で複数回テストを繰り返すことで、仮説が現実と合致しているかを見極める材料が蓄積されます。
テストでは、ユーザーに観察ベースで使用してもらい、行動や表情から得られる暗黙知を重視すると、定性的に深い学びが得られるでしょう。
また、社内評価や技術的な視点だけでなく、必ず実際のユーザーからフィードバックを得てください。
ユーザーへのテストが完了したら、得られたフィードバックをもとに、仮説を維持・修正・破棄(ピボット)する判断を下しましょう。
仮説のピボットは、リーンスタートアップでいう「Build-Measure-Learn」の"Learn"部分に該当する工程です。
仮説をピボットするタイミングでプロトタイプを改良したり、仮説の前提を見直したりすることで、次の検証サイクルへと進められます。
具体的には、どの仮説が成立したか、何が誤っていたか、なぜそのような反応があったのかをチームで振り返り、学習内容をドキュメント化してください。
なお、検証を急ぐあまり、学びの振り返りを省略しないようにしましょう。
ステップ1から4を何度か繰り返す中で、課題と解決策のフィット(Problem-Solution Fit)が見えたら、次のステップ(正式開発・市場投入)へ進む準備を始めましょう。
繰り返しの中でユーザー数を徐々に拡大し、N=10からN=100、N=500とステージを上げることで、定性→定量へと学びの質を高められます。
また、繰り返しとスケール判断では、検証の進捗を指標で可視化することも効果的です。
なお、仮説の根本が崩れた場合は、大胆な方向転換や事業撤退も含めて意思決定してください。
プロトタイピングでは、以下のようなフレームワークやツールを活用すると、効率的に進められます。
プロトタイピングでは、以下のような落とし穴にハマる人が続出しています。
プロトタイプを使ってテストする際によくある間違いが「誰に使ってもらうか(フィードバックもらうか)」です。
中でもよくあるのが、使ってもらう相手としての企業は正しいのに、その中で使ってもらう人が間違っているケースです。
例えば、会計系のソフトであれば、誰に使ってもらうのが正しいのでしょうか?
経理はもちろんかもしれませんが、IT部門や、場合によってはその数字を実際に活用・モニタリングしている社長や管理職、はたまた営業部門かもしれません。
そういった部門の話以外に、決裁者に聞くべきなのか、そうでない人に聞くべきなのかなど以外にも正しい相手(Right Person)かどうかの見極めは細かく注意が必要です。
当社でも過去にお客様がプロトタイプをもって想定顧客にインタビューしたところ「ニーズはなかった」という共有を受けたものの、その理由があまりにも情報が薄く感じたことがありました。
もしかするとRight Personに聞けていないのではと思い、どのような人にインタビューしたのかをお客様に聞いてみると「普段会っている現場の営業の方」とのこと。
しかしその新商品は、その業種において重要ということもある一方で、その業界の決裁者にあたる方に主にメリットがある商品でした。
後日、Right Personにインタビューをした結果、仮説通りの課題やニーズがあり、適切なフィードバックを受けられた事例がありました。
プロトタイピングは、業種によってやり方が異なります。
一例として、以下のような対策が必要です。
今回は、新規事業におけるプロトタイピングの手順やコツなどを紹介しました。
新規事業の立ち上げにおいて、プロトタイピングは「実行しながら学ぶ」ために欠かせない技術です。
プロトタイピングでは、完璧なアイデアを追い求めるよりも、早く動き、現場の声を聞きながら仮説を磨くことが求められます。
また、「正解を探す」のではなく「仮説を検証し、学びを次に活かす」姿勢を持ち続けることもプロトタイピングを成功させる鍵です。
プロトタイピングを有効活用し、新規事業開発の成功確率を向上させましょう。

