自社の経営資源と内部R&Dだけに依存する手法では、技術の複雑化やグローバル競争の激化に対応しきれなくなりました。
それにともない、オープンイノベーションにより社外の知見を取り入れ、製品開発スピードの向上や研究開発コストの削減、新市場への迅速な対応などを実現する企業が増えています。
本コラムでは、大企業の新規事業におけるオープンイノベーションの重要性を海外の成功事例とともに紹介します。
目次
オープンイノベーションとは、社外の知識や技術を活用し、共創で新価値を生み出す経営手法です。
既存ビジネスだけでなく、新規事業にも活用されています。
オープンイノベーションについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
オープンイノベーションとは?メリットとデメリットや成功の秘訣を解説
ここからは、大企業の新規事業におけるオープンイノベーションの重要性を4つ紹介します。
大企業の新規事業でオープンイノベーションを活用すると、外部の技術やアイデアを迅速に取り入れられます。
また、多様な知見を組み合わせることで、市場の変化に柔軟に対応できる力が強まります。
結果として、競争環境に即した商品やサービスをより早く提供できるでしょう。
大企業の新規事業でオープンイノベーションを活用すると、多様な専門知識や技術を取り入れられます。
また、異なる分野や業界のアイデアが融合することで、革新的な発想の幅も広がります。
これにより、従来にはない新しい価値を生み出しやすくなるでしょう。
大企業の新規事業でオープンイノベーションを活用すると、外部パートナーと資源や費用を共有できます。
また、複数の企業が協力することで、開発や市場投入に伴うリスクも分散できます。
その結果、単独では難しい挑戦にも柔軟に対応できるようになるでしょう。
大企業の新規事業でオープンイノベーションを活用すると、外部の多様な価値観や働き方を取り入れ企業文化が変革します。
また、異なる視点や知識の交流を通じて、組織全体の学習意欲や能力が向上します。
これにより、新しい挑戦に柔軟に対応できる組織風土が醸成されるでしょう。


大企業による従来型の「クローズドイノベーション」には、限界が指摘されています。
事実、スマートフォンのように一社で全ての技術をまかなえない製品も現れ、他社の技術や知見を取り入れる必要性が高まっています。
こうした背景から、2003年にヘンリー・チェスブロウ氏が提唱した「オープンイノベーション」の概念が注目され、社外との連携によってイノベーションを創出する手法が広く採用されるようになりました。
とくに、大企業の新規事業開発においては、スタートアップや大学との協業、さらには社外アイデアを使用する企業が増えています。
ここからは、業界や技術領域・地域を問わず、海外でオープンイノベーションを活用して新規事業を成功させた代表的な事例を紹介します。
今回紹介した企業以外の新規事業成功例について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
オープンイノベーションの先駆例として有名なのが、米国P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)の「Connect+Develop」戦略です。
P&Gは、2000年代に自社外のアイデアや技術を積極的に取り込む革新的な方針を打ち出し、新製品開発プロセスを大幅に変革しました。
P&Gが実施した新製品開発の成果は顕著で、現在ではP&Gのイノベーションの35%以上が社外との連携から生まれ、数十億ドル規模の収益に貢献しています。
一例として、プリングルズのポテトチップスに絵や文字を印刷する新商品「Pringles Prints」は、外部パートナーとの協働によって企画から市場投入まで従来の半分以下の期間で実現しました。
これにより、従来なら数年かかった開発が1年たらずで実施できるようになっただけでなく、投資コストも抑制できるようになりました。
このようにP&Gは、「社内の人間だけが働く必要はない」という発想のもと、外部の発明家や企業とのネットワークを築いています。
このようにP&Gは、自社だけでは得られなかった革新的な製品を次々と生み出し、市場での競争力強化と新規事業創出に成功しています。
デンマークの玩具メーカーLEGO(レゴ)は、顧客コミュニティとの共創によって業績を回復させ、新たな市場を開拓した好例です。
2000年代初頭、経営危機に直面したLEGOは発想を転換し、自社ファンの創意工夫を取り込むオープンイノベーション戦略に踏み切りました。
一例として、オンラインプラットフォーム「LEGO Ideas」を立ち上げ、ユーザーが新製品のアイデアを投稿し、互いに投票できる仕組みを導入しました。
その結果、毎年数百件ものアイデアが寄せられ、その中から支持を集めたものが実際の商品化に結びついています。
LEGO Ideasでは、ファン提案から生まれた「レゴアーキテクチャー」シリーズは有名建築物をモデルにした大人向け商品としてヒットし、従来手薄だった成人層の市場を開拓しました。
同様に、女の子向けの「レゴフレンズ」シリーズもコミュニティ発の着想を取り入れた商品として女性子供層の人気を拡大しています。
このように、LEGO経営陣は「自社の従業員でなくとも一緒に働ける」という哲学を掲げ、顧客を開発パートナーと位置付けました。
これにより、低コストでニーズに合致した新商品を次々と投入できただけでなく、熱心なファンコミュニティを育成しブランドロイヤリティを一層高める効果も生まれています。
また、顧客参加型のオープンイノベーションは、LEGOにとって新規事業(新シリーズ)創出の原動力となり、同社を玩具業界のイノベーションリーダーへと押し上げました。
自動車業界でも、オープンイノベーションを通じた新技術導入が進んでいます。
ドイツの高級車メーカーであるメルセデス・ベンツ(ダイムラー社)は、自社のコネクテッドカー戦略にスタートアップ企業の技術を積極活用しています。
その代表例が、英スタートアップWhat3Wordsとの提携による次世代車載ナビゲーション機能の開発です。
メルセデス・ベンツは、オープンイノベーションプラットフォーム「Startup Autobahn」を通じてWhat3Wordsと協業し、世界を3メートル四方のグリッドに分割してそれぞれにユニークな3単語の住所を割り当てる同社の革新的技術を、自社車両の音声ナビに統合しました。
このコラボレーションにより、運転手はわずか3語を口にするだけで目的地を正確に設定できるようになり、特に従来の住所では指定しにくかった郊外や大型施設内での誘導精度が飛躍的に向上しました。
メルセデス・ベンツは、この技術を2018年発売の新型車に世界で初めて搭載し、ユーザー体験の差別化に成功しています。
さらに、ダイムラー社はWhat3Words社に資本参加し、戦略的パートナーシップを強化しました。
Startup Autobahnについて注目すべきことは、同社が初めての対話から実装までを1年たらずで成し遂げた点で、従来の社内開発では考えられないスピードでイノベーションを商品化できたことです。
メルセデス・ベンツの取り組みは、大企業がスタートアップとの協業によって自社に不足する先端技術を迅速に取り込み、新サービスを創出した好例と言えます。
また、オープンイノベーションにより自動車メーカーは開発スピードを2倍以上に高められるとの分析もあり、業界全体でこうした取り組みが競争力維持の鍵となっています。
イギリスを拠点とする製薬大手アストラゼネカは、新薬開発を加速するためのオープンイノベーション施策を包括的に展開しています。
一例として、2014年に「Open Innovation」プラットフォームを立ち上げ、社外の研究者や企業に自社の開発中化合物やデータ、設備を提供して共同研究を募る取り組みを始めました。
Open Innovationでは、研究者がウェブ上の提案窓口からアイデアを応募でき、審査を経て採択されればアストラゼネカから資金や資源の提供を受けて共同で研究を進められます。
その結果、2014年以降で世界40か国以上から450件を超える協業プロジェクトが生まれ、パートナー研究者には総額7,500万ドル相当の助成金が授与されるなど、大規模なグローバル連携ネットワークへと発展しました。
一例として、英国内では医学研究審議会(MRC)と提携して新しい治療候補化合物を学術機関に提供したり、米国国立衛生研究所(NIH)や台湾の国家新薬開発計画(NRPB)と共同研究したりするなど、地域を問わずオープンな協働が進められています。
また、アストラゼネカ自身も「外部の知恵と資源に門戸を開かなければ、画期的な新薬創出は困難」と認識しており、社内外の壁を越えた知識交流によって研究開発力を強化しました。
その成果のひとつとして、オープンイノベーションを通じて得られたシーズから新薬候補が創出される事例も報告されています。
また、オープンイノベーションにより共同研究者に研究資金の獲得機会が提供され、ウィンウィンの関係構築ができました。
このように、製薬業界は新規事業(新薬)の成功確率を上げるために巨額の投資を要しますが、アストラゼネカの取り組みは外部とのリスク・リターン共有によって研究効率を高め、新たな医療ビジネスを創造しました。
海外の成功事例から、日本企業が学ぶべきポイントも明確になっています。
ここからは、日本企業への示唆と今後の展望を4つの視点から解説します。
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日本企業は、高度成長期の成功体験から、自社完結型の開発志向が強い傾向にあります。
しかし、オープンイノベーションの潮流に乗り遅れないためには「社外の知恵を借りる」ことへの抵抗感を捨てなければなりません。
また、社内外の壁を低くし、外部パートナーと協働できる柔軟性を養うことが求められます。
日本企業は、単発の提携で終わらせず、継続的かつ体系的にオープンイノベーションを推進する仕組みづくりが求められます。
一例として、社内に専門組織を設置してスタートアップとの連携を常時模索したり、アクセラレーターやCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を設けて有望な技術を持つ企業に投資・支援したりするなど、大企業自ら「共創のプラットフォーム」を構築することが必要です。
実際、海外では多くの企業がこれらの手法を取り入れて成果を上げています。
また、自社の強みを生かしつつ、オープンイノベーションを促進する制度やプロセスを整備することも求められます。
オープンイノベーションを成功させるには、協業相手と対等かつ互恵的な関係を築くことが欠かせません。
協業相手は、スタートアップや研究機関にとって魅力的なパートナーとなるため、自社のリソース提供や成果に応じた公正なリターン配分など、相手の成長にも寄与する姿勢が求められます。
NASAでは、優秀な参加者に追加のビジネス機会が提供され、新興企業の創出につながりました。
日本企業も単に技術やアイデアを「買う」のではなく、共に価値を創るパートナーシップ志向で臨むことが重要です。
優れた技術やビジネスモデルは、世界中に存在します。
新規事業を成功させるためには、積極的に海外のスタートアップや研究機関とのネットワークを築き、グローバルなオープンイノベーションを展開することが求められます。
このように、国内にとどまらない取り組みは、日本発のイノベーションを世界市場で成功させる原動力となるでしょう。
今回は、大企業の新規事業におけるオープンイノベーションの重要性を解説しました。
オープンイノベーションは、一部企業の実験的取り組みに留まらず、世界のトップ企業が競って採用する新規事業開発の主流アプローチとなりました。
日本企業にとっても、自社の殻に閉じこもることなく外部と連携する姿勢が、次のイノベーション創出に欠かせません。
自社の強みと社外の力を組み合わせ、新たな価値を共創していくことで、日本発の新規事業もグローバル市場で成功を収めましょう。

