※本コラムは2025年7月29日に開催した株式会社unlockのビジネスセミナーを、2回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツ(後編)です。
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さて、ここから俯瞰的に分析をしていきます。まずはいくつかある『共通点』です。
きっかけは何だったのか。これは既存市場の減少の懸念だったそうです。きっかけは既存事業が小さくなっていくという危機感が半数でした。プロダクトライフサイクルも早くなっていますし、企業の寿命も短くなっています。これは多いのではないかと思います。
それから、次の共通点は、始まるきっかけです。トップダウンで飛び地は決まるのではと思われる方が多いと感じるのですが、実は発案者がトップではない事例が半数以上です。今日は特に企業のトップや役員ではない方のご参加も多いと思うのですが、これは非常に勇気づけられませんか?
トップではなくても、誰が見ても確かに次はこれだ、妥当性があるよね、という事業ではない事業でも、実際に社内で通っているわけです。こういう成功事例があるわけです。これは非常に勇気づけられるのではないでしょうか。
それからここも重要です。飛び地だけでなく新規事業全般ですが、今日ご紹介した16事例の全部が成長市場です。新規事業はこうでないといけないと考えます。成長市場への参入、これがマストです。
なぜか。やはり成長市場で利益率が高い事業をやるべきなので、新規事業こそ成長市場は必須だと思います。
そして、参入理由はアセットの活用です。共通認識のためにご説明しますと、これは日本語にすると資産です。自社が持つ資産を活用できたのか、どうなのかという〇×です。
資産というのはブランド等いろいろとありますが、新規事業においてよく重視されるアセットは大体この2つです。技術ノウハウ、それから今のお客様に売れるのか。今のお客様という言い方はあれですが、活用できるのかどうかという点ですね。
この二軸で見ていったときにどうなのか。やはり活用できている事例は多いです。特に技術、ノウハウを自社の知見が生かせるところに参入している企業さんは、その領域として一見脈絡がなくても、技術ノウハウが生かせるという理由から参入していることが多いです。
そして画面では先程見ていただいたように、こういうアセットを使えている会社が多いのですが、反対にひっくり返して、アセットを全然使えないところはあるのか?という点でご覧ください。
こういう感じです。アセットを活用してない事例というのは、たった2例しかありません。何が言いたいのかと言いますと、一見全く脈絡のない、小売店・コンビニが銀行を始めるとか、フィルムの会社が化粧品をやるといった飛び地の事例をご説明してきましたが、全く何のアセットも使ってない事例は少ないと思いませんか?
16事例中、たった2例しかない。これは本当に飛び地と言えるのでしょうか。それを考えるために、画面の図表をご覧ください。これはアンゾフの成長マトリックスというもので、新規事業に関わる方はよくご存知だと思います。
見方としては、表の表側、縦の方、こちらが製品です。お作りの製品・サービスの既存新規。それからこちらは市場ですね。市場というのは、お客様と見ていいと思います。
既存・既存というのは、既存の商品を既存のお客様に売る、つまり現状です。この右側に行くと、既存の製品を別のお客様に売りに行く。例えば、BtoBからBtoCへ同じ商品を売りに行くような、同じか、あるいはややマイナーチェンジしたものを売りに行くパターンが右上です。左下が、今のお客様に新しい商品を売りに行くというパターンで、右下が今回の飛び地・多角化と新規事業領域で解釈されるところですね。
先程の16事例をアンゾフの成長マトリックスにプロットしてみました。本当は、四象限とした時に、四象限の中に綺麗におさまるように置きたいところですが、実態としては結構ボーダーラインのものもあったりします。あえてポジションをあまり綺麗じゃない形で置いております。
ここから何が言えるかというお話ですが、飛び地といえども、まずは多角化以外、つまりここ以外のところにも存在しますということですね。領域だけ見ればフィルム会社が化粧品や医療と、全く脈絡がなくて飛び地と言えるのですが、実はよく見てみると、純然たる飛び地、つまりアンゾフのマトリックスでは右下の事例ばかりではない、ということです。
例えば、セブンアンドアイさんは、セブンイレブンという小売業から銀行、金融に行ったわけですが、今のセブンイレブンのお客様にセブン銀行を使ってもらっているという意味では、右下ではありません。領域としては全くの飛び地でも、実はアンゾフのマトリックスに落とし込んでみると、全くの飛び地とは言えない。
実際に飛び地でも、表の右下に当たらない企業を除外した場合、右下に当たる中で、右下の多角化に限定してみた時、技術や何らかのアセット・ブランドも含めて、自社のアセットを活用している会社というのはどれぐらいかというと、ルネサンス以外です。飛び地に見えるところでも、実はほとんどの場合、何らかのアセットを使っているということです。
新・旧、コト・モノ問わず、アセットは何らか活用しています。ルネサンスだけは純然たる意味で、アセットは全く活用してないということですね。本当に全くの飛び散というのがほとんど無い、ということになります。何らかの自社のアセットや使えるものは活用した上でやって、失敗確率を下げているのですね。おそらく社内でも「このアセットが使えますね」と言った方が通りやすいと思うのですが、何らかのアセットを活用できるかを考えて、活用できるものに参入しているということです。この辺りが今日一番お伝えしたいことの1つです。
ここまでのまとめです。
まず参入のきっかけは、既存事業に対する危機感。トップダウンばかりではなく、従業員発案や技術起点もありました。法改正が後押しするケースもありました。
参入事業はすべて成長市場であるというのを強調したいと思います。一見、既存事業との関連性が見えない参入であっても、完全な飛び地というのは実は珍しいのです。2000年以降の新・旧、モノ・コトの事例で言うと、完全な飛び地の成功事例というのは、ほとんど見当たらないと言っていいくらいです。なので、やはり何らかのアセットを絡めて成功している、と言っていいのではないでしょうか。
飛び地は難しいけれどもやはり参入に興味があるという方のために、飛び地への参入方法をお伝えします。その前に、まず我々unlockとして、飛び地に参入することに対するスタンスをお話しさせてください。
まず我々のスタンスとしまして、やはり飛び地はお勧めしません。理由としまして、まず今回のセミナー準備において成功事例の探索に非常に苦労しました。なかなか見当たりません。それからこのセミナー自体に『生存者バイアス』がかかっています。成功した事例を集めて、失敗した死屍累々は紹介していません。バイアスがかかっているのです。
何度もお伝えしているように、何の武器も使えない市場で戦うのは冒険度合いが大き過ぎます。飛び地に見えて、実際にはほとんど『飛び地ふう』な事業ばかりですよね。純然たる飛び地というのはほとんどないので、我々はお勧めしません。ですが、どうしてもという方のために、参入するのであればこういうふうにすることをお勧めします、というお話をしたいと思います。
まず、参入時に検討することはこの7つです。


特に、重要なのが1番と2番です。やはり飛び地は危険です。できれば飛び地に参入しない方がいいです。そのためにまず既存事業の取りこぼしを再チェックしてください。我々が見ると『灯台下暗し』で、飛び地に行かなくても既存事業の事業領域で参入チャンスがある事業が、結構あるケースが多いのです。「散々考えたんだけど」とおっしゃるお客様のご依頼もありましたけど、やはりその『灯台下暗し』のケースがありました。
それから、技術やノウハウの転用の可能性。これも必ずやっていただきたいと思います。その上で成長市場をリストアップし、その成長市場についての自社の技術ノウハウが転用できないかを確認し、他にやっているところがいないかをチェックして、事業アイデアを検討して、戦略を作ったり、採算性を確認してプロダクトを作って、テスト参入というようなプロセスがお勧めです。
とにかくこの1番・2番が非常に重要です。飛び地でなくても相当な覚悟が必要だからです。先日亡くなられた軽自動車スズキの鈴木修さんの著書にありましたが、日本の自動車をインドに持っていくのも非常に大変なのです。とんでもないご苦労がありました。
アンゾフの成長マトリックスでいうと単に右側に持っていくだけですが、既存の製品をインドに持っていくだけでも非常に大変なのです。こういう苦労があるので、ましてや右下に行くことがどれだけ大変なのかということですね。なので、できるだけ飛び地は避けて、足元を確認していただくことをお勧めします。
1番・2番・足元を確認したら、次にやることは成長市場をリストアップすることです。「成長市場」とあると非常に嬉しいですよね。「これ面白そう」「これは将来、絶対に来るぞ」と。
わかります。わかるのですが、ここは要注意です。成長市場をリストアップというのは、当然ながら希望を感じるのです。成長市場だからですが、浮かれてはいけません。なぜかというと、これは『隣の芝で誰かの庭』なのです。自分で言って本当にそうだなぁといつも思うのですが、『隣の芝は誰かの庭』なので、やはり不用意な参入を避けるべきです。
なるべく足元で事業を考えることを重視していただきたい、と思います。そして本当に飛び地に参入するという時、この4番が一番重要です。くどいですが、飛び地だと思ってもどこかに自社の技術ノウハウが転用できないか? 言われるまでもないと思うのですが、ぜひこれは確認してください。ここは非常に重要です。
あとは、今のやり方以外に比較的低リスクな飛び地への入り方としては、FC加入や代理権の取得、ライセンスがあります。どこかの会社とコラボするのもあり、リスクは低いと思います。自社だけでリスク取らない方法です。
ですが、やはりリスクとリターンはだいたい均衡しますので、デメリットとしては収益性が低いです。いざ自前で始めるときに揉めやすいです。ここはいけるぞ、自分たちのノウハウが身に付いてきたぞと思って、「ではもう僕らだけでやります」と言ってもそう簡単にいきません。なので、ここは非常に難しいところです。もちろん、それを事前に相手と約束した上で始める方法もありますが、リスクとリターンはある程度連動すると思います。
では、飛び地はどんな事業を選ぶべきなのかということですが、究極的にはどの会社が何をやってもいいと思います。
全くの飛び地だったルネサンスさんは、5000億の市場で業界2位。勝てば官軍の世界です。なので、究極的には何をやってもいいです。ただし、やはり自社アセットを生かせるところを探すのが非常に重要で、どういう領域を選ぶのかということに我々はこういう考え方を持っています。
本日のまとめです。
やはり飛び地は最後の手段。
どうしても参入する際は、足元の点検を怠らない。
隣の芝は誰かの庭であるということを忘れずに。
結局「勝てば官軍」でも、なるべく何らかのアセットを活用できる市場を選んで、丸腰になることはできるだけ避けてください。
以上を持ちまして、本日のセミナーを終了とさせていただきます。
皆様、本日はありがとうございました。

