皆さんは、MVP(Minimum Viable Product)とは何かご存じですか?
既存の事業でも使われているMVPですが、新規事業の立ち上げにも活用できます。
本コラムでは、MVPの定義や活用法などを解説します。
目次
MVP(実用最小限の製品)とは、最低限の機能だけを持った試作品のことです。
起業家エリック・リースは著書『リーンスタートアップ』でMVPを「チームが顧客について検証済みの学びを、最小の労力で最大限に得られる新製品のバージョン」と定義しました。
小規模でもユーザーに価値を提供できる状態で市場に出すことで、いち早く顧客の反応やフィードバックを得ることを目的としています。
新規事業においてMVPが重要な理由は、市場のニーズに合致するか早期に確かめ、ムダな開発を防ぐためです。
新規事業が失敗する理由の第1位は「市場のニーズがない」ことです。
また、約42%が市場のニーズがないことが原因で新規事業が失敗するとされています。
最初からフル機能の製品を作り込んでも、そもそも顧客が望んでいなければ大きなリスクをともないます。
MVPであれば小さな投資で「本当に求められるか?」を検証でき、方向性の修正も容易になります。
つまり、MVPは大きな失敗を避けるためのリスク低減手段でもあるのです。
また、MVPを通じて実際のユーザーから貴重なフィードバックを得ることで、製品アイデアの改善点が明確になります。
一例として、Airbnbは創業時、自分たちのアパートを試しに貸し出したことから始まり、Amazonでさえジェフ・ベゾス氏が自宅ガレージから本を発送するというMVPからスタートしました。
小さく始めて大きく育てる——これがMVPの神髄と言えるでしょう。
新規事業をMVPで進める基本的な流れは、次のとおりです。
MVPを始めるためには、まずターゲット顧客の課題を洗い出し、「この課題はこの解決策で解消できるはずだ」という仮説を立てます。
仮説が明確でないと検証ができないため、誰のどんなニーズに応えるかを具体化しましょう。
課題の見極め方について知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
仮説を検証するためには、必要最小限の機能だけを備えた製品やサービスを試作します。
この段階の製品やサービスは、ランディングページでもプロトタイプでも構いません。
重要なのは核心となる価値を提供できる要素だけを実装することです。
時間とコストをかけすぎないように、シンプルにつくりましょう。
製品やサービスが完成したら、構築したMVPを実際にユーザーに使ってもらい、反応を観察します。
具体的には、小規模なテストマーケティングにより、ユーザーが製品をどう使うか、どんな反応や意見があるかデータを集めます。
ここでは定性的なフィードバック(感想や不満点)だけでなく、定量的な指標(登録者数、利用頻度、離脱率など)も計測しましょう。
MVPにおける市場の調査にお悩みの方は、unlockのマーケットリサーチをご利用ください。
次に、集めたデータや顧客フィードバックを分析し、仮説が正しかったか検証します。
具体的には、顧客が価値を感じた点・感じなかった点はどこか、当初想定していなかった課題は見つかったかなどをチームで分析・学習します。
仮説と結果にギャップがあれば、なぜそうなったのか原因を考察しましょう。
分析・学習が終了したら、検証結果に基づき、事業アイデアを改善または方向転換(ピボット)しましょう。
仮説が概ね正しい場合は、そのまま機能拡張や品質向上を進めます。
間違っていた場合は、ターゲット顧客や課題の見直し、新たな仮説を設定しましょう。
そして、再び必要に応じてMVPを構築し、次のサイクルに入ります(ビルド→メジャー→ラーンの反復)。
このように、段階的に製品・サービスの完成度と市場適合性を高めていきます。
MVPと一口に言っても、その具体的な形態はさまざまです。
ここからは、目的に応じて工夫されたMVPの例をいくつか紹介します。
ランディングページ型は、製品のコンセプトやメリットを説明する簡易なWebページを作り、ユーザーの反応を見る方法です。
一例として、新サービスの概要と「興味があればこちらをクリック/登録」というCTA(行動喚起)を用意し、どの程度反応があるかで需要を測ります。
ランディングページ型をりようすると、SNS広告などでページに誘導し、登録者数や問い合わせ数でニーズを定量化できます。
また、実際にプロダクトが無くてもテスト可能な手法で、アイデア段階での市場興味を検証するのに有効です。
プロトタイプ・モックアップ型は、実際に動く試作品や、画面遷移だけのモックアップ(模型)を作ってユーザーに見せる方法です。
アプリやソフトウェアの場合はFigmaなどでクリック可能なUIプロトタイプを作成し、ユーザーテストを実施します。
動く部分は最小限に留め、デザインや操作感だけでも見せることで、ユーザーが価値を感じるか、使いやすいかといったフィードバックを収集します。
プロトタイプ・モックアップ型は、完成品ではないため、機能は限定的です。
しかし、ユーザー体験の早期検証には役立ちます。
プロトタイピングについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
Explainerビデオ型は、実物をつくらず、サービスの概念を動画で説明して検証する方法です。
Explainerビデオ型の代表的な例がDropboxです。
Dropbox社は、プロダクトを開発する前にサービス紹介の動画を公開し、多くのユーザーからメール登録を獲得しました。(下記)


引用:Types of MVPs with Examples and Real Case Studies
このように短い動画によるMVPでは、製品の価値提案を分かりやすく伝え、視聴者の反応(登録や問い合わせ)を測定します。
また、動画一本でアイデアの需要を測り投資判断ができるため、コストを抑えつつ大きな学びを得られます。
コンシェルジュ型は、裏側で手作業によってサービスを実現し、ユーザーには本格的なシステムが動いているように見せる方法です。
一例として、米国の靴通販サイトZapposは、創業当初、ウェブサイトに靴の商品写真だけを掲載し、注文が入ると創業者自ら靴店で商品を買って発送することで需要を検証しました。
Zapposの取り組みは、一見するとユーザーから見るとオンライン通販が成立しているように見えますが、裏では人力で対応していました。
このように、在庫管理システムや物流網を構築せずに、まず「人々はオンラインで靴を買うか?」という核心だけを確かめられます。
同様に、手作業で個別対応(コンシェルジュ型)したり、裏で人がオペレーションするウィザード・オブ・オズ型は、システム開発に大規模投資する前に需要を実証する強力な手法です。
限定機能型(シングル機能型)は、製品の中核となる一つの機能だけを実装した簡易版をリリースする方法です。
他の要素は省いて、一番重要な価値提供部分だけでユーザーが満足するか試します。
一例として、Twitterは初期には「短文を共有する」機能だけに絞ったサービスとしてスタートしました。
余計な機能を付け加えずコアバリューのみを検証することで、その機能自体の有効性を測れます。
ここからは、MVPでよくある失敗を紹介します。
MVPでは、「中途半端なものを出すとブランドを傷つけるのではないか」と懸念が出ることがあります。
確かにMVPは最小限の機能に絞ります。
しかし、決して「いい加減なもの」を出す訳ではありません。
MVPを成功させるためには、必要な品質基準をあらかじめ定め、その範囲内で最小の機能を提供することが重要です。
具体的には、セキュリティや法令遵守など絶対に外せない品質ラインは守りつつ、付加機能や贅沢な仕上げを削ります。
初心者にありがちなのが、「これも必要かもしれない」と機能を増やしてしまい、もはやそれはMVPではなくなっているケースです。
MVPの目的は、あくまで学習と検証であり、機能追加は次の検証項目が出てきてからでも遅くありません。
最初のMVPでは仮説の核となる一点に絞り、「これだけでユーザーは価値を感じるか?」を試してみましょう。
余計な機能が多いと、何が原因で反応が良い悪いか分からなくなります。
また、常に「これは検証に本当に必要か?」と自問し、削れるものは削りましょう。
MVPを出したものの、ユーザーの声を十分に集めなかったり、得られたデータを深く分析しなかったりすると、MVPの価値が半減します。
「出すこと」を目的にするのではなく、「出して学ぶこと」が目的であることを意識しましょう。
また、定性・定量のフィードバックを計画的に収集し、それを次のアクションに結び付けましょう。
MVPでは、自分たちにとって都合の良い意見ばかりを見るのではなく、厳しい意見にこそ真摯に向き合う姿勢が重要です。
MVPの定義や活用法などを解説しました。
MVPは、新規事業の不確実性を減らし、成功率を高める強力なアプローチです。
最小限のプロダクトで顧客の声をいち早く聞くことで、「本当に求められるもの」を見極めるコンパスとなります。
とくに、失敗を恐れがちな企業の中では、MVPによるスモールスタートがチャレンジを現実的にする突破口になるはずです。
まずは、社内外の小さな範囲でいいので、ひとつ実験を始めてみてください。
簡単なランディングページをつくり、既存顧客に見せて反応をもらうだけでも立派なMVP検証です。
ユーザーの反応という「真実」に触れれば、次に何をすべきかおのずと見えてくるはずです。
この記事を読んだらぜひMVPによる新規事業開発に一歩踏み出してみてください!

