ニュース・コラム

2020.4.13
コロナ後の世界で伸びる新規事業
新規事業

執筆者:unlock代表・津島

2020年4月13日現在、緊急事態宣言が続いており、東京をはじめ日本全国で感染の拡大が続いている。 経済的側面では、あらゆる指標でリーマンショックを上回り、未だ終わりが見通せない未曾有の危機と言われている。 そのような状況下においてでも、未来を考える経営者の皆さんに向けて、我々の考察をお届けしたい。

1.コロナ後の世界で伸びる新規事業

下記の根拠については、3の社会構造の変化で説明。

あらゆるリモートの拡大  Online / デジタルでのコミュニケーション       - 会議、商談、診察、教育 等  取引のオンライン化      - 各種フィンテック(キャッシュレス含む)、契約書、印鑑、名刺、各種承認のワークフロー  体験のオンライン化        - 小~大規模イベント、eスポーツ、ZOOM飲み会、XR(VRなどのこと)  サービスの”宅配”化        - 飲食(中食)、ショッピング(EC化率の増加)、美容、医療 等

命を守る分野の経済価値の高まり   - ヘルスケア、食品、衛生、物流、デジタル、セキュリティ、生命科学 等

自動化/省力化/アウトソースニーズの拡大   - AI、ロボット、RPA、自動化プログラミング、家事代行やベビーシッター 等

M&A、独立起業の増加   - スモールM&Aを含む各種事業承継、大きな組織に属さないフリーランス 等

復活消費   - 一時的な反発消費(旅行、飲食、イベント、娯楽全般、高額商品等)、インバウンド消費

監視社会への防衛手段   - ブロックチェーン、匿名化技術、サイバーセキュリティー 等



2.力を失うもの

今回のコロナ禍により、従来の影響力を失うと思われるモノ・サービス、習慣。 全体的な傾向として、これまで何となく無駄だなとか変だなと思いつつも、前例や商慣習により変化しなかったものが、より生産的で本質的なやり方への移行すると考える。

紙ベースの取引に関連するプロトコル   - はんこ、名刺、紙の契約書、紙幣や硬貨などの現金

形式的な”ビジネス典礼”   - わざわざ会う、とりあえず行く&集まる、発言しない人の会議参加や陪席

”人力”による生産   - 工場、飲食 等

都市部へ人口集中   - オフィスや住宅の都市部の不動産価格の下落

旧来型の大きな組織   - フリーランス化、スモールビジネスの増加



3.社会構造の変化予測

上でご紹介した新規事業がなぜコロナ後の世界で伸びるのか?その根拠とも言える社会構造の変化について考えてみたい。

人の関与度の低下圧力の高まり  コロナ禍以前から、社会 構造的な人手不足のために言われていたことだが、今回の新型コロナウイルスにより、例えば工場での生産を継続する上では、人がリスクになり得る可能性が新たに示された。
人口減少時代であることは変わりがないため、ますます人の関与を下げる圧力はあらゆる方面で強まると考えられる。 海外では、看護スタッフが足りず、医療用のロボットも急速に活用されはじめている。日本人の好きな”前例”は、ロボット活用へ前向きな影響を及ぼす。

効率化に対する後ろめたさの減退  これまでの日本社会はどこか「効率化」に対して、ポジティブになりきれなかったような印象がある。 「効率化」はともすれば「楽をしている」つまり「悪いことだ」という見方だ。
それが生産性の停滞を生み、世界の先進国で唯一賃金が上がっていない(むしろマイナス)な国になってしまった一因であろう。
きっかけこそコロナだったが、先で挙げたような、ロボット化、自動化、デジタル化、リモート化などを否応なく経験することで、社会・企業の生産性改革が進む。

非DX、非デジタル化企業の求心力低下加速  東京商工リサーチによると、非常事態宣言後の在宅勤務/リモートワークを実施している企業は全体の約25%だったそうだ。ほとんどの企業は”非常事態”下においてもリモートワークに対応できなかった。10年近く前から完全リモートを実現するためのツールは無料で存在していた。セキュリティの問題はたしかにあったが、まともに検討をしていなかったのだ。さすがに今回のことは予想できなかったとはいえ、対応の遅さはには疑問が残る。
たとえ有名企業勤務であったとしても、子供や高齢の親がいる家から電車で通勤し、感染者の増加が続く都内で仕事をして家に帰るのはどんな気分だろうか? 3・11の震災時と同じく、「人生」を考える人が増えると思われる。

企業の内部留保に対する批判の減少  批判されていたが、内部留保は皮肉にも危機に対する生存力を支える形となった。それによる影響としては、賃金上昇圧力の弱まり(不況による求人倍率の低下や自動化、省力化も影響)。 これも旧来型の大きな組織に属するメリットが相対的に弱まることに寄与する。

団塊世代の引退加速  現在の日本の社長の平均年齢は、61.7歳。休廃業・解散した企業の社長の平均年齢は69.6歳。この年代は団塊の世代。今回の危機により自主的に引退、または引退を余儀なくされる経営者は平時より増加するはず。

企業の再編と買収型起業の増加  先の団塊世代経営者の引退加速や、資金繰りに余裕のなくなった中小をめぐる再編が起こる。従来の不況型のM&Aと異なる点は、買い手の参加者に個人の割合が増えること。「買収型起業」と呼ばれる。ハーバード・ビジネス・レビューによると、米国の小規模企業のオンライン売買市場「ビズバイセル」においても、この種の取引が記録的な件数に達しているという。

中高年と若い世代の収入差の縮小  車離れをはじめとした「◯◯離れ」という言葉で上の世代と比較して消費をしないことを批判されがちな若い世代。収入が減っていることを原因とする説もあるが、厚労省のデータによると実は収入は上がっている。近年の求人倍率の記録的な高さを見れば不思議ではない。
先に見てきたデジタルをはじめとした社会変化への対応は若年層に有利。以前に比べると高い人材流動性に乗り、人手不足も相まって、賃金は以前の水準より上昇しやすい。またITエンジニアを中心としたフリーランス化などにより、不安定さはあるものの、以前より高収入を得る機会が増えている。
他方、上記のような社会変化への対応においては、中高年は相対的に不利であり、加速する大幅な変化の中では、徐々に活躍の機会が減少していくリスクがあり、結果として若年層との収入差は縮小すると思われる。

女性の社会進出の増加  コロナ禍以前から増加していたが、リモートワークを含めた働き方の変革の加速や、家事代行サービスの浸透、そして不況などにより、進出が加速する。 可処分所得の増加に伴い、家事のアウトソースはますます進み、離婚率の上昇、少子化の加速(子供1人あたりの教育費の増加)、管理職の女性化比率上昇、女性の高学歴化が進む。

都市部への集中度合いの減少  居住地を決める重要なポイントは、職場である。通勤頻度が下がる、またはフルリモートも可能となることで、コロナ前のシナリオより、都市部の不動産価格の下落タイミングと速度は早まるかもしれない。行政機能の首都一極集中のリスクも見えてきており、政府には遷都を含めたリスク機能の分散の提言もあるようだ。5Gの普及と相まって、都市部への過度な人口集中時代は緩やかに終わりを迎えるだろう。

プライバシーと安心安全との均衡変容  世界では、政府による強制的なロックダウンが行われている。特に中国では強力な中央集権制度を背景に「封じ込め政策」を敢行。感染発生源である武漢の封鎖を解除し、海外にマスクを提供するなど、ある種の余裕まで見せている。この状態を可能にしたのが、ITによる監視システムである。 個人のスマホなどの情報を元に、個人を監視し、意に従わない者には”警告”を送ったり、逮捕をする。
一党独裁国家特有の強権政治かと思いきや、この危機における強靭性を見てかどうかはわからないが、米国をはじめとした先進各国がこれと似た動きを取り始めた。 ヨーロッパでは8社ある携帯電話会社に感染者の位置情報と、自分が近くでいたかどうかを知るために個人の行動履歴データを提供することに反対が出なかったという。 そしてこの記事を書いている日の夕方に発表されたニュースでは「政府が”濃厚接触者を把握”アプリの導入検討」とある。
日本の法律的にどこまで政府ができるかわからないが、いずれにしても個人のプライバシーは安全安心のためにある程度は犠牲になるということにおいては、ロックダウンを唯一実施しない日本もいつまでも例外となることはないのかもしれない。 人権が、プライバシーよりも生存であることが論じられる状況においては特にそうだろう。



4.雑記「きっかけこそコロナだったが」

この記事を執筆中の昼休みに見たニュースでは、キリストの墓があるとされるエルサレムの聖墳墓教会が新型コロナウイルスの影響で閉鎖されたそうだ。これは14世紀にペスト大流行の影響で閉鎖して以来のこと。 14世紀のペスト大流行では、それが契機となる大きな変革が多数起こった。
・農奴解放:人口減少による領主と農民の立場の逆転。中世社会の崩壊の契機。 ・宗教改革:ペストに無力だった教会への不信。同じく中世社会の崩壊の契機。 ・ルネサンス:人口減により1人あたりの所得増加。社会が成熟し芸術文化が発展。 ・寒冷化:農地が無人になり森林面積増加。二酸化炭素能動が減少し気温低下。

モンゴル軍の大移動が引き金となったとされるこの14世紀のペスト(黒死病)の大流行では、ヨーロッパだけでも全人口の4分の1にあたる2500万人が亡くなった。

これほどの人が亡くなれば、当然上記のような変革も起きるだろうとも思うが、良く見ていただきたい。上で挙げたような変革は今の社会でも同様の変化が見て取れはしないだろうか?

・農奴解放:組織に所属するべきという価値観の変化 ・宗教改革:効率や本質を科学的に直視することの重要性 ・ルネサンス:知性や精神面での成熟。モノよりコト。本当は何が幸せか? ・寒冷化:環境問題、サステナビリティへの関心の高まり

この記事を書いている2020年4月13日時点で、新型コロナウイルスの感染者数は世界全体で185万人、死者は11万人を超えている。 状況は深刻で、収束がまだ見通せていない。NHKの世論調査でも、自らの感染に不安感があるという人は国民の約9割にのぼるという。 経済面では、リーマンショックを超える景気の悪化。

過去の歴史では、「大恐慌」の後、アメリカは産業保護のため高関税政策を導入。それが第二次大戦の導火線になった。

ヒトラー党首率いるナチ党も、ヨーロッパで最も民主的と言われたワイマール憲法下のドイツで、「民主主義は無責任だ。自分は自分の責任のもとにドイツを必ず復興させる」と熱っぽく語り、強烈なリーダーシップのもと合法的に台頭していった。

トランプの自国主義や、対中貿易戦争に伴う高関税。先に触れたプライバシーの明け渡し。強権政治の有事での強さ。そして不況、人々の不安、未来の不透明さ。

コロナ禍で、民間人も企業も、自分たちの命(企業は資金繰り)を救えるのは国であることも認識された。小さな政府から、そのサイズが拡大する流れを感じる。

過去の悲惨な歴史と同じ方向に向かう状況が揃いつつあるようにも感じるが、とにかく今は社会がそうならないように監視しつつ、嵐が過ぎるまで、やるべきことを粛々とやっていきたい。

「ニュートンの三大業績」とされる万有引力の法則の導入、微積分法の発明、光のスペクトル分析は、いずれもペストを逃れて故郷の田舎に戻っていた18か月間の休暇中にできたそうだ。

新規事業は本質的に、重要度は高いが、既存業務に忙殺されている時には案外進まなかったりと、緊急度はそれほど高くない場合が多い。 つまり、仕事が止まっていて緊急度の高い業務が少ない今だからこそ、そして社会の変革期であるタイミングこそ、新たな事業創出の大きな好機と言える。

きっかけこそコロナだったが、この危機を通して、社会の多くの部分は、あるべき理想的な方向へ加速していくのではと感じている。我々経営者は、新規事業の創出という形で、新しい時代を切り拓いていきたい。

問い合わせ先


【代表取締役】
津島 越朗
【設立】
2016年 10月21日
【本社所在地】
東京都渋谷区恵比寿3丁目9番25号 日仏会館5階
【事業内容】
新規事業立上げの支援・コンサルティング
【公式サイト】
https://unlk.jp/