※本コラムは2025年5月21日に開催した株式会社unlockのビジネスセミナーを、3回に分けて書き下ろしたオリジナルコンテンツ(最終回)です。
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先程ご説明できなかった需要調査、市場規模調査、実現性調査、こういった調査の他にもあるのですが、これらを皆さんのお手元で今後やっていただく上で、先行プレイヤー調査も含めて共通して重要なコツや注意点があります。それをご説明させてください。
まず、新規事業の調査における基本的な思想はこれだと思います。繰り返しですが、「行けそう!」な材料を集めれば、極端に言えば、それで適うかなと考えております。


いわゆる調査会社が出してくるような、網羅的なレポートは不要と思います。ここには、新規事業の調査と一般的な調査会社にお願いしてやる調査という形ですが、評価軸として、スピード・精度・網羅性・見た目があって、新規事業は結構偏っているのです。
例えば、見た目。これは我々の立場からは言いにくいところもあるのですが、私が会社員の時に新規事業をやっている時、見た目はあまり関係なく、あまりうるさくは言われませんでした。網羅性もそこまでは言われませんでした。大事な情報を取り落とすことはよくないとはいえ、網羅的に調べるよりもポイントを突いていることが非常に重要でした。
的のど真ん中とその近くをちゃんと拾っているのか、そこさえ担保できればいい。目的にマッチした情報の濃さがあれば、まあいい。とにもかくにもスピードだ、というのが新規事業の特徴と思います。
理由はシンプルで、新規事業というのは検討中、ずっと”コスト”だからです。当然、売上が上がる、つまり新規事業をリリースして、お客様からお金を頂戴するまでは結局コストなのです。様々な会社の考え方がありますが、多くの会社においてやはり早く、クイック&ダーティーという言葉があるようですが、それでいいから素早く駆け抜けてほしいというところが多いのではないでしょうか。そうこうしているうちに外部環境もどんどん変わり、アイデアの修正をしないといけない場合もあるので、とにもかくにもスピードである、と。
網羅性・見た目というのは、ちょっとこれは目をつぶってください、というふうに私も社内でやっておりましたが、特にダメだと言われたことはありませんでした。遅いことが問題だというフィードバックを受けており、今もお客さん向けに出すときは、原則としてこの思想です。新規事業においてはコストなので、これを素早く切り抜けるためにも重要だと考えております。


これは共通する思想かと思います。どういう調査を進める場合にも、概念的にこのステップだと思っております。まずは目的を確認して調査するという、調査・設計を含む目的の確認。それから2番目が実際に調査すること。分析・考察は、先程インタビューをすると言いましたけども、そういったものも同じ流れですね。基本的には目的の確認、調査、設計があって、実査、分析・考察。
お伝えの仕方が難しいのですが、とにかく調査なのです。調査で一番のお勧めは、アイデアを思いついたらすぐに調査していただく。だから、一番は飛ばしていただくという、ちょっと矛盾するようなことを言っております。


まず調べてみることが大事、というのが今日の趣旨です。なぜこの順番にしているかというところが特に重要で、ご自身で思いついたアイデアを「どうかなあ」と自分で確認するだけなら不要で、いきなり②から行っていただいて結構です。むしろ、①をやることで疲れちゃって結局やらない、なんてこともあるかもしれません。すぐにAIを使ってください。
一方で、仕事は自分だけでやっている場合だけではないため、上司に依頼されたとか、我々のようにお客様に調査結果をご提示する必要があるとか、そんな場合はこの①が必須です。①をやってから②をやるほうが効率も良いですし、アウトプットがブレにくいです。案外「急がば回れ」と書いてありますね。
他の方へ成果物を出さなければいけない方も、本日たくさんご参加されていると思うのですが、とにかく調査。まずは、とにかく調査してみて、でもやっぱり改めてこの①ですね。自分以外の人へ見せる場合には①が必須で、わかりにくいメッセージになっておりますが、目的を言語化して精査する、調査の設計をする。これを非常に重要だとお伝えしたいのです。
なぜこんな面倒なことをわざわざ? いきなりパッと調べればいいのでは、というご指摘が聞こえてくるようですが、我々の経験上、必ずそれをやった方が早いことが分かっているからです。目的を言語化する意味とは、同じ調べるというアクションが同じだったとしても、目的をシャープにしている。言語化している場合とそうではない場合で、結論・成果が全然違うのです。
実際にご経験してもらうのがベストですが、ややナンセンスな例でお話ししたいと思います。画面の左側が一般的な調査、右側が新規事業の調査。左表側にアクションと調査目的、報告内容というふうにあります。
例えば、アクションが「火星を調べる」という場合、一般的な調査なら「ちょっと火星を調べて」と言われて、「目的は何?」と聞かれたら、「火星がどういう星かを知るためです」という回答になると思います。


一方で新規事業というのは、大体それではうまく進みません。「人が住めるかを検証するため」、つまり、調査後に何がしたいかに直結した目的を立てるようなことが重要です。これによって何が異なるかといえば、アウトプットが変わります。
単に「火星を調べて」「はい、分かりました」となると、火星は二酸化炭素を主成分とする薄い大気に覆われているとか、赤い砂漠があってとか、そんな話を報告としてあげるでしょう。
でも新規事業で目的をシャープにした場合、結論は「住めるかどうか」を検証するためなので、(そのままでは)結論は三角になります。薄い大気、厳しい温度といったような展開で、不可能ではないけれど、結構大きい挑戦ですね。
目的がシャープであれば、結論の出し方が変わってくる、レポートが変わってくるということで、目的の言語化、シャープにするということをお伝えしました。
目的は岩盤まで掘り下げる。これは、先程の火星を調べるというアクション。どういう目的、火星がどういう星かを調べるためという目的も悪くはありませんが、まだ岩盤に到達してないと言えると思います。こうなるとアウトプットがぼやけます。これに対して、目的をどうやってシャープにするのか、岩盤まで掘り下げるのかというのは、この2つの問いをしていただければ大体シャープになります。
1つ目、何のために調べるのか。目的の目的、火星がどういう星を調べるかを調べるのは何のためか?と自問自答する。トヨタさんが「なぜ」を7回繰り返す話は有名ですが、それに近い考え方です。
それから2番目、何が見つかれば、どんなアクションがあるのか。これを考えることです。「これを探しに行きます」ということを目的にするのですが、「それが見つかったらどうするの」「見つかったから何?」「どんなアクションがあるか」を問うことです。
裏返すと、目的はアクションベースで書くと、いきなりこれが適う、ということなのです。岩盤まで掘り下げると、アクションが同じ火星を調べるということだったとしても、人類が火星に住めるかを見極め、地球外に生きる選択肢を持つため、ということになります。


ぜひ、どなたかの依頼を受けて調査をする場合、上司に報告しなければならない場合、目的を書き出して言語化して、上司にそれで合っているかを聞いてください。私もそれをしょっちゅうやっていました。
実際に聞いてみると「案外違うんだな」ということがあるので、最初に「ちょっと火星調べて」と言われたときに「わかりました」と取り組むのはもちろん重要なフットワークですが、目的を書き出して、岩盤まで自分なりに掘り下げて、それを確認することで、一番手戻りが少なく、結論もシャープな調査をすることができます。
そして調査中も、「目的と合っているかどうか」を常に確認することが重要です。なぜかというと、だんだんズレていくからです。不思議なことに、調査をしていると自分の興味がある方に向いていったりします。悪いことではないものの、意図せずに目的とズレることが多いので、コンパスのようにぜひ小まめに確認をしてください。
「それはどうしたらいいの?」という、1つの参考のフォーマットをお見せします。画面のこちらは弊社の内部用調査設計フォーマットです。お客様からのご依頼以外に自社で調査をすることがあり、その時に使っているシートです。
ここの部分に目的を書くのですが、それにプラスして、結局何が知りたいのということと、これは割と自由に書けるのですが、大事なのは「知りたい意図」です。知りたいことの隣に、「知りたい意図」を書いてもらうということで、目的と合致しているかどうか、実はそんなに大事じゃないのではないかとか、本当はこれは不要ではないか、といったことが見えてきます。
例えばこの中で、調べてほしいことを5個出してもらったら、特に知りたいことにチェックをつけてもらうことも有効です。調べてもらいたいことが5個あるのを5個均等に同じレベルで調べると、時間も足りなくなるし、アウトプットにパンチが出なくなるので、特に知りたいところに重点を置くのが重要です。
なぜかというと、新規事業というのはスピードが重要だからです。5つ調べてというと、5つ調べる網羅性もそうなのですが、どれだけ情報が濃いか、目的にマッチした情報が濃いかというところが一番重要なので、このような形で自ら情報を調べる前に調査設計をしてみるのがおすすめです。目的から知りたいことを言語化しておくと、ブレにくくなります。
ということで、今日のまとめになります。今日は大きく4つのお話をさせていただきました。


アイデアを思いついたら、今の時代は生成AI、先行プレイヤーをとにかく調査してください、というのが一番大きなメッセージです。
2つ目、調査は情報を集めることで留めず、熊田が申し上げたように、「何が言えるか?」を考える考察です。言うまでもないかもしれませんが、非常に重要です。「集めて」と言われて集めることで止まるケースも散見されます。
3つ目、新規事業は検討中、ずっとコストです。素早く駆け抜ける必要があります。
4つ目、調査においては「目的」が最重要であり、言語化が有効。ということで、本日の内容を示させていただきました。
来月は新企画で、「プラットフォームビジネスの構造と成長モデル」というテーマで、セミナーを行います。前々からプラットフォームビジネスは一度整理しないといけないと思っていまして、今ようやく作成中です。生成AIにより今までのプラットホームがどう変わるのか、ということも副題に入れてお話しますので、ぜひご参加いただければと思います。
本日のセミナーは以上とさせていただきます。皆様、ご参加いただきまして誠にありがとうございました。

