新規事業を検討する多くの企業が直面する問題が「新規事業を任せられる人材がいない」です。
当社に寄せられるご相談で最も多い内容の一つであり、日経BP総合研究所が2020年9月に実施した調査『コロナ禍における新事業・新技術に関するアンケート』でも新規事業立ち上げや展開の課題として挙げられた中で「人材不足」が最も高い水準でした。
人材不足は、中途採用の有効求人倍率が2.34(2023年1月)であることなどから、新規事業に限らず日本の多くの企業にとって大きな課題です。
しかし、とりわけ新規事業に関しては不足感が大きいようです。
なぜなのでしょうか?
unlockでは、下記の3つだと考えています。
1.そもそも新規事業に特化した職種が存在しない
2.新規事業を立ち上げる会社が少ない
3.新規事業の成功確率が低いため
それぞれどういうことでしょうか?一つずつ見ていきましょう。
営業職、技術職、マーケティング職、経営職、人事、総務、経理・・・
企業活動に必要な職種は上記のように見慣れた職種をすぐに挙げられますが、「新規事業職」というのは存在せず、せいぜい「新規事業プロデューサー」という職種を求人広告等で見る程度です。
しかしあまり一般的とは言えませんし、営業や技術職と異なり定常的な業務として存在しないことも多いため、専門特化した1つの「職種」として存在していると言いがたいところがあります。
また、新規事業に従事する人は成功すれば、多くの場合その事業の中で責任者となり、規模が大きくなるにつれていつの間にか0→1の"新規事業"のフェーズではなくなることも挙げられます。
ベンチャー企業でゼロから事業を立ち上げた人も、成功すれば売却や上場というExitを通して、早期に引退をするか、投資家となることが多いため、専門家として市場に出てくることはほとんどありません。
1の「職種」として存在していると言いがたい理由として、そもそも「新規事業を立ち上げる会社が少ない」ということが言えます。
身もふたもないですが、これが最も大きな理由です。
2017年の中小企業白書では、新規事業に取り組んでいる企業は約2割というデータがあります。
前年度から引き続き取り組んでいる企業や、季節ごとに商品の新装版を出す企業も含めてのカウントなので、いわゆる「新規事業立ち上げ」のイメージからすると、実際にはもっと少ないと思われます。
「新規事業の成功確率は5%」は本当か? でも触れましたが、新規事業の成功確率は5%よりは高そうですが、やはり決して高い成功確率とは言えないのが現状です。
新規事業人材の定義を「新規事業を経験した人材」から「新規事業を成功させた人材」とすると、途端に候補が少なくなります。
まとめると、下記のようになります。
そもそも新規事業に取り組む機会を持つ企業が少なく、また営業職のような定常業務でもないため「新規事業の専門家」が生まれにくい構造にある。
また、新規事業の成功確率は一般的に高くないため、新規事業の成功体験がある人材ともなると、極端に少なくなる。
新規事業ができる人材が少ないことはわかった一方で、それでも新規事業を立ち上げる必要がある場合はどのようにすればよいのでしょうか?
社内でどのような職種、タイプが最もフィットするのでしょうか?
ズバリ「マーケティング人材」です。
上記は、あくまでも当社が数多くの新規事業プロジェクトを見てきた経験から強いて言えばという答えです。
当然プロジェクトの種類によって大きくことなりますが、理由としては、新規事業立ち上げで最も苦労するのが多くの場合、製品やサービス開発ではなく「拡散・販売」だからです。
やはりどんないい製品・サービスを開発しても、勝手に売れていくことはほとんどありません。
あのミドリムシで有名なベンチャーで、今は上場企業のユーグレナも2006年1月に製品開発してから、2年間で500社に営業しても販売はゼロ件だったというストーリーもあります。
そういう意味では、粘り強さはもちろんのこと、売れる営業マンが持っているような嗅覚や、人間の心の機微や本音を理解して、訴えかけられる腕のいいマーケターに頼る必要があります。
プロジェクトの責任者にすべきかどうかについては、上記以外の要素も重要になるので一概には言えませんが、外せない人材です。
マーケティング職の採用は意外にもなんとかなるケースが多いようです。
レベルはピンキリで、高実績の人材の採用はやはり難しいですが、新規事業経験のある人材と異なり、マーケティング職は意外にも絶対数が多いです。
だいたいどの会社にも、名称は異なるもののマーケティング職は存在しています。場合によっては製品やサービスごとに担当がついているケースも多いようです。
一方で、昨今のデジタルマーケティングの潮流の速さから、内製化を諦める企業も増えてきているのが現状です。
しかし、デジタルマーケティングの代理店(外注先)も多く存在している点も、アウトソーシングしにくい新規事業と異なり、マーケティング職の絶対数が相対的に多い理由です。
多くの企業において、マーケティング担当は事業責任者からプロモーションやブランディングの相談を受けて、その施策を企画・実行する仕事をしています。
非常にやりがいのある仕事である一方で、部分的な仕事の任され方をしていると感じていたり、そもそも自分でサービスや製品を企画するところからやってみたいと考えるマーケターは多く存在しています。
また、彼らはタイプ的に「新しいことが好き」な傾向にあります。
つまり、彼らはいつも新規事業をやりたいと思っています。
世の中に新規事業の求人は多いようで、そこまで多くありません。
ぜひ勇気を出して、有能でやる気のあるマーケターを募集してみて下さい。