全員未経験者で挑む アセットを活かした新規事業【起案者編】

 

歯科医療業界におけるトップクラスの製品とサービスを提供し続ける株式会社モリタ。同社では、従業員のアイデアを起点にした社内起業制度「B-SWITCH」を2022年よりスタートさせ、挑戦の文化醸成と新たな事業創出に取り組んでいます。2024年10月からは第3期が始動し、社内選考を経て3名の起案者が選出されました。

 

この第3期では、unlockが支援パートナーとして伴走。新規事業の種を生み出すアイディエーションセミナー&ワークショップから、企画の壁打ち、資料化までを含む実務支援(unlock ILP)を約3か月間にわたり提供しました。今回はその取り組みの舞台裏を、起案者3名それぞれの視点から振り返ります。彼らが何に悩み、何を乗り越え、どんな学びを得たのか――unlockが見た「変化のプロセス」に迫ります。

 

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〈写真左から〉株式会社モリタ 石塚さま、山田さま、江川さま

起案のきっかけ

 

unlock(熊田):
今日はお時間をいただきありがとうございます。お三方は御社の新規事業プログラム「B-SWITCH」に応募されて、起案者として活動されてきたわけですが、まずはご応募のきっかけを教えてくださいますか?

 

山田さま:

日々、歯科医の先生方からさまざまな要望を伺う中で、「こうしたニーズを何か形にできないだろうか」と考えるようになりました。改めて周囲を見渡してみると、海外との仕組みがまだ十分に整っていないと感じていました。モリタは様々なノウハウも持っているのに、それを活かしきれていないのではという思いもあって、応募を決めました。正直、「どうせダメだろう」という気持ちもありましたし、ここまで本格的な取り組みになるとは思っていませんでした。まさか自分のアイデアがこんなにも多くの人に取り上げてもらえて、形になっていくとは…と驚いています。でも、だからこそ、あの時手を挙げてよかったと思っています。「先生方の声を何かの形として残せたら」という思いが、今回の挑戦のきっかけでした。

 

江川さま:
子育てをしながら働く中で、「家庭を大事にしたい」「仕事を全力で頑張りすぎてはいけないのでは」という気持ちがずっとありました。でも、そろそろ何かに挑戦してみたい、という思いが芽生えていたタイミングで、ちょうどB-SWITCHの募集を見つけました。モリタの事務局メンバーとも以前から面識があり、「エントリーしてみない?」と声をかけてもらったことも後押しになり、軽い気持ちで手を挙げたのがきっかけです。また、普段は事務職なので、社外の人と会ったり、新しい刺激をもらえる機会にもなるかもしれないと思ったのも、参加を決めた理由の一つです。

 

石塚さま:
B-SWITCHの第1期・第2期の存在は以前から知っていて、その頃からずっと興味はありました。僕の場合は、業務の延長線というより、“趣味起点”でして。ずっと野球をやってきたので、何か野球に関われることができたらという思いがずっとあったんです。実は、プロ野球の一軍でトレーナーをしている友人がいて、定期的に話を聞く中で、スポーツ業界のリアルや課題に触れる機会もあって。「自分にも何か貢献できることがあるかもしれない」と感じたのが、このアイデアの着想のきっかけでした。

 

新規事業に取り組む中での葛藤と難しさ

 

unlock(熊田):
新規事業を企画するといったご経験はこれまでにありましたか?

 

江川さま、山田さま、石塚さま:
このレベルの大きな企画は初めてです。

 

unlock(熊田):
そうなんですね。実際に0からアイデアを考えて形にしていく過程で直面した難しさはどんなところにありましたか?

 

石塚さま:
やはり医療の現場に関わる先生方は、エビデンス(根拠)がないと動きにくいところがあると思うんです。だからこそ、自分の中にあった「この方向性でいけるんじゃないか」という仮説を、どう証明していくかがとても難しかったですね。アイデアを商品として形にしていくには、その裏付けとなる情報をしっかり集めていかないといけない。その情報収集の大変さと、エビデンスを揃えるプロセスの難しさが、いちばん苦労したところだと思います。

 

山田さま:
正直、最初は不安しかありませんでした。「やってみようかな、でもどうしようかな」と迷い続けていて、自分の中でもなかなか決断しきれない状態でした。それに、自分ひとりで考えていると、どうしても自分の知っている範囲のことの中でしか選択肢が生まれなくて、行き詰まってしまうことが多くて…。そんな中で、unlockさんが入ってくださって、壁打ちをしてもらえたり、相談に乗ってもらえたりする中で、少しずつ歯車が回り始めた実感がありました。アイデアを“1人で抱えている”という状態のときは、思考的にも感情的にもずっと行き詰まっていて、何もかもが難しく感じていたと思います。そこが一番大きな壁でした。

 

江川さま:
いざリサーチを始めてみると信頼できる情報がなかなか見つからず、「これは本当に正しいのか?」と判断に迷う場面が多くありました。リサーチは得意だと思っていた分、特に苦労しましたね。課題の掘り下げがなかなか進まず苦しかったです。また、最終的に落とし込んだビジネスモデルが、前例が少なく、自力では構想しきれなかった部分も多く、unlockさんのアドバイスにかなり助けられました。特に感じたのは、自分の中にある情報だけでは限界があるということ。外から情報を集めて、それをどう見極め、どう主張に結びつけるかが一番難しかったです。

 

セミナー/ワークショップ/メンタリングを通じて

 

unlock(熊田):
今回は、アイディエーションのセミナーやワークショップを通じてアイデアの出し方を学んでいただき、その後3名が選抜されて、個別にメンタリング(壁打ち)を実施させていただきました。
こうした一連のプロセスの中で、印象に残っていることを教えていただけますか?

 

山田さま:
unlockさんは、さまざまな業界や職種の方々と関わってこられていて、アイデアや企画の“引き出し”の多さに驚かされました。自分もある程度アイデアを持っているつもりでしたが、実際は歯科業界という枠の中で症例や術式など、限られた視点に満足していただけだったんだと気づかされました。やり方や企画の切り口、表現の仕方など、自分にはなかった発想にたくさん触れる中で、「モリタ」という会社の可能性をもっと広げていく必要があると感じました。
モリタは“百年企業”として外部から高く評価されている一方で、「これからの百年をどう創るか?」という問いに本気で向き合うタイミングが来ていると思います。今回のように異業種の視点や考え方に触れられたことは、まさにその殻を破るきっかけになったと感じています。
私たちはそれぞれ所属する部署が違い、たとえば企画室の畠山さんは企画の視点から、石塚さんや江川さんもそれぞれ異なる立場から業界を見ていると思います。私自身もこれまでは「いま担当している商材をどうお届けするか」という目線で物事を判断してきました。でも今回の取り組みを通じて、「この会社が、この業界が、これからどう変化していくべきか」「どう乗り越えていくか」といった、もっと大きな視点で考えるようになりました。

 

江川さま:
メンタリングが始まってからは、本当にスムーズに進んだという実感があります。もし1人だったら、ちょっとしたことで立ち止まってしまっていたと思うんです。でもunlockさんと話すことで、それがすごく良いモチベーションになって、「自分だけでは超えられない壁を、後押ししてもらえた」と感じました。
毎回のメンタリングはリラックスした雰囲気の中でたくさんのアイデアを出し合うことができて、あっという間に時間が過ぎていきました。宿題があることで次に進む原動力にもなりました。
特に印象的だったのは、「自分がこうしたい」という想いだけでなく、「それは誰のためのものなのか?」「その人の感情に寄り添えているか?」といった視点まで深掘りしていただけたことです。そういった気づきは、自分の視野を広げてくれました。

 

石塚さま:
やっぱり、「本人の意思を尊重してもらえた」というのが大きかったと思います。最初は自分の考えが少し曖昧だったり、不安な部分もあったのですが、unlockさんからの問いかけや後押しがあったことで、「自分の意思を貫いていいんだ」と思えるようになりました。そのおかげで、最終的には自分の考えをしっかり形にすることができたので、私としてはすごく良い経験になったと感じています。

 

unlock ILPの効果

 

unlock(熊田):
今回は皆さんに宿題や調査に取り組んでいただく中で、我々unlock側で一部のリサーチや資料作成を担う「unlock ILP(※)」というサービスも利用いただきました。このご感想や印象に残った点などありましたら、ぜひお聞かせください。
※unlock ILP(Innovative Launch Partners):メンタリングだけでなく起案者に代わり調査や資料作成などをunlockがご提供するサービス

 

江川さま:
私はプレゼン資料を最後の方になって手をつける形だったのですが、「このページはどう表現したらいいのかわからない」という場面が何度もありました。そんな時に、unlockさんに市場調査やビジネスモデルの図解などをお願いできて、本当に助かりました。特に、ビジネスモデルの構造などは、自分では到底表現できなかったところを、美しくまとめていただき、すべてのリソースをありがたく使わせていただきました。

 

山田さま:
業界の大物の方へのインタビューや、信頼性の高い情報収集など、自分たちだけでは到底できないことを次々と形にしていただきました。資料もとても見やすく、重要ポイントはもちろん、「おまけ」情報からも多くの気づきを得ることができ、本当に完成度の高い内容でした。
実はプリントアウトして手元にずっと置いていつも見返していたほどで、プレゼン資料も、構成やビジュアルのセンスが抜群で本当に助かりました。

 

石塚さま:
「さすがプロだな」と感じましたし、的確な方向性の提案や構成力にとても助けられました。実はアイデアの方向性が定まらず、資料の完成がギリギリで、発表1週間前まで本当にドキドキでしたが、unlockさんにサポートいただき、何とか形にすることができました。特に、企画書づくりが得意ではない人にとっても、unlockさんがビジネスモデルを図解してくれたり、資料をまとめてくれることで、「あ、こういうことだったのか」と理解が進み、次の一歩が踏み出せる実感がありました。

 

心に残った瞬間

 

unlock(熊田):
その他にも、特に印象的なことがありましたら教えてください。

 

山田さま:
最終発表の当日、役員の方から2つ質問をいただいたのですが、1つは自分で答えて、もう1つは津島さんがスッとフォローしてくださって…まさに“賢者の一手”のように場が整い、安心感に包まれた瞬間でした。そして、最後のメンタリングで小野さん(unlock)から「頑張ってくださいね」と送り出された一言が、胸に深く残っています。
「(プレゼン時間は)必ず10分以内に収めて」と言われていた中で、伝えたい想いをどうまとめるか、本当に難しかったのですが、最後に「山田さんなら大丈夫」と背中を押していただいたことで、自分の言葉でしっかり届けようという覚悟が持てました。あの最後のメンタリングは、今でも忘れられない大切な時間です。

 

石塚さま:
途中で行き詰まり、「このままではだめかも」と軌道修正を考えた時期もありました。そんな中、津島さんから「少しアナログな方向でも、自分の着想を信じて、こういった切り口で掘り下げてみては?」と助言をいただいたことで、道筋が見えてきました。
熊田さんには構想が未完成の段階から何度も真剣に向き合っていただき、まるでピッチャーとキャッチャーのように伴走してもらったことがとても心強かったです。方向性がはっきり見えたのは、本当に最後から2回目のメンタリングの時です。あの瞬間、「あっ、これでいける」と思えたことで、あとは必要な情報を集め、資料に落とし込むだけだと腹が決まりました。不安もありましたが、2週間で一気に構想をまとめ切れたのはunlockさんのおかげです。新規事業の大変さと楽しさ、その両方を実感しました。

 

江川さま:
初回のメンタリングで津島さんからある事例を紹介いただき、Webサイトを一緒に見ながら話を聞く中で、「あ、これだ!」と一気にイメージが湧きました。そこから自分の構想もスムーズに進み始めた感覚があって、本当にありがたかったです。さらに、その場で具体的なアドバイスをいただき、一気に視界が開けました。最初に明確なヒントがあったことで、その後も大きく迷わずに進めたと思います。

 

今後の想い

 

unlock(熊田):
今回の「新規事業の企画づくり」は、皆さんにとって初めての経験だったかと思います。この経験を通じて得た学びや、今後どのように仕事に活かしていきたいか、あるいはこれから挑戦してみたいことなど、未来に向けたメッセージを一言ずついただけますでしょうか?

 

石塚さま:
今回の企画では、あるテーマに歯科業界として初めて本格的に向き合い、大きな可能性を感じました。社内でも「最終発表の動画を見たよ」「これ本当に欲しい!」といった声をもらい、実際に資料を見た方からも大きな反響がありました。小さな一歩からでもいいので、この領域の取り組みを、今後なんとか商品化につなげていきたいと思っています。
また今回の経験を通して、どんな人でも「こういうことを形にしたい」という思いさえあれば、事業化のきっかけは作れるのだと感じました。これからB-SWITCHに参加する方にも、ぜひその想いを持ち続けてほしいと思います。

 

山田さま:
今後は、今回掲げた新規事業をなんとか形にして実現させていきたいと思っています。世界が舞台になっている今、自分の業務の中でも視野を広げ、より大きな価値を生み出せるよう努めていきたいです。
私は育児中の女性社員として、いつアクセルを踏むかをずっと迷っていましたが、「今やらなければ後悔する」と海外研修にも自ら応募し、学ぶ機会も得ることができました。家族にも「今がチャンスなんだ」と話し、理解と応援をもらって挑戦できたことは、かけがえのない経験です。だからこそ、これからB-SWITCHに挑戦する方々には、性別や立場にとらわれず、やりたいと思ったタイミングで迷わず動いてほしいです。「いつか」ではなく「今」やることが、その人の未来を変えるはずだと思います。私自身も、これからも前向きにチャレンジを続けていきたいです。

 

江川さま:
これまでだったらきっと手を挙げずにスルーしていたような場面で、今回は思い切って挑戦でき、さらに3人に選んでいただけたことは本当に光栄でした。これからも、やりたいことがあればまず「諦めずに手を挙げる」ことを続けていきたいと思います。

 

unlock(津島):
ご一緒できた3か月間、私たちもたくさんの刺激と学びをいただきました。挑戦してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

 

〈写真左から〉
後列 熊田、津島(unlock)、株式会社モリタ 石塚さま、畠山さま
前列 小野(unlock)、株式会社モリタ 山田さま、江川さま、藤本さま

 

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撮影日:2025年7月2日
撮影:市来 朋久