新規事業メンタリングとは?メンターの役割と失敗しない進め方を徹底解説

「新規事業メンタリングについて調べているのに、出てくる記事の多くは『メンタリングとは何か』という一般論や、外部メンターの選び方ばかりだった」という方も多いのではないでしょうか。

しかし、経営企画室や新規事業開発室でメンターという役割を任された方が本当に知りたいのは、「自分は何を意識してメンタリングを進めればいいのか」という実践的な進め方のはずです。

本記事では、新規事業メンタリングの基本を押さえた上で、メンターが陥りがちな失敗、ティーチングとコーチングの正しい比重、そして「事業を良くして審査を通す」ことと「起案者を教育する」ことを両立させる具体的な進め方まで、メンターの視点に立って解説します。

新規事業メンタリングと聞くと、「経験者が新規事業担当者にアドバイスをすること」という漠然としたイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。しかし、大企業の経営企画室や新規事業開発室でメンターを担う立場からすると、実際に問われるのは「アドバイスの仕方」以前に、「自分がメンタリングを通じて何を成し遂げるべきか」という設計そのものです。まずはメンタリングの輪郭を、メンターの視点から整理していきます。

コンサルティング、ティーチング、コーチングとの違い 

新規事業メンタリングとは、対話を通じて起案者自身に考えさせ、事業案のブラッシュアップと意思決定の質を高めていく伴走型の支援です。

似た言葉に「コンサルティング」「ティーチング」「コーチング」があります。

ただし、この3つはメンタリングと同じ階層に並ぶものではありません。

3つはいずれも支援の手法であり、メンタリングは手法を選んで使う側の役割です。

コンサルティングは、外部の専門家がアドバイスを行ったり、一定期間、クライアントに代わって調査から分析等を担う手法です。

スピードと専門性を得られる一方、やり方によっては起案者自身の思考力は育ちにくいという特性があります。

外部コンサルを使う意義や注意点については、以下記事でも詳しく解説しています。

外部の新規事業コンサルティング会社を起用する意義は?依頼時の注意点は?

新規事業を推進する際は、さまざまな困難を伴います。そのため、外部の新規事業コンサルティング会社を起用する企業も少なくありません。本コラムでは、新規事業コンサルティング会社の役割メリット、依頼する際の注意点について解説しま […]

ティーチングは、知識やノウハウを教える手法です。

効率よく知識は伝わりますが、教えられた通りにしか動けない起案者を生み出しやすいという弱点があります。

コーチングは、「相手の中に答えがある」という前提のもと、問いを投げかけて本人に考えさせる手法です。起案者の自発性は引き出せますが、正解のない領域では問いを重ねるだけで事業の壁を越えられるとは限りません。

メンタリングは、この3つのどれか一つを選ぶことでも、3つを平均した折衷案でもありません。起案者に代わって作業を引き受けるコンサルティングは、メンターの手札から外れます。残るティーチングとコーチングを、フェーズと相手の状態に応じてどう配分するかを決めるところが、メンターの仕事です。

なぜ大企業の新規事業にメンターが必要なのか

大企業の新規事業担当者を対象にした調査では、「担い手となる人材の確保」(約38.9%)と「新規事業に必要な知識・ノウハウ不足」(約38.6%)が課題のトップに挙げられています。新規事業の成功確率自体も高くないというデータがあり(以下記事で詳しく解説)、経験のない担当者が手探りで進めれば、途中で行き詰まるのは当然とも言えます。

「新規事業の成功確率は5%」は本当か? -データで読み解く成功確率-

「新規事業の成功確率は5%」 このような新規事業の低い成功確率に関する話を聞いたことがある方は多いと思います。 ユニクロの柳井正さんも「一勝九敗」という著書を出しており、その厳しい成功確率を語っています。 確かに新規事業 […]

さらに大企業特有の事情として、新規事業は多くの場合「社内ビジネスコンテスト」や新規事業提案制度といった仕組みの中で進みます。起案者は複数のステージゲートを突破しながら、経営会議や役員会での審査を経て、初めて事業化にたどり着きます。メンターは、この仕組みの中で起案者に伴走し、事業を前に進める役割を担う存在です。起案者に求められる資質については以下記事でも整理していますので、あわせてご確認ください。

新規事業に向いている人材とは?求められる資質や特徴を交えて解説

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メンタリングの本当のゴールは「事業を良くして審査を通すこと」と「起案者の教育」

ここが、メンターとして最初に押さえておくべき最も重要な前提です。新規事業メンタリングのゴールは、「良い壁打ちができること」でも「起案者との関係が良好であること」でもありません。一つは、事業案をブラッシュアップして社内審査を通過させること。もう一つは、起案者を教育すること。本記事では前者を「審査通過」、後者を「起案者の教育」と呼びます。この2つの成果に責任を持つことが、メンターの役割です。

この前提を見誤ると、メンタリングは単なる雑談や自己満足的な対話に終わってしまいます。起案者が「話を聞いてもらえてよかった」と感じても、事業案の中身が磨かれず審査で落ちてしまえば審査通過が果たせておらず、逆に事業案は通っても起案者が「なぜ通ったのか」を自分の言葉で語れないままであれば起案者の教育が果たせていない、ということになります。

厄介なのは、この2つのゴールが常に両立するとは限らないという点です。事業を良くして審査を確実に通そうとするあまり、メンターが答えを教え込みすぎてしまえば、審査通過は満たされても起案者の教育 が損なわれます。逆に、起案者の自発性を尊重しすぎて教えることを控えれば、②には近づいても審査通過が遠のいてしまう。この2つのゴールを同時に成立させようとするところに、新規事業メンターならではの難しさがあります。次の章では、このジレンマの正体を具体的に見ていきます。

新規事業には、唯一の正解がありません。だからこそ、突破していく難しさがあり、同時に醍醐味もあります。前章で述べた通り、新規事業メンタリングには「事業案をブラッシュアップして審査を通す」ことに加えて「起案者を教育する」という、もう一つのゴールがあります。

この2つのゴールを同時に成立させようとするときに立ちはだかるのが、ティーチングとコーチング、どちらに比重を置くべきかというジレンマです。

ティーチングに偏りすぎるとどうなるか

メンターが自身の経験や知識をもとに、答えをそのまま教えてしまうことは簡単です。しかし、すべてをティーチングで済ませてしまうと、起案者は自分で考えることをやめてしまい、学びが止まります。

事業計画そのものは一見立派に仕上がりますが、審査の場で「なぜこの数字なのか」「なぜこの顧客セグメントを選んだのか」と問われた瞬間に、起案者自身の言葉で語れなくなる。これは、事業のオーナーシップがいつの間にか起案者からメンターへと移ってしまっている状態です。過度なティーチングは、目先の資料の完成度と引き換えに、起案者の成長機会を奪ってしまいます。

コーチングに偏りすぎるとどうなるか

コーチングは「相手の中に答えがある」という前提のもと、問いを投げかけて考えさせる手法です。一見、起案者の自発性を尊重した理想的なアプローチに見えますが、新規事業のように正解のない不確実な領域では、見過ごせない落とし穴があります。

それは、問いを投げかけるだけのコーチングは、メンター自身がその事業や業界について十分理解していなくても、表面上は「それっぽい」対話が成立してしまうという、あまり語られない不都合な事実です。起案者からすれば、良い質問はもらえるものの、肝心の答えは何も得られない状態が続き、事業の壁を突破できないまま堂々巡りに陥ってしまいます。

実際に、歯科医療機器の販売大手の株式会社モリタが運営する社内起業プログラム「B-SWITCH」の第2期では、コーチング型の支援スタイルが採られていました。しかし、起案者が「どう進めたらよいか教えてほしい」と求めても、「あなたはどう思いますか?」という問いかけが繰り返されるばかりで、事業アイデアの具体性や検証精度が上がらず、起案者たちは方向性を見失ってしまったといいます

詳しくは以下記事で紹介をしています。

「成果を出す」伴走者を求めて【事務局編】

歯科医療分野で長年業界を牽引してきた株式会社モリタ。同社では、従業員から新規事業の種を募る社内起業プログラム「B-SWITCH」を展開してきました。 2024年に始動した第3期では、社内からの声を受け、「育成」から「事業 […]

全員未経験者で挑む アセットを活かした新規事業【起案者編】

歯科医療業界におけるトップクラスの製品とサービスを提供し続ける株式会社モリタ。同社では、従業員のアイデアを起点にした社内起業制度「B-SWITCH」を2022年よりスタートさせ、挑戦の文化醸成と新たな事業創出に取り組んで […]

理想的なスタンスは「意見を持って伝える」こと

問いを投げかけるだけでなく、不確実な中でも「自分はこう思う」という意見や主張をしっかり伝えること。そして、その時々の状況を見ながら、適切にティーチングを織り交ぜていくこと。これが、新規事業メンタリングにおける理想的なスタンスです。

株式会社モリタは、第3期にあたって「答えを提示でき、実務レベルで手を動かして伴走してくれる支援者が必要だ」という認識に至り、抽象論と具体論を行き来しながら、必要な場面では手と頭を同時に動かすメンターへと支援スタイルを転換しました。その結果、起案者は視点の拡張と実務の壁の突破を同時に経験し、事務局側も「成果を出す」ための運営設計を具体化できたといいます。ティーチングとコーチングは対立する二択ではなく、フェーズと相手の状態に応じて配分を変えていく比重の問題である、と捉えることが出発点になります。

前章のジレンマは、実際のメンタリングの現場では3つの典型的な失敗パターンとして現れます。ここでは、自分自身がこうなっていないかを点検する意味も込めて、失敗するメンターの特徴を整理します。

何にでも正論で片付ける「コンサル型」

論理的で、説明もわかりやすい。資料上ではもっともらしい戦略プランを提示できる。しかし、現場の温度感や泥臭い試行錯誤を経ていないため、実装段階になると自社の型にはめ込むことしかできず、机上の空論で終わってしまう。これが「コンサル型」メンターの典型です。

起案者からすれば、「正論はわかるが、うちの会社でどう動けばいいのかが分からない」という不満が募ります。自分がこの1カ月、起案者に対して”すぐに答えられる一般論”だけを返していないか、振り返ってみることをおすすめします。

問いかけるだけで答えを出さない「コーチ型」

新規事業の経験はあっても、答えを教えず問いかけを繰り返すことに終始してしまうタイプです。「相手の中に答えがある」という前提を過度に追求しすぎると、起案者から「どうすれば良いか教えてほしい」と求められても、「あなたはどう思いますか?」と質問で返すばかりになり、議論が堂々巡りになります。

新規事業の現場ではスピード感が求められる局面も多く、適切な指針や具体的な解決策を示さないままでは、起案者はフラストレーションを感じて前に進めなくなってしまいます。

審査員の視点から抜け出せない「評価者型」

大企業の経営企画室や新規事業開発室の担当者がメンターを兼務する場合に特有の失敗パターンです。本来、メンターと審査員は別の役割ですが、社内では同じ人物が両方を担うことが少なくありません。

その結果、メンタリングの場であっても無意識のうちに「これは審査に通るか、通らないか」というジャッジの目線で起案者に接してしまい、起案者は本音の壁打ちができず、防御的な説明に終始するようになります。メンターの役目は、審査を「通すために」事業案を一緒に磨くことであり、その場で審査すること自体ではありません。この線引きを自分の中で意識できているかどうかが、良いメンターとそうでないメンターを分けます。メンタリングの場で、起案者の話に対して反射的に「良い・悪い」とジャッジしていないか、これも自己点検のポイントです。

こうして整理すると、3つの失敗パターンがそれぞれ2つのゴールのどちらを損なうかが見えてきます。「コンサル型」は答えを与えすぎることで起案者の教育を損ない、「コーチ型」は問いかけに終始することで事業を良くして審査を通すことを損ないます。「評価者型」は起案者との信頼関係そのものを壊してしまうため、2つのゴールを同時に損ないかねない、最も避けたい状態と言えます。

メンタリングの工程は、審査通過に向けた作業として並べられることが多いです。 しかし同じ工程でも、進め方を変えれば起案者の教育まで担わせることができます。 逆に、どう進めても教育にはつながらない工程もあります。 以下では、各工程が2つのゴールのどちらを担うのかを分けながら、順に見ていきます。

攻略すべき「ゲームのルール」を理解する

社内ビジネスコンテストや新規事業提案制度には、必ず審査期間やステージゲートといった「ゲームのルール」が存在します。メンターがまず取り組むべきは、このルールの中身を正確に理解することです。

1つ目は、ゴールとなる評価基準・クライテリアを正確に把握することです。市場規模や収益性といった定量面だけでなく、経営戦略との整合性や実現可能性といった定性面まで含めて、何が評価軸になっているのかを言語化しておきます。評価基準の設計そのものに関心がある方は、以下記事もあわせてご覧ください。

新規事業の評価基準とは?|成功率を高める設計方法と社内ビジネスコンテストで使える実践フレーム

新規事業の立ち上げでは、アイデアを出すことや市場を調べることに目が向きがちです。もちろんそれも大事なプロセスなのですが、そういった事業案の考案や検討と同じぐらい成否を分けるのに重要なのは、出てきたアイデアや事業案を「どう […]

2つ目は、自社において過去にどのような事業案が通過し、逆にどのようなものが落ちやすかったのかを分析することです。これは属人的な「空気」として片付けるのではなく、可能な限り事務局やアーカイブにあたり、再現性のあるパターンとして把握することが重要です。社内ビジネスコンテストの運営設計そのものに関わる立場の方は、以下記事も参考になります。

新規事業ビジネスコンテスト運営で失敗しないために~はじめての事務局向けマニュアル~

新規事業ビジネスコンテストは、社員の創造力を引き出し、企業の成長を促進する素晴らしい手段です。しかし、初めて運営する際には多くの課題が伴います。ここでは、成功するためのステップバイステップのガイドを提供します。 新規事業 […]

3つ目は、把握したルールを起案者と共有し、目線を合わせてからメンタリングを開始することです。

メンター自身がルールを理解しないまま「良いアイデアを出そう」とだけ伴走しても、起案者は土俵の違う努力をしてしまいます。ルールを先に共有しておくことが、遠回りに見えて実は一番の近道です。共有するかどうかは、起案者の教育にも直結します。メンターがルールを握ったまま指示だけを出せば、起案者は今回の審査は通せても、次の審査を自力で読めるようになりません。

なお、事業の継続や撤退を判断するステージゲートが後工程に控えている場合は、以下記事で扱うような基準もあらかじめ視野に入れておくと、メンタリングの視座がもう一段上がります。

新規事業の撤退基準とは?|41社調査と18社事例でわかる決め方・判断基準・撤退ラインの設計法

新規事業の撤退基準とは、事業を続けるか撤退するかを判断するために、あらかじめ定めておく条件や指標のことです。 ただし、撤退基準は単なる管理ツールではありません。どのような基準を設けるか、あるいは設けないかという判断そのも […]

壁打ちとフィードバックの型

ゲームのルールを理解したら、次は定例メンタリングの場で使える具体的な型に落とし込みます。ここでは3つのアプローチを紹介します。

1つ目は、選択肢提示型の問いです。単に「どう思いますか」と聞くのではなく、「A・B・Cのどの案が良いと思いますか」というように複数の選択肢を用意した上で、本人の考えを問います。これにより起案者は思考の材料を持った状態で自分の意見を組み立てられます。これは前章で触れた「評価者型」に陥らないための工夫でもあります。ジャッジするのではなく、材料を渡して考えさせる、というスタンスです。

2つ目は、情報提供型です。競合の動き、社内の意思決定の癖、過去の類似案の顛末など、起案者に足りていない視点を、メンター自身の経験や知見から提示します。ここはティーチングを適切に織り交ぜるべき場面であり、ここを惜しむとコーチングに偏りすぎる失敗につながります。

3つ目は、根拠の深掘り型です。起案者が複数の選択肢の中から一つを選んだら、「なぜその優先順位にしたのか」を深掘りし、時にはメンター自身の意見もぶつけて議論します。ここで大事なのは単なる質問攻めにしないことです。メンター自身も「自分はこう思う」という立場を持って、意見を戦わせることが求められます。

3つの型のうち、情報提供型は事業の中身を前に進めるための手法です。

選択肢提示型と根拠の深掘り型は、起案者に判断とその根拠を持たせるための手法であり、起案者の教育を担っています。 どちらに寄っているかを意識せずに壁打ちを重ねると、情報提供型だけが増えていきます。

社内審査を見据えた仕上げの支援

事業案の中身がどれだけ磨かれていても、審査の場で正しく伝わらなければ意味がありません。起案者と評価者の間には認識のズレが生まれやすく、下記の記事でも指摘されている通り、多くの起案者が一度は審査に落ちた経験を持っており、その背景には「具体性が不足している」といった曖昧なフィードバックの裏にある、評価側の”傾向”を理解できていないという実情があります。

メンターは、ここまでの工程で把握した評価基準・クライテリアと、壁打ちを通じて磨いてきた事業の中身を、審査という一発勝負の場でどう伝えるかまで含めて支援します。プレゼン資料の構成、想定質問への準備、時間配分のシミュレーションなど、仕上げの工程まで付き合うことも、メンターの重要な仕事です。

仕上げの局面は、メンターが手を出しすぎる誘惑が最も強いところです。資料の文言をメンターが書き、想定質問への回答もメンターが用意すれば、審査通過の確度は上がります。 ただし審査の場で答えるのは起案者です。想定質問は、答えを渡すのではなく、その場で起案者に答えさせて詰まったところを埋める形にします。

振り返りの場と言語化 

教育の成果は、メンターが教えた量ではなく、起案者が自分の言葉で語れる範囲で測れます。

だからこそ、語り直させる時間を工程として確保します。

1つ目は、毎回のメンタリングの終わりです。今日決まったことと次にやることを、起案者に言葉にしてもらいます。メンターが議事をまとめて渡す方が早く、審査通過には近づきます。しかし起案者が言えなかった部分は、その回で伝わっていない部分です。この確認を省くと、伝わっていないことに気づく機会そのものがなくなります。

2つ目は、審査の後です。落ちたときの振り返りは自然に行われますが、必要なのは通ったときの振り返りです。通った理由を語れないまま次のステージに進んだ起案者は、次の審査で同じ判断ができません。審査通過という結果は出ているため、この状態は放っておくと誰も問題として扱いません。ここが、審査通過の達成が起案者の教育を保証しない唯一の工程です。 事業案の質は工程を回せば上がりますが、なぜ上がったのかの言語化は、意図して時間を取らなければ起きません。起案者が自分の言葉で語れているかどうかは、次章のチェックポイントで見分けられます。

メンタリングは、その場の対話が盛り上がったかどうかでは評価できません。ここでは、起案者と事業案、それぞれの変化から進捗を見極めるポイントを整理します。

起案者の変化で見るサイン

良いサインは、質問に対して自分の言葉で意見を述べるようになる、メンターに聞く前に自分なりの仮説を用意してくるようになる、壁打ちの場でメンターに反論してくるようになる、といった変化です。反論が出てくるのは、自分の頭で考えている証拠でもあります。

逆に注意すべきサインは、メンターの顔色をうかがうようになる、「どうすればいいですか」が口癖になる、資料の言い回しがメンターの口調に似てくる、といった変化です。これらは、起案者が自分の言葉で事業を語れなくなっているサインといえます。

事業案の変化で見るサイン

良いサインは、議論を重ねるたびに仮説の解像度が上がっていくこと、数字や顧客の声に基づいて内容が修正されていくことです。

逆に注意すべきサインは、議論した内容がその場では盛り上がるものの、次回のメンタリングまでに何も進んでいないこと、資料の見た目だけは良くなっていくのに、中身の検証が進んでいないことです。こうしたサインが続く場合は、ここまで紹介してきたティーチングとコーチングの比重や、ゲームのルールの共有が十分にできているか、一度見直してみることをおすすめします。

ここまで、メンター自身がどう振る舞うべきかを解説してきました。最後に、そもそもメンタリングを自社の人材だけで担うべきか、外部の力を借りるべきか、という判断について触れておきます。

まずは自社で取り組んでみる

最初から外部に頼るのではなく、まずは自社のメンバーでメンタリングに取り組んでみることには価値があります。実際にやってみることで、自社にどのようなノウハウが足りていないのか、逆にどこまでは自分たちで対応できるのかが、具体的に見えてきます。

外部の伴走支援を活用する判断基準

一方で、「そろそろ確実に結果を出さなければならない」といった明確な目的が生まれたタイミングは、外部のメンタリング活用を検討する良い機会です。株式会社モリタの事例でも、1・2期を経て事業化への期待値が上がったタイミングで、外部の伴走支援としてunlockを起用しています。詳しくは以下記事をご覧ください。

「成果を出す」伴走者を求めて【事務局編】

歯科医療分野で長年業界を牽引してきた株式会社モリタ。同社では、従業員から新規事業の種を募る社内起業プログラム「B-SWITCH」を展開してきました。 2024年に始動した第3期では、社内からの声を受け、「育成」から「事業 […]

自社の体制やフェーズに応じて、伴走支援や顧問サービスのような外部の力を選択肢に加えることも、メンタリングの質を維持するうえで有効な判断です。これまでの支援実績は支援実績一覧からご覧いただけます。

新規事業の伴走支援

新規事業の伴走支援なら株式会社unlock。助言だけでなく企画・資料化・社内突破・事業化まで実務を担う伴走型支援。支援実績150社以上、アイデア採用率88%、経営会議通過率75%以上。

新規事業メンタリングの本当のゴールは、事業案をブラッシュアップして社内審査を通過させることと、起案者を教育すること、この2つに責任を持つことです。

そのために、メンターはティーチングとコーチングを対立させるのではなく、フェーズと相手の状態に応じて比重を調整していく必要があります。「コンサル型」「コーチ型」「評価者型」といった失敗パターンに自分が陥っていないかを点検しながら、社内の「ゲームのルール」を理解した上で壁打ちとフィードバックを重ね、審査という一発勝負の場までしっかり仕上げていく。これが、新規事業メンタリングを実践するメンターに求められる進め方です。

自社だけで担うか、外部の力を借りるかは、まず自分たちでやってみた上で、明確な目的が生まれたタイミングで判断すれば十分です。メンタリングのやり方に迷ったときは、ぜひunlockの伴走支援にもご相談ください。

この記事を書いた人
株式会社unlock
事業プロデューサー 熊田竜次

得意領域
営業 & コンサルティング、Webマーケティング

経験業種
BtoC:人材、製造業、不動産、エンタメ、インフラ
BtoB:人材、AI開発、ソフトウェア(SaaS)、金融、インフラ

経歴
早稲田大学社会科学部 卒業。株式会社マイナビ、株式会社Speeeを経て現職。一貫して営業・マーケティングを始めとしたクライアントワークに従事。unlockでは、顧客が持つアセットと市場ニーズをつなぐ役割を、ビジネスサイドから支援。
支援プロジェクト数 50社以上 (2026年7月現在)。