既存事業と新規事業のカニバリゼーションはどう調整すべきか?

Q. 既存事業と新規事業のカニバリゼーションはどう調整すべきか?

A. 既存事業とのカニバリゼーションは無理に社内で調整するのではなく、あえて市場で競わせて顧客の選択によって方向性を決めるという考え方もある。

近年のリクルートでは、インディードが現在主力になっています。

しかし、それ以前にもリクナビネクストやタウンワークといった、インディードに掲載されている求人とカニバリを起こす求人広告ビジネスは存在していました。

その中で、リクルートは社内的に事業の住み分けをきめるのではなく、あえて市場で両者をぶつからせ、市場の選択によって方向性を決定づけました。

実際に、それぞれの立ち位置やポジショニングは存在していましたが、カニバリゼーションについて丁寧に調整した形跡は見られません。

さらに、リクルートは以前から以下のような複数のメディアを展開しており、それぞれ少なからずカニバリゼーションを起こしていました。

  1. アルバイト領域:フロム・エー、タウンワーク
  2. 正社員領域:B-ing、リクナビNEXT、とらばーゆ、はたらいく

インディードとリクナビネクストの例のように、上記のメディアでは社内でカニバリゼーションを丁寧に解決しようとする動きは見られず、むしろ敢えて競わせていたようにすら思えるほどでした。

それでも、各プロダクトの魅力の総和で他者を圧倒していたことから、このような戦略も有効であることがわかります。

既存事業を踏まえた新規事業戦略を考えたい方は、こちらのコラムをご覧ください。

既存事業の強みを活かした新規事業を考えるにはどうすればいい?

Q. 既存事業の強みを活かした新規事業を考えるにはどうすればいい? A. 既存事業のアセットを広く捉えること。 既存事業の強みを活かした新規事業では、技術だけでなく、顧客・人材・拠点・ブランド・取引先などを含めて整理し、 […]

解説

新規事業を立ち上げる際、「既存事業の売上を奪ってしまうのではないか」というカニバリゼーションへの恐怖を抱くことは必然的なことです。

一般的に、企業はカニバリゼーションによる摩擦を避けるために「既存事業はターゲットA、新規事業はターゲットB」と社内で綺麗に棲み分けを決めようとします。

しかし、この「内向きの調整」には大きな罠があります。

そのひとつが社内論理でターゲットを細かく分割している間に、生じた隙間を競合他社に狙われ、結果的に市場ごと奪われてしまうことです。

あえて市場で両者をぶつからせるリクルートの戦略は、いわゆる「戦略的カニバリゼーション」と呼ばれるものです。

戦略的カニバリゼーションは、「自社の既存事業を脅かすような革新的なサービス(例えばインディード)があるなら、他社にやられる前に自社でやってしまえ」という発想のことです。

戦略的カニバリゼーションでは、社内で綺麗に調整するのではなく、複数の弾を市場に放ち、どれが生き残るかを「顧客(市場)」に決めさせます。

一時的に自社内で顧客を奪い合うこともありますが、自社のプロダクト群で市場の選択肢を独占することで、結果的に「魅力の総和」で競合他社を排除し、グループ全体のシェアを最大化できます。

既存事業を新規事業で活かす方法などを始め、新規事業を実行/推進するノウハウが不足している方は、unlockの顧問サービスをご利用ください。

顧問サービス

定期的なミーティングで新規事業の壁打ち(ご相談相手)をします。 これまでの豊富な新規事業支援の経験をもとに、貴社の新規サービス/製品の早期立ち上げを支援します。

事例:トヨタ自動車

カニバリゼーションを戦略的に許容し、あえて社内競合を促す手法は、IT企業だけでなく歴史的な大企業も採用しています。

その代表例がトヨタ自動車の販売店(ディーラー)戦略です。

かつてトヨタは、「トヨタ店」や「トヨペット店」、「カローラ店」、「ネッツ店」という複数の販売チャネルを同じエリアにいくつも展開していました。

このような状況では、当然同じ地域の顧客を巡って販売店同士で激しいカニバリゼーションが起こります。

しかし、各販売店が必死に競争して営業活動することで、結果的に顧客は「トヨタの販売店のいずれか」で車を購入することになると考えたトヨタは、カニバリゼーションを解消するために、棲み分けを図ることはしませんでした。

結果的に、自社内でパイを奪い合うことで、日産やホンダといった「他社への顧客流出」を防ぎました。

このように、トヨタの施策は、トヨタ全体として見ればその地域のシェアを最大限に確保できるという合理的な戦略でした。

参照元:https://frontier-eyes.online/cannibalization/

まとめ

既存事業と新規事業のカニバリゼーションは、必ずしも社内で綺麗に調整する必要はありません。

過度に棲み分けを意識すると、かえって競合に市場を奪われるリスクもあります。

カニバリゼーションが発生したときは、あえて社内プロダクト同士を市場で競わせ、顧客の選択によって成長する事業を見極める戦略も有効です。

カニバリゼーションを過度に恐れず、市場の評価を軸に事業の方向性を判断しましょう。

この記事を書いた人
株式会社unlock 代表取締役社長 津島越朗

得意領域
テクノロジー(AI・ブロックチェーン・IoT等)をベースとした既存産業の革新・効率改善サービス(SaaS等含む)の新規事業
企画・開発・拡大(Growth Hack)、0→1(ゼロイチ)

経歴
2005年 株式会社リクルート入社(人材事業営業部)
2008年 同上(インターネットマーケティング局、マーケティング・新規事業企画)
2011年 株式会社ディー・エヌ・エー入社(サンフランシスコにて現地法人のマーケティング組織の立ち上げ)
2013年 株式会社DeNAライフサイエンス(東京大学医科学研究所と遺伝子検査MYCODEの立ち上げサービス&マーケティング責任者)
2014年 株式会社DeNAロケーションズ 代表取締役社長(海外のテクノロジーベンチャーとの合弁企業)
2016年 株式会社unlock設立