オープンイノベーションとは?新規事業での落とし穴と成功の条件を解説

オープンイノベーションが日本に広まって約20年。協業の発表は増え続けているのに、そこから生まれた事業を思い出せる人は多くない。本稿は、その理由をたどりながら、何が有効で落とし穴なのか、そして自主自律を保ったまま外部の力を使う方法を整理する。

新規事業の文脈で、オープンイノベーションという言葉を聞かない年はない。外部の知見を取り込めば、自社だけでは届かなかった速さと幅で事業をつくれる、という期待がある。

期待そのものは正しいが落とし穴もある。葉が広まる過程で「組むこと自体が目的」にすり替わり、本来の意味から離れた取り組みが量産されている点が見過ごされている。

本稿は二つの面からオープンイノベーションを解説していく。

前半は、オープンイノベーションが何を指し、なぜいま求められ、どんな効果と代償があるのかという基礎の整理。後半は、新規事業の実務に立った批評である。安直な協業がなぜ成果につながらないのかを腑分けし、それでも協業を武器にできる企業が共通して持っている条件を示す。

1.オープンイノベーションとは何か:定義と3つの類型

オープンイノベーションとは、自社の研究開発に閉じず、他社や大学、研究機関の技術や知見も使ってイノベーションを起こす取り組みを指す。経営学者のヘンリー・チェスブロウが2003年に提唱した概念で、知識を意図して外から取り込み、また自社の成果を外に出すことで、社内の開発を加速し、その果実を外部市場でも活かす考え方として整理された。この概念は、対になるクローズドイノベーションを踏まえると輪郭がはっきりする。クローズドイノベーションは、研究から開発、製造、販売までを自社だけで完結させる自前主義を指す。日本企業は1980年代まで、知的財産を自社に囲い込むこの手法で躍進した。状況が変わったのは1990年代以降である。技術が複雑になり、一社で製品のすべての要素をまかなうことが難しくなった。スマートフォンのように、無数の技術を寄せ集めて初めて成立する製品が当たり前になると、外部の技術を取り込む必要が一気に高まった。

日本では2010年に内閣府も定義を示している。社内外のイノベーション要素を最適に組み合わせ、新規技術開発に伴う不確実性を抑えながら開発を速め、同時に自社の未利用資源を外部に切り出して全体の効率を最大化する手法、という整理である。要素を組み合わせて不確実性を下げるという点に、提唱者の定義との一貫性がある。

両者の違いは、価値を生む工程の持ち方に表れる。クローズドイノベーションは、開発から生産、販売までを自社で抱える垂直統合に近い。資源は自社に限られ、費用をすべて自前で背負うため重くなりがちだが、知財は囲い込め、先に市場へ出すほど有利になる。これに対しオープンイノベーションは、中核以外を外部に委ねる水平分業に寄る。他社や大学、行政の資源を加えられる分だけ費用と時間を抑えやすく、知財は導入と供与の両面で動かす。ただし市場へ出す速さそのものより、誰がどう稼ぐのかというビジネスモデルを固めることが先に問われる。

図1 二つのイノベーションの構造

オープンイノベーションを実現する道筋は、知識が動く向きによって三つに分けられる。外から自社に技術や知見を取り込むインバウンド型、自社の技術やライセンスを外に開いてアイデアや収益を募るアウトバウンド型、そして両者を組み合わせて双方向に知識を行き来させる事業連携型である。新規事業でよく語られる大企業とスタートアップの協業は、多くがこの事業連携型に位置づけられる。

図2 知識が動く向きによる三類型

この三つは優劣ではなく、目的に応じた使い分けである。足りない技術を補いたいならインバウンド型、自社に眠る知財を収益に変えたいならアウトバウンド型、互いの強みを持ち寄って新しい価値をつくりたいなら事業連携型が向く。順序を間違えやすいのはここだ。型を先に決めて相手を探すのではなく、何を成し遂げたいかを先に定めれば、どの型が必要かは自然と決まる。型から入ると、手段が目的にすり替わる。

2.なぜ新規事業でオープンイノベーションが求められるのか

オープンイノベーションへの関心が高まる背景には、外部連携を促す圧力がいくつも重なっている。一つは、製品が収益を生む期間の短縮である。デジタル技術が広まり、顧客の求めるものが多様になり、似た製品がすぐに現れる。その結果として商品の市場価値が早く下がるコモディティ化が進み、一つの事業で稼げる期間が縮んだ。短い時間で次の柱を立てるには、必要な技術を一から育てるより、外から取り込むほうが速い局面が増える。

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もう一つは、新規事業を生み出す難易度の高さだ。日本はすでに超高齢社会に入り、人口の減少も続いている。このような国内市場の縮小を背景に各社新規事業に取り組んでいるが、新規事業は千三つといわれるほど失敗が多く成功が難しい。

それゆえ、自社だけでは難しいと考える企業が増加している。

技術そのものの複雑化も後押しになる。一つの製品が多数の技術の組み合わせで成り立つようになると、すべてを自社で揃えるのは現実的でなくなる。世界規模の競争のなかでは、外部の優れた技術やビジネスモデルに後れを取る危険が常にあり、自前で育てている間に競合が先に答えを出してしまう可能性もある。だからこそ、自社の強みを保ちながら、不足する部分を素早く外部から取り込む柔軟さが要る。

3.オープンイノベーションのメリットとデメリット(構造的な代償)

外部の力を取り込むと、開発にかかる時間と費用を抑えられる。足りない人材や技術を補えるため、自前で一から育てるより速く事業を組み立てられ、機会を逃しにくくなる。異なる分野の知見が混ざることで、自社だけでは出てこなかった発想が生まれやすくもなる。加えて、外部と接することで仕事の進め方や考え方を学び、その学びは取り組みが終わった後も自社に残る。協業の過程で、自社の何が他社に真似できない強みなのかが浮かび上がる効果もある。

こうした効果は、公的な調査にも表れている。2020年版の中小企業白書によれば、オープンイノベーションの取り組みによって新規の技術開発や、製品やサービスの事業化に成功したという回答に加えて、知識やノウハウの蓄積に効果があった、人材育成につながった、新たな顧客ニーズの発見につながった、と答えた企業の割合が高い。製品化そのものだけでなく、自社の競争力を高めたり、販路を広げる手がかりを得たりするところにも効果が及ぶ、という整理である。ただし注意して読みたいのは、ここで割合が高いのは多くが間接の効果だという点だ。知識の蓄積や人材育成や顧客理解は確かに価値があるが、それらが得られたことと、新規事業が一つ立ち上がったかどうかは、分けて見ておく必要がある。

ただし、これらの効果は自動では得られない。自社の構想に対して何が足りないかを正しく見極めて補ったときに、初めて速さや幅が変わる。目的と補完の対応が取れていないまま連携を増やすと、調整の手間ばかりがかさみ、かえって遅くなることもある。効果は条件付きのものだと考えておきたい。

効果は取り込む側だけのものでもない。本業と直接関係しない知財や技術を持っているなら、それを外部にライセンス供与して収益化する道もある。外部の知見を取り込む流れと、自社の遊休資源を外部で活用させる流れは、どちらもオープンイノベーションに含まれている。片方だけで考えると、もう一方の収益機会を見落とす。

一方で、効果の裏側には代償がある。重要なのは、その一部が運用のミスではなく、提携という形態そのものに内在している点だ。最も根が深いのは利益率である。成果を相手と分け合う前提があるため、自社だけで完結する事業より取り分が薄くなりやすい。情報漏えいのリスクも上がる。事業を進めるには自社の知財に触れる情報を相手に開く場面が出てくるからだ。さらに、外部に頼る範囲が広がるほど自社の研究開発に投じる資源は減り、開発力そのものが衰える危険がある。

図3 効果と代償の対照 / 株式会社unlock独自で作成

この表のうち、利益率の低下だけは性質が違う。情報漏えいや配分の摩擦は契約や運用で抑えられるが、按分による収益性の低下は、対等に組むという前提から論理的に導かれる帰結であって、努力で消えるものではない。新規事業がそもそも高い利益率を狙って立ち上げられることを思えば、この一点は後段の評価を左右する。利益率の問題には第4節で立ち返る。

4.オープンイノベーションで成功事例が見えない理由:形だけの協業が陥る2つの失敗パターン

オープンイノベーションという言葉が日本で語られ始めて、すでに20年以上になる。それだけの年月と、注ぎ込まれてきた人材や資金の量を思えば、事業として成立した成功例がいくつも積み上がっていてよいはずだ。ところが、本気で探しても見つけにくい。成果が出ているなら、当事者も仲介役も競って宣伝するだろう。その種の事例が不自然なほど見当たらないこと自体に、まず警鐘を鳴らしておきたい。もちろん、表に出ていないだけかもしれず、「成功」の線引きも一様ではない。決めつけは避けたい。

それでも、成功事例として紹介される取り組みの多くは、内容をたどると「提携した」「協業した」という事実の段階で止まっている。出資した、プログラムを開いた、拠点を立ち上げた、担当者を置いた。どれも着手の報告であって、事業が生まれ、利益が出たという報告ではない。発表は華やかでも、その先で何が立ち上がったのかは語られないままになる。ここに、形だけのオープンイノベーションが抱える二つの典型がある。

図4 形だけの協業に共通する二つの欠落

一つ目は乗っかり型である。大企業がスタートアップにわずかに出資し、互いのロゴを使えるようにして満足する。キャピタルゲインが狙いではなく、とりあえず出資して様子を見る。しかし出資にとどまるとプロダクトには関与できず、取り決めも薄いため、後になって揉める。なかには、最初から相手のビジネスモデルを抜き取る目的で提携の相談を持ちかけてくる担当者もいる。実際にスタートアップと大手の訴訟も複数起きている。新規事業をつくるという目的に照らせば、これが最も問題のある組み手だ。

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二つ目は場づくり頼み型である。何をやるかを決めないまま、まず人材交流やイベント、拠点づくりを進め、そこから何かが生まれるのを待つ。すべてが無駄だとは言わないが、何かが生まれた兆しを見ることは少ない。理由ははっきりしている。誰も結果責任を負っていないからだ。

この二つに共通するのは、解決策への関与の低さである。課題に対する解決策、つまりプロダクトに具体的に絡んでいない。看板と資金を出すだけの参加は、突き詰めれば相手への乗っかりであり、自社で新規事業を生み出せないことの逃げになる。そしてほぼすべての場合、これでは事業が生まれず、元の地点に戻る。

図5 対等な提携と利益率の按分

共通点の二つ目、利益率の低さは、提携という形態の宿命に近い。対等であればあるほど、成果は分け合うことになる。新規事業は本来、売上だけでなく高い利益率を取りにいくために立ち上げるものだ。既存事業が成熟して売上が頭打ちになる前後では、コモディティ化や競争の激化、顧客獲得コストの増加によって利益率が下がる。その低下に手を打つのが新規事業である。だとすれば、相手への依存度が高く収益性が構造的に低い提携は、新規事業の打ち手として上策ではない。

結局のところ、最も大きな損失は「何かをやっている感」に費やされる時間であり、その裏で失われている機会である

何もしない会社が多いなかで、まず動くこと自体には価値がある。だが他力本願の度合いが強すぎる取り組みは、進んでいるように見えて、貴重な時間と機会を静かに削っていく。動いている感覚が、動けていない事実を覆い隠してしまう。

5.オープンイノベーションの落とし穴:「すり寄れば事業が生まれる」という幻想

形だけの協業を支えているのは、一つの思い込みである。先進的なスタートアップや名のある大手と近づけば、何かが生まれるかもしれない、という期待だ。だが、相手のブランドに触れること自体は、事業を一つも生まない。きらびやかな相手と並ぶと、自分たちも前に進んでいるように錯覚する。錯覚は成果ではない。

問うべきは単純なことだ。ここ数年、華々しく発表された提携のうち、そこから生まれた事業をいくつ思い出せるだろうか。提携のニュースは記憶に残っても、その先のプロダクトはなかなか出てこない。これは記憶力の問題ではなく、多くの取り組みがプロダクトに絡んでいないことの裏返しである。

先進的な相手に近づけば何かができる、という発想は、ほとんどが幻想だと言ってよい。プロダクトに具体的に絡まなければ、相手が誰であっても意味は薄い。すり寄る先の輝きは、自社の事業の有無とは無関係なのだ。

それでもこの思い込みが根強いのは、説明のしやすさにある。著名な相手との提携という事実は社内外で語りやすく、体裁が整う。だが発表のしやすさを基準に相手を選ぶと、事業をつくるという本来の目的から、提携したという事実づくりへと、目的が静かにずれていく。

6.チェスブロウが示した本来のオープンイノベーション

では、提唱者は本来どう語っていたのか。チェスブロウは2003年の著書で、オープンイノベーションを、知識の意図的な流入と流出を活用して社内のイノベーションを加速し、その成果を外部で活かす市場を広げること、と定義した。そして、その核心は知的財産の戦略的な活用にあり、内部の開発と外部の技術を融合させてシナジーを生むことだ、と続けている。

つまり本来の意味は、単なる外部連携ではない。自社の知財と外部の知見を戦略的に統合し、新しい価値を生み出すことにある。日本で広まった「組むこと自体が目的」の形は、この定義から外れている。出発点に自社の知財や構想が据わっていなければ、統合すべき中身が存在しないからだ。

もう一つ見落とされやすいのが、定義が流入と流出の両方を含んでいる点だ。本来は、外部の知を取り込むだけでなく、自社の知を外部で活かすところまでが射程に入っている。ところが日本での使われ方は、大企業が外部に乗っかるという一方向の流入に縮こまりがちで、流出による収益化の発想が抜け落ちる。両方向を扱える企業ほど、同じ知財から得られるものが増える。

この定義に忠実であろうとすれば、進む順番は自ずと決まる。まず自社の構想とアセットがあり、その上で外部の知見が融合の相手になる。順番が逆になった瞬間、それは提唱者の言うオープンイノベーションではなく、第4節で見た乗っかりに変わる。

7.オープンイノベーション成功事例:自主自律を保った協業

協業や提携そのものが悪いわけではない。問題は順番にある。まず自分たちで事業か、少なくともその構想をつくる。そのうえで足りないピースを他社に頼る。初手から他社頼みになることをやめれば、協業は強力な武器になる。実際、自社で構想を固めたうえで有能な協力者を得てヒットを生んだ事例には、共通の特徴がある。旗振り役の企業が主体性を持って推進し、相手はあくまで不足を補う側に回っている点だ。

ここで言いたいのは自前主義の礼賛ではない。外部との連携そのものを否定しているのでもない。開く前に自社の中心を固めておくこと、その一点である。中心がないまま外部を探せば依存に向かい、中心を確立してから相手を探せば対等な補完になる。同じ外部連携でも、この順序が結果を分ける。

この順番が効いた例として、津島のnoteでも主体性を保った協業が紹介されている。一つは、ユニクロと東レが共同開発したヒートテックである。保温性と軽量さで広く普及した冬の機能性インナーで、20年以上にわたり15億着を超えて売れている。ここで構想と販売の主体はユニクロにあり、東レは素材技術という足りないピースを担った。

もう一つは、JR東日本とブイキューブが共同開発したSTATION BOOTHである。駅などに置かれる個室型のワークブースで、Web会議や仕事に使え、全国の1000か所以上へと広がった。駅という資産と利用の場を持つJR東日本が主体となり、ブイキューブはブースと通信の技術で不足を補っている。

どちらも、先進的なスタートアップにすり寄って生まれたものではない。旗振り役の企業が自社の構想とアセットを中心に据え、足りない部分だけを相手に頼った結果である。流行りの相手に近づけば何かが生まれる、という期待からは、こうしたヒットは出てこない。

図6 依存度のスペクトルと協業の位置

この主体性は、抽象論ではなく実例で確かめられる。ある総合化学メーカーは、自社の機能性繊維という技術を核に、衣料企業と組んで保温性の高い機能性インナーを生み、20年以上にわたり世界で15億着規模を売った。ある鉄道会社は、自社の駅という資産を起点に、会議システムの企業と組んで個室型のワークブースを開発し、全国に千か所以上を展開した。いずれも、構想とアセットの中心に旗振り役の企業がいて、相手はそこに不足を補う形で参加している。

海外の代表例も、骨格は同じである。ある消費財大手は、社外の発明や技術を自社の開発に取り込む仕組みをつくり、印刷技術を持つ外部と組んでスナック菓子に絵柄を刷る新商品を、従来の半分以下の期間で市場に出した。ある玩具メーカーは、ファンが製品案を投稿し投票する仕組みを設け、顧客を開発の相手に位置づけて、手薄だった大人向けの市場を開いた。ある自動車メーカーは、自社のコネクテッド戦略の中に外部の位置情報技術を統合し、短い言葉で目的地を指定できる機能を量産車に載せた。ある製薬大手は、自社の化合物やデータ、設備を外部に開いて共同研究を募り、世界規模の連携網へと育てた。

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大企業の新規事業におけるオープンイノベーションの重要性と海外成功事例

自社の経営資源と内部R&Dだけに依存する手法では、技術の複雑化やグローバル競争の激化に対応しきれなくなりました。 それにともない、オープンイノベーションにより社外の知見を取り入れ、製品開発スピードの向上や研究開発 […]

国内にも、自社のアセットを核にした例がある。ある日用品大手は、自社の解析技術を中心に据え、検査事業の知見を持つ企業と組んで、新しい郵送検査のサービスを生み出した。ある化学メーカーは、高感度なセンシング素材を核に、クラウド事業者と連携して介護向けの見守りの仕組みを実現した。いずれも相手のニーズと自社技術の適合に加えて、価値の中心がどこにあるかが最初から明確だった。だから外部の力が中心を薄めるのではなく、中心を厚くする方向に働いた。

これらが成功例の後付けに見えるかもしれない点は、隠さずに言っておきたい。ただ、並べてみると一つの原理が浮かぶ。中心に自社の戦略とアセットがあり、外部はその不足を埋める補完として呼ばれている、という構図だ。中心が空のまま相手を探す取り組みと、中心を固めてから相手を探す取り組みは、見た目が似ていても結果が分かれる。だからこそ、進め方には順番がある。

図7 自主自律を保った協業の進め方

8. 協業前に確認すべきチェックリスト:5つの自己点検項目

最後に、実務で使える視点を整理する。外部から学ぶ姿勢と、自社のコアを磨く姿勢は、どちらか一方では足りない。知の探索と知の深化と呼ばれるこの両輪のうち、外注に頼りすぎると自社の開発力は痩せていく。競争力を支える中核の技術は、相手に委ねず自前で磨き続ける必要がある。協業に出すのは、あくまで中核の外側だ。

相手と組むときは、対等で互いに利のある関係を初めから設計する。役割分担、知財の帰属、利益配分は、交渉の初期から法務や知財の専門家を交えて握っておく。上下関係に陥らず、互いの価値を認め合う姿勢が、後の摩擦を減らす。

相手を見極める軸は、事前に持っておきたい。事業領域の親和性、財務の状況、必要なリソースの有無、理念やミッションの一致といった観点から候補を絞ると、提携後の問題を減らせる。探し方は学会や展示会、コーポレートベンチャーキャピタルによる投資、アクセラレーターによる支援、専門のマッチング支援など複数あるが、どれを選ぶにせよ、自社の構想と不足している要素が明確になっていることが前提になる。そこが曖昧だと、相手選びの基準そのものがぶれてしまう。

具体的な手段としては、連携先を探すためのマッチングや仲介のプラットフォームがある。たとえば、企業や自治体が実現したい新規事業案を公開してスタートアップから協業を募るCreww Growth(クルーグロース、Creww株式会社)や、会員登録した企業や大学、自治体が提携相手として互いにつながれるAUBA(アウバ、株式会社eiicon)といったサービスがあり、東京商工会議所はこれらと連携して中小企業や小規模事業者のイノベーション創出を後押ししている。すでにオープンイノベーションに取り組む企業と組むのも一つの近道になる。ただし、こうした場はあくまで相手と出会うための手段である。自社の構想と足りないピースが先に定まっていなければ、登録しても基準のない相手探しに終わりかねない。

提携後の運用では、窓口となる担当者を頻繁に替えないことが、地味だが効いてくる。異なる文化を理解して橋渡しする役割は、時間をかけて育つものだからだ。あわせて、当初の計画に固執せず、小さな検証と小さな投資を繰り返して、見込み違いだったときの損失を抑える柔軟さも要る。

知財の扱いも、初期に設計しておく。相手に開く情報の範囲と、開く相手を先に決めておき、競争力に関わる中核は特に慎重に線を引く。必要に応じて秘密保持契約で守ることで、情報漏えいのリスクを下げられる。

そのうえで、目の前の取り組みが主体型か依存型かは、次の問いで点検できる。

協業の自己点検

  1. この協業は、課題の解決策(プロダクト)に具体的に絡んでいるか。
  2. 中心に据えているのは、自社の構想とアセットか。看板と資金だけになっていないか。
  3. 誰が結果責任を負うのかが、明確になっているか。
  4. 按分を踏まえても、狙うべき利益率を確保できる設計か。
  5. 初手から他社頼みになっていないか。まず自社で構想を固めたか。

株式会社unlock独自で作成

独立独歩で、まず自分たちの構想をつくる。そこから逃げないことが、遠回りに見えて結局は近道になる。協業は、その構想を実現するための手段であって、目的ではない。順番さえ間違えなければ、外部の力は新規事業を確かに前へ進める。きらびやかな相手の隣に立つことではなく、自社の中心を固めることから始めればよい。

自社で構想を固める際に使える支援サービス:

アイデアプランニング

unlock自身がお客様にオーダーメイドの新規事業アイデアを考案します。自社が認識する強みや資産だけではなく、リフレーミングを行うことで新たな強みを見出し、unlockの知見との掛け合わせで、斬新なアイデア提案を可能にしています。自社にアイデアがなくても、丸投げOKが特長。

新規事業の伴走支援

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新しい事業は、誰かに乗っかった先ではなく、自社の構想の延長に生まれる。協業はその構想を運ぶ手段であり、出発点を肩代わりしてくれる相手ではない。

出典と参考

本稿に掲載した図はすべて株式会社unlockが独自に作成したものです。事例の固有名は、広く公開されており論旨の中心となるものは実名で、その他は論旨に必要な範囲で一般化して記述しています。本稿は新規事業の実務上の見解であり、投資判断や法務判断を保証するものではありません。

この記事を書いた人
株式会社unlock 代表取締役社長 津島越朗

得意領域
テクノロジー(AI・ブロックチェーン・IoT等)をベースとした既存産業の革新・効率改善サービス(SaaS等含む)の新規事業
企画・開発・拡大(Growth Hack)、0→1(ゼロイチ)

経歴
2005年 株式会社リクルート入社(人材事業営業部)
2008年 同上(インターネットマーケティング局、マーケティング・新規事業企画)
2011年 株式会社ディー・エヌ・エー入社(サンフランシスコにて現地法人のマーケティング組織の立ち上げ)
2013年 株式会社DeNAライフサイエンス(東京大学医科学研究所と遺伝子検査MYCODEの立ち上げサービス&マーケティング責任者)
2014年 株式会社DeNAロケーションズ 代表取締役社長(海外のテクノロジーベンチャーとの合弁企業)
2016年 株式会社unlock設立