ドラッカーの視点から学ぶ、イノベーションを生むための新規事業戦略
経営思想家のピーター・ドラッカー(Peter Drucker)は、経営や戦略、リーダーシップ、組織論など多岐にわたる理論を提唱してきました。
その中には、新規事業戦略に役立つ理論もあります。
本コラムでは、イノベーションを生むための新規事業戦略をドラッカーの視点から考えます。
1. ドラッカーとは何者か?
ピーター・ドラッカー(Peter Drucker)は、現代経営学の父と称される経営思想家です。企業経営における「マネジメント」の概念を体系化し、特にイノベーションと起業家精神の重要性を強調しました。
新規事業の立ち上げにドラッカーの視点を取り入れることで、「顧客視点での価値創造」や「組織的な強みの活用」、「機会の適切な評価」へバランスよくアプローチできます。
とくに、既存の組織構造や文化がイノベーションを阻害することがある大手企業では、ドラッカーの原則を活用することで、より実践的な新規事業の成功確率を高められます。
成功確率についてはこちらのコラムもご参考ください。
「新規事業の成功確率は5%」は本当か? -データで読み解く成功確率-
当社のアカデミアでは、ドラッカーの視点をはじめ、新規事業立ち上げに必要な知識を3ヶ月間で習得できるようなプログラムを提供しています。興味がある方は、お問い合わせください。

アカデミア
2. イノベーションとは何か?
ドラッカーは、イノベーションを「新しい富を創造する活動」と定義しています。
企業が競争優位を維持するために、ドラッカーは、継続的にイノベーションを追求する必要があると強調しました。
また、イノベーションには、技術革新だけでなく、新たな市場創出やビジネスモデルの変革も含まれます。
そのため、イノベーションの本質は、「顧客にとっての価値を再定義すること」とされています。
イノベーションについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
イノベーションを生み出す組織とは?~ジョセフ・A・シュンペーターの原典から読み解く~

3. ドラッカーが提唱するイノベーションの7つの機会
ドラッカーは、イノベーションを生み出すための「7つの機会」を提唱しました。
3.1. 予期せぬ成功・失敗
企業の予期しない成功や失敗には、新たな事業機会が潜んでいます。
例:顧客が予想外の使い方をした商品が売上を伸ばすことがあります。
3.2. ギャップの存在
業界や市場のギャップを見つけることで、競争優位性を築けます。
例:大企業が参入しないニッチ市場
3.3. ニーズの変化
顧客の価値観やライフスタイルの変化を察知し、新たなサービスを提供することが重要です。
例:環境意識の高まりによるサステナブル商品の需要増
3.4. 市場構造の変化
競争環境や規制の変化が新たな市場を生み出します。
例:シェアリングエコノミーの台頭
3.5. 人口動態の変化
高齢化、少子化、都市化などの人口動態の変化を捉え、新たな市場に対応することが重要です。
例:高齢者向けのデジタルサービス
3.6. 認識の変化
人々の価値観の変化を捉えることで、新たな市場を開拓できます。
例:健康志向の高まりに伴うフードテックの成長
3.6. 新しい知識の活用
科学技術やデータ活用の進展を事業に応用することで、新たな価値を生み出せます。
例:AIを活用した業務自動化
4. 新規事業戦略におけるドラッカーの原則
ドラッカーは、イノベーションを推進するために以下の戦略を重視しました。
4.1. 顧客価値の創造を最優先に
新規事業の目的は、商品や技術ではなく、「顧客の問題を解決すること」です。
そのため新規事業戦略では、顧客が本当に求めるものに焦点を当てることが重要です。
4.2. 小さく始めて、迅速に改善する
ドラッカーは「最初から完璧な計画を立てるのではなく、小規模で試し改善を繰り返す」ことを推奨しました。
この考えは、迅速な試行と改善を繰り返し、最小限のリソースで市場に適応する事業開発手法である「リーンスタートアップ」の考え方と一致します。
4.3. 強みを活かした差別化
新規事業が競争優位を築くためには、自社の強みを活かした事業を選ぶことが重要です。
「自社が最も得意とする分野」を明確にし、その強みを最大限に活用します。
4.4. 機会を逃さないための「戦略的放棄」
新規事業の成功には、「捨てる」ことも重要です。
既存の事業やリソース配分を見直し、成長が見込めない事業からは撤退する勇気が求められます。撤退基準については撤退基準大全:先進企業から学ぶ新規事業の撤退基準①もご参考ください。

撤退基準大全:先進企業から学ぶ新規事業の撤退基準①
5. 大手企業における実践のためのステップ
ドラッカーの考えを大企業の新規事業戦略に当てはめるためには、以下のステップで適用します。
ステップ1:7つの機会に分類
大企業の新規事業戦略に当てはめるためには、自社のリソースと市場の課題を照らし合わせ、7つの機会に当てはめます。
大手企業では、社内の既存資産を活かすことが重要です。
分類時は、どの事業ドメインに強みがあるのかを明確にすることが求められます。
ステップ2:小規模な市場テスト
次に、パイロットプロジェクトを立ち上げ、小規模な市場テストを実施します。
市場テストでは、事業部内に小チームを作り、リスクを抑えながら実験的に進めます。
新規事業立ち上げの支援で培ったノウハウをもとにターゲットを明確化するターゲットファインダーやお客様のニーズに合わせて市場調査するマーケットリサーチを活用すると、市場テストの精度が高まります。

ターゲットファインダー

マーケットリサーチ
興味がある方は、ぜひお問い合わせください。
ステップ3:ビジネスモデルの修正
市場テストが終了したら、顧客のフィードバックをもとに、ビジネスモデルを適切に調整します。
ビジネスモデルの修正では、初期の顧客反応を分析し、組織の意思決定プロセスを迅速に進めます。
ビジネスモデルについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
ビジネスモデルの構造と新規事業アイデアの考え方
ステップ4:ステークホルダーとの連携
ビジネスモデルが完成したら、収益化戦略を明確にし、社内外のステークホルダーと連携します。
連携する際は、投資判断の基準を明確にし、経営陣の支持を得るための資料を作成します。
ステップ5:リソース配分の最適化
最後に、既存事業とのバランスを考えながら、リソース配分を最適化します。
具体的には、事業部間で調整し、新規事業が全社的な戦略と整合するようにします。
まとめ
今回は、イノベーションを生むための新規事業戦略をドラッカーの視点から考えました。
大手企業の新規事業担当者は、組織の強みを活かしながらも、俊敏なアプローチで事業を推進することが求められます。
ドラッカーの原則を活かし、柔軟かつ計画的に事業を進めましょう。

この記事を書いた人
株式会社unlock 代表取締役社長 津島越朗
得意領域
テクノロジー(AI・ブロックチェーン・IoT等)をベースとした既存産業の革新・効率改善サービス(SaaS等含む)の新規事業
企画・開発・拡大(Growth Hack)、0→1(ゼロイチ)
経歴
2005年 株式会社リクルート入社(人材事業営業部)
2008年 同上(インターネットマーケティング局、マーケティング・新規事業企画)
2011年 株式会社ディー・エヌ・エー入社(サンフランシスコにて現地法人のマーケティング組織の立ち上げ)
2013年 株式会社DeNAライフサイエンス(東京大学医科学研究所と遺伝子検査MYCODEの立ち上げサービス&マーケティング責任者)
2014年 株式会社DeNAロケーションズ 代表取締役社長(海外のテクノロジーベンチャーとの合弁企業)
2016年 株式会社unlock設立
