通る新規事業企画書の書き方|アイデア採用率88.9%のunlockが教える必須項目と審査通過のポイントを紹介

新規事業の企画書を作ったのに、社内で通らない。そう感じている担当者は少なくありません。企画書に何を書けばいいかは調べればすぐに出てきますが、書いたはずの項目が揃っていても評価されないケースが後を絶たないのが実情です。

株式会社unlockは新規事業の企画立案から実行までを伴走支援する会社として、これまで数多くの企業の新規事業提案に関わってきました。その中で、unlockがクライアント企業へ提案したアイデアが社内の検討チームで採用された割合は2026年8月現在で88.9%にのぼります。unlock自身が日々「どのようにアイデアを通すか?(気に入ってもらうか)」を考えています。そういった経験を活かし、この記事では、企画書に必要な項目やテンプレートといった基本情報に加えて、なぜ企画書が通らないのか、どうすれば通る企画書に変えられるのかを、支援の現場で得た知見とあわせて解説します。

1. 新規事業企画書とは

新規事業企画書とは、新しい事業を立ち上げる際に、事業の目的、解決したい課題、戦略、収支計画、リスクなどをまとめた文書です。ただし「企画書」とひとくちに言っても、提出する相手や検討の進み具合によっていくつかの段階があり、それぞれ書くべき内容の粒度が異なります。

企画書には複数の段階がある

企画書は、大きく2つの段階に分けて捉えると整理しやすくなります。

一つは、コンセプト段階の企画書です。課題や解決策、事業コンセプトは固まっているものの、収支計画までは作り込まれていない段階の企画書を指します。提出先も経営陣そのものというより、事業化の可否を最初に判断する管掌役員や担当部長であることが多くなります。

もう一つは、経営層への説明資料としての企画書です。こちらは収支計画まで含めてしっかりと書き込み、投資判断を仰ぐための資料になります。

どちらも同じ「企画書」と呼ばれますが、求められる完成度も読み手も異なります。自分がこれから作ろうとしている企画書がこのどちらの段階にあるのかを最初に意識しておくと、書くべき内容の過不足を防げます。

事業計画書との違い

事業計画書も、広い意味では企画書の一部だと捉えることができます。実務上は、3カ年程度のPL(損益計算書)を中心に据え、より数字に踏み込んで作り込んだものを事業計画書と呼ぶことが多くなります。企画書がまだ実績のない段階の狙いと見通しを示すのに対し、事業計画書は実際の数字や進捗をもとに計画を精緻化していくものだとイメージすると整理しやすくなります。

2. 新規事業企画書に書くべき項目一覧

新規事業企画書に必要な項目は、細分化の仕方によって6項目から12項目までさまざまに紹介されています。ここでは、項目同士の関係性や優先度の違いまで踏み込んで、12の要素に整理して解説します。

解決すべき課題

課題は、企画書の中で最も重要な項目です。理由は大きく2つあります。一つ目は、課題が事業全体の土台であり、その後のすべての意思決定の基準になるからです。課題が変われば、当然ながら解決策も変わります。二つ目は、課題の規模がそのままビジネスの天井を決めるからです。どれほど優れた解決策であっても、対象となる課題そのものが小さければ、事業として大きく育つことはありません。課題は大きければいいというものではありません。

unlockでは、なぜその課題が存在するのか、そしてなぜこれまで解決されてこなかったのかを解像度高く理解できている課題を「良質な課題」と呼んでいます。この理解が浅いまま設定した課題は、一見大きく見えても、その上に積み上げる解決策ごと説得力を失わせてしまいます。

出発点としては、市場や業界の変化、顧客の未充足ニーズなどを、具体的な数字や事実とともに示します。そのうえで、なぜこの課題がいまだに解決されていないのか、すでに参入しているプレイヤーはいるのか、いるとすればそのプレイヤーは課題を解決できているのかできていないのか、それはなぜなのかというところまで踏み込んで分析してください。この分析の有無が、課題の解像度、つまり「良質な課題」かどうかを決めます。企画書全体のページ数のうち2割から3割程度は、課題の説明に割く意識を持つとよいでしょう。

課題に対する解決策

課題に対してどのようなサービスや製品で応えるのか、その全体像をわかりやすく示します。ここで重要なのは、解決策そのものの目新しさよりも読み手が理解できるかどうかです。新規事業に詳しくない経営層であっても、課題と解決策のつながりが一読して理解でき、自社がやるべきだ、できそうだと感じられる書き方を意識します。

なお、解決策は課題と違い、後から変更が可能な部分です。この段階の解決策が最終形である必要はなく、検証を重ねる中で柔軟に見直していくものだと捉えておくと、最初の一歩を踏み出しやすくなります。

ターゲット

どのような顧客層に価値を提供するのかを明確にします。ターゲットは課題と切り離せない関係にあります。ターゲットが曖昧なままだと、誰のどんな課題を解決しようとしているのかという課題設定自体も曖昧になってしまうため、企画書全体の説得力を左右する重要な要素です。年齢や性別、職業、年収、居住地域といったデモグラフィック情報だけでなく、その顧客が抱える具体的な悩みや行動まで踏み込んで描写できると、解決策との整合性が伝わりやすくなります。市場調査や顧客インタビューを通じて、実在の人物のように解像度を上げていくことが望ましいです。

ターゲットの絞り込み方については、別記事で詳しく解説する予定です。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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マネタイズについてはこちらのコラムもご参考ください。

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先行プレイヤー調査

先行プレイヤー調査は、市場規模の算出よりも優先して必ず実施してください。同じ需要に対してソリューションを提供している存在は、必ずしも自社と同じ業界やビジネスモデルの直接的な競合とは限りません。だからこそ、間接的な代替手段も含めて広い意味での「先行プレイヤー」として捉え、調査の対象を広げることが重要です。

なぜ市場規模の調査よりも優先すべきなのでしょうか。先行プレイヤーがいれば、その市場ですでに何が受け入れられているのかがわかります。同時に、まだ解決し切れていないニーズがどこに残っているのかも見えてきます。さらに、その市場がレッドオーシャンなのかブルーオーシャンなのかを判断する材料にもなります。一見プレイヤーが多く見える市場であっても、実はまだ解決されていないニーズが残っているチャンス市場であるケースもあります。逆に、プレイヤーがまったくいない場合は、単に儲からない市場だから、あるいは誰もやりたがらないから参入していないだけ、という可能性も見えてきます。

もちろん、調査さえ行えばいいわけではなく、そこから得られたデータを「どう解釈するか」が極めて重要です。とはいえ、すでに市場に出ているプレイヤーや公開されている情報は販売促進を目的に情報を開示していることが多いため、集めること自体の難易度は高くありません。難易度が高くない割に得られる示唆が非常に大きいという意味でも、先行プレイヤー調査は必ずやるべき重要な項目です。専門性の高い領域であれば、その分野に詳しい専門家や近い領域の企業への取材も有効な情報収集手段になります。

ビジネスモデル

ビジネスモデルは、マネタイズ方法よりも広い概念です。ターゲットの定義、商流、協力会社との連携体制なども含めた、事業全体の仕組みとして記載します。新規事業企画書では、ステークホルダーが多くなることから文章で書くよりもビジネスモデル図として視覚的にわかりやすい記述をすることをおすすめします。

なぜ自社がやるのか

企画書の項目の中でも、経営層が最も注目するのがこの項目です。なぜ自社がやるべきなのか、そしてどのようなアセットを活用できるのかを、会社が掲げている方向性としっかり合致する文脈で整理することが重要です。市場性が高く魅力的な事業であっても、自社が取り組む必然性が弱ければ投資判断は下りません。

ここで言うアセットは、自社の技術やブランド、顧客基盤、取引先、既存事業とのシナジーといったものに限りません。拠点、人材、その地域における知名度など、自社が持つあらゆる資産をアセットとして捉え、それをどう活かせるのかを広く洗い出してみてください。項目を3つや4つに絞り込む必要はなく、思いつく限り書き出したうえで、そのアセットが今回の事業とどうつながるのかを説明できることの方が大切です。この項目については9章で改めて詳しく取り上げます。

市場規模

市場規模は、業界全体の売上高に自社が獲得を狙うシェア率を掛け合わせる考え方で概算できます。たとえば業界全体の売上高が2,000億円の市場でシェア10%を狙うのであれば、市場規模は200億円という計算になります。ただし新規事業は文字通り新しい取り組みであるため、公的機関や調査会社のデータが都合よく網羅的に揃っているケースはむしろ稀です。ファクトの整理や成長性を示すために算出はしますが、優先度としては前述の先行プレイヤー調査より一段下げて考えて構いません。

作成する場合に直接的なデータがない場合は、近隣市場や代替製品/サービスに関するファクト情報を調査して、それを参考情報として提示したり、それらの情報から推計値を作成するやり方が有効です。

収支計画

最初の収支計画は、3年程度のスパンで作成することが多くなります。売上計画、費用計画、利益計画、資金調達計画を含めながら、特に次の2点は必ず盛り込んでください。

  • いつ黒字化(黒転)するのか
  • いつ累積赤字を回収できるのか

この2点は、経営層が投資判断を下す際に最初に確認するポイントです。黒字化の時期は単月の損益がプラスに転じるタイミングを指し、累積赤字の回収時期は事業開始から積み上がった赤字の合計を利益で取り戻すタイミングを指します。両者は異なる指標であり、黒字化してから累積赤字を回収するまでには一定の期間が空くのが通常です。この2つの時期をいずれも明示しておくことで、経営層は「最低限どれだけの期間を覚悟すればよいのか」を判断できるようになります。

売上計画は、単価×顧客数×購入頻度の積み上げで組み立てるのが基本です。新規事業には過去の実績がないため、売上予測の根拠が曖昧になりがちですが、だからこそ「なぜその単価なのか」「なぜその顧客数を見込めるのか」「顧客はどの程度の頻度で利用し、どれくらいの期間継続するのか」を一つずつ説明できる状態にしておくことが求められます。たとえば、単価は先行プレイヤーの価格帯や顧客ヒアリングの結果をもとに設定し、顧客数はターゲット企業数に想定コンバージョン率を掛けて算出し、頻度や継続期間は類似サービスの解約率や利用データから推計するなど、計算ロジックをたどれる構成にしてください。サブスクリプション型であれば月額単価×契約社数×平均継続月数、都度課金型であれば取引単価×顧客数×年間利用回数というように、自社のマネタイズ方法に応じた計算式を明示することで、経営層が売上の伸びしろやリスクを構造的に把握できるようになります。

費用計画は、初期投資とランニングコストに分けて記載します。初期投資にはシステム開発費、設備投資、初期の人材採用費などが含まれます。ランニングコストには人件費、マーケティング費、外注費、サーバー費用などが該当します。特に人件費は新規事業で最も大きな支出項目になりやすいため、専任で何名必要なのか、既存部門との兼務で対応できるのかを具体的に書くと、経営層にとっての投資規模が把握しやすくなります。

収支計画で最も問われるのは、数字の正確さではなく前提の透明性です。新規事業の売上予測が計画通りに進むケースはまずありません。経営層もそれを理解しています。だからこそ見られるのは、「どの前提に基づいてこの数字を出したのか」「その前提が崩れたとき、数字はどう変わるのか」という構造です。たとえば月間の新規獲得件数を20件と置いた場合、その20件が10件に下振れたらいつ黒字化するのか、30件に上振れたらどうなるのかを楽観、標準、悲観の3パターンで示しておくと、計画の信頼性は大きく上がります。

なお、収支計画は企画書の中に無理に詰め込むよりも、Excelなどの表計算ソフトで別途作成し、企画書にはその要点を転記する進め方をおすすめします。Excel側に前提条件と計算ロジックを持たせておけば、審査時に前提の変更を求められた場合にもすぐに再試算できます。

PoC計画

PoCとはProof of Conceptの略で、コンセプトの実証実験を指します。いきなり本格的な開発や量産に進むのではなく、事業案が市場のニーズに合っているかを、想定顧客や協業候補を巻き込みながら小さく検証する取り組みです。どのような検証を行うのか、検証目的と検証項目、KPIを、スケジュールとは独立した計画として具体的に記載します。

PoCの具体的な進め方については、別記事で詳しく解説しています。詳しくは以下の記事をご覧ください

新規事業のPoCとは?事業化につながる設計の5ステップを解説

新規事業の検証手段として、PoC(Proof of Concept:概念実証)は広く定着しました。 一方で、PoCを実施したのに事業化に至らないという悩みも、同じだけ広がっています。 経済産業省が「DXの取組状況について […]

スケジュール

スケジュールは、単なる工程表ではなく「自分たちは今後このように事業を進めていく」という意思を示すためのものです。企画から検証、実装、本格展開までの主要なステップと、それぞれの完了条件を明記します。

経営陣や意思決定者が投資判断を下すには、その事業が今後どう進んでいくのか、たとえば3年かかるものなのか、1年でどの程度立ち上がるのかが見えていなければ、投資の対象として検討のテーブルにすら乗りません。あわせて、自分たちのロードマップと次に取るべきアクションが明確に見えていることを示せれば、それ自体が「ぜひやらせてください」という説得材料になります。スケジュールは具体的に書き込んでください。

ビジョン・KGIとKPI

事業が目指す理想的な未来像をビジョンとして言語化し、事業全体が向かうべき方向性として示します。単なるスローガンではなく、社員やステークホルダーが共感し、行動の指針にできる具体性を持たせることが大切です。そのうえで、ビジョンの達成度を測るためにKGI(Key Goal Indicator、最終的なゴール指標)と、その達成に向けた中間指標であるKPI(Key Performance Indicator)を設定します。5年後に売上高を年間100億円にする、といった具体的な数値目標がKGIにあたります。

3. そのまま使える新規事業企画書の型と記入例

項目が揃っていても、それをどう配置すればいいかわからないという声もよく聞きます。ここでは社内提出用に使える1枚企画書の型を紹介します。

1枚で伝える新規事業企画書の型

社内での一次提出や、経営層への初回説明では、詳細な資料より先に全体像が1枚で伝わることが重要です。以下の5つのブロックで構成すると、情報の過不足なく伝えられます。

  • ブロック1 事業タイトルと概要:「〇〇業界向けの〇〇サービス」のように一言で事業の姿が伝わる表現にします。
  • ブロック2 課題と解決策:誰のどんな課題を、どう解決するのかを対比させて示します。
  • ブロック3 ビジネスモデルと収益:お金の流れと収益化のポイントを図や数字で示します。
  • ブロック4 なぜ自社か?:なぜ自社が取り組むべきなのか、使えるアセットは何なのかを示します。
  • ブロック5 実行計画とKGI・KPI:スケジュールと、達成度を測る指標を並べます。

一次提出の段階では、ブロック5の実行計画やKGI・KPIまで固めきれていないことも珍しくありません。この段階ではブロック5を省略しても構わないので、その分ブロック4のアセットの記述に厚みを持たせることを優先してください。経営層がまず知りたいのは、「なぜ自社がこの事業に取り組むのか」だからです。

1枚に収めることを目的化して情報を削りすぎる必要はありません。あくまで全体像を先に伝え、詳細なデータは2枚目以降に添付する構成にすると、経営層の理解を得やすくなります。なお、収支計画のように数字の積み上げやシナリオ比較が必要になる項目は、この1枚の中で作り込むのではなく、別途Excelなどの表計算ソフトで試算したうえで、その要点だけをこの1枚に転記するという進め方が実務的です。詳細な根拠をExcel側に持たせておくと、後からの修正や精査もしやすくなります。

4. 説得力を高める書き方のポイント

同じ項目が揃っていても、説得力のある企画書とそうでない企画書には差があります。

数値・データで裏付ける

市場は伸びています、ニーズがあります、といった定性的な表現だけでは説得力を持ちません。官公庁の統計や業界団体の調査、シンクタンクのレポートなど、信頼性の高い情報源から得た数字を根拠として示します。目的や目標についても、リスクヘッジのためといった抽象的な表現ではなく、5年以内に売上の3割を新規事業由来にする、といった具体的な数値目標に落とし込みます。

リスク・撤退基準まで書く

うまくいくシナリオだけでなく、うまくいかなかった場合にどう対応するかまで記載します。想定されるリスクと、その対策、そして撤退を判断する基準となる指標をあらかじめ示しておくことで、見通しが甘いという印象を避けられます。実現できなかった場合のダウンサイドまで考えている企画書は、経営層や投資家に安心感を与えます。撤退基準の具体的な設計方法については、別記事で詳しく解説しています。詳しくは以下記事をご覧ください。

新規事業の撤退基準とは?|41社調査と18社事例でわかる決め方・判断基準・撤退ラインの設計法

新規事業の撤退基準とは、事業を続けるか撤退するかを判断するために、あらかじめ定めておく条件や指標のことです。 ただし、撤退基準は単なる管理ツールではありません。どのような基準を設けるか、あるいは設けないかという判断そのも […]

自社の強みで差別化する

同じような事業に他社が参入する可能性を踏まえ、自社ならではの強みや、他社が真似しにくい優位性を明記します。自社の技術力やブランド、既存の顧客基盤といったアセットをどう活かすかを具体的に書くことが、後の章で解説する「なぜ自社がやるのか」という問いへの答えにも直結します。

5. なぜあなたの新規事業企画書は通らないのか

ここからは、unlockが新規事業の伴走支援を通じて蓄積してきた、企画書を「通す」ための知見を紹介します。unlockはこれまで、代表の津島がリクルートやDeNAで新規事業の企画から社内稟議の通過、サービス化までを一通り経験してきたことも含め、組織として数多くの企業の新規事業審査に伴走してきました。その中で見えてきたのは、良いアイデアが評価されない背景には、起案者と評価者の間に構造的なすれ違いがあるという事実です。

ある調査によると、新規事業の提案経験者のうち9割程度が、一度は不採用を経験しているといわれています。裏を返せば、一度も不採用にならずに事業化までたどり着く方が圧倒的な少数派だということです。まずは不採用が特別なことではないという前提に立ったうえで、なぜすれ違いが起きるのかを見ていきます。

起案者側からは、たとえばこうした声がよく聞かれます。

  • 結局は起案者が誰かで判断されたのではないか
  • 事業の中身をきちんと見てもらえた実感がない
  • 「もっと具体的に」と言われても、何が足りないのか教えてもらえない
  • 評価のポイントが不透明で、改善点がわからない
  • 通った企画と比べて、自分の企画に何が欠けていたのかがわからない
  • 最終的に「夢がない」の一言で終わってしまう

一方の評価者側にも、口には出しにくい悩みがあります。

  • 初期投資が大きく、回収の道筋が見えない
  • 着眼点は良くても、起案者がやり切れるかが見えない
  • 提案内容と会社の方向性との接点が見えない
  • 実現までのステップが甘く、途中で頓挫した場合の組織的なリスクが怖い
  • 失敗したときの責任の所在が不明確で判断しづらい
  • 将来のスケールや他事業とのシナジーが見えず、周囲への説明責任を果たせない

このズレが生まれる根本には、「評価すること自体の難しさ」があります。成功するはずのアイデアであっても評価者が低く見積もってしまうことがあれば、逆に成功しないアイデアに高い評価がついてしまうこともあります。

わかりやすい例として、評価×成功で4象限のマトリクスをイメージしてみてください。縦軸に評価されやすいかどうか、横軸に実際に成功するかどうかを取ります。本来は成功する可能性が高いのに評価されにくい象限に落ちてしまうアイデアは少なくありません。実際、マネーフォワードやビザスクといった今では広く知られる事業も、立ち上げ当初の有名なピッチコンテストでは高く評価されなかったという経緯があります。

だからこそ、起案者側は評価者が何を評価基準にしているのかを正しく理解したうえで提案する必要があり、評価者側にも起案されたものを正しく評価するという姿勢が求められます。この構造を裏付けるように、unlockが実際にあるクライアント企業の評価者にヒアリングし、社内で「評価されやすいアイデア」として言語化してもらった要素は次の5つでした。

  • 自社で権利を保有し、ライツビジネスとして展開できる
  • 海外マーケットも視野に入れられる
  • 新規性が高い
  • なぜそれが必要とされるのかをストーリーで語れる
  • 自社グループのミッションを体現している

反対に、「評価されにくいアイデア」に共通していたのは次の3つです。

  • お金の匂いがしない、つまり初めから収益性が極端に低いと見込まれる
  • 成果が出るまでに極端に時間がかかる
  • 自社グループのイメージを損ねる

ここまでを踏まえると、あなたの企画書が通らない理由が見えてきます。それは、アイデアの良し悪しではなく、評価者が何を評価基準にしているかを理解しないまま、自分が伝えたいことだけを書いてしまっていることがほとんどだということです。良いアイデアを持っているだけでは足りず、評価される形に仕立てる視点が欠けている限り、どれだけ項目を丁寧に埋めても企画書は通りません。次の章では、その評価者の視点をどう取り入れるかを具体的に見ていきます。

6. 社内で「通る」新規事業企画書に変える3つの視点

前章で見た通り、企画書が通らない背景には、評価者が実際に何を評価基準にしているのかを起案者側が理解できていない、というズレがあります。ここからは、評価者側の視点をどう取り入れればいいのかを、3つの視点に整理して解説します。

会社の「傾向」を読む

新規事業の社内公募やビジネスコンテストには、多くの場合募集要項が用意されています。この文言を丁寧に読み込むことで、その会社が何を重視しているかが見えてきます。たとえば、ある大手製造業の新規事業公募のエントリーシートには、独創性の項目に「着眼点はかつてなかったものか」という一文があり、実現性の項目には「ムーンショットレベルの壮大なアイデアを歓迎します」と明記されていました。このような会社であれば、小さくまとまった堅実な事業案よりも、多少実現性が読み切れなくても新規性の高い壮大な事業案の方が評価されやすいと読み取れます。募集要項がない場合でも、中期経営計画や社長・役員の発言、社長インタビュー記事の中に、会社が目指す方向性は表れています。ポイントは、会社が実際に使っている用語をそのまま企画書の中で使うことです。言い換えずに同じ言葉を使うことで、方向性が一致していることが直感的に伝わります。

実際に新規事業の審査会議に同席していると、満場一致で決まることはほとんどありません。多くの時間が割かれるのは「儲かりそうか」ではなく「なぜうちがこの事業をやるのか」という一点です。この論点で反対しにくい状態を作れているかどうかが、通過を大きく左右します。

スイートスポットを見極める

新規事業には、縦軸に商品・サービスの新規性、横軸に市場・顧客の新規性を取るマトリクスで捉える考え方があります。この座標のどこに「自社の新規事業にとってちょうどいい距離感」があるかは、会社によってまったく異なります。既存事業に近い事業を歓迎する会社もあれば、あえて距離のある飛び地のような領域に挑戦してほしいと考える会社もあります。unlockでは、この会社ごとに異なる「ちょうどいい距離感」をスイートスポットと呼んでいます。スイートスポットとは自社の事業領域からどの程度離れた場所を会社が求めているのかという社内ニーズを見極め、探り当てることです。自社のスイートスポットがどのあたりにあるのかを、過去に承認された企画や会社の発信からつかんでおくことが対策になります。

対策としてリーンキャンバスを使う企業も多いですが、9つのマスを満遍なく埋めるだけでは意味がありません。会社ごとの傾向やスイートスポットに応じて、どの部分に重点を置いて情報を集めるべきかはまったく異なるからです。その会社で何が評価され、何を求められているのかを深く理解しないまま埋めた企画書は、単にマス目を埋めただけの資料になってしまいます。評価基準の理解が浅いままフレームワークを網羅的に埋めることよりも、評価基準を読み取ったうえで各項目について「本当にそうか」「なぜそう言えるのか」と繰り返し問い直して濃淡を付けて磨き込む方が、通過率への影響は大きくなります。

事務局を味方につけ、一次情報を集める

社内公募やビジネスコンテストには運営を担う事務局が存在します。事務局の本来の役割は審査そのものではなく、1件でも多く質の高い事業案を通過させることです。つまり事務局は起案者にとって敵ではなく、目的を同じくする味方です。まだ粗い段階の企画であっても、事務局に相談することで、現場部門や技術部門へのヒアリングを仲介してもらったり、提出前の企画書の壁打ち相手になってもらったりすることができます。起案者側から使い倒すくらいの姿勢で構いません。

あわせて、自分自身での一次情報の収集も欠かせません。生成AIの普及により、論文や特許情報、海外の事例といった二次情報は誰でも容易に集められるようになりました。だからこそ、顧客や現場の当事者に直接話を聞いて得られる一次情報の価値が、相対的に高まっています。一次情報といっても大掛かりな調査は必要なく、家族に困りごとを聞いてみる、店頭のスタッフに話を聞いてみるといった身近な聞き取りでも十分に価値があります。

7. 新規事業企画書の通過率を高める6つのチェックリスト

企画書を書き終えたら見直す観点として紹介しますが、実際にはこれから紹介する6つの観点は、企画書を執筆している最中にも常に意識しておきたい重要なポイントです。

①課題のボリュームは十分か

前述した通り、課題は一度設定して書き始めると、後から簡単には書き換えられません。解決策は後から磨き直せますが、課題設定を土台から変えると企画全体が揺らいでしまいます。だからこそ、次の点を丁寧に確認してください。

  • 具体的な数字が入っているか
  • なぜこの課題が存在するのかを説明しているか
  • 代替手段はないか、あるとすればなぜそれでは不十分なのか
  • この課題を放置するとどうなるのかに触れているか

②解決策はわかりやすいか

文章で長く説明するより、ビフォーアフターの比較表にして記号で見せる方が伝わります。品質・コスト・スピードを表すQCDという考え方で整理するのがおすすめです。たとえば牛丼チェーンの「早い、安い、うまい」のように、この3つの軸でBefore/Afterを対比させると、多くの評価者に一目で伝わる比較表になります。あわせて、なぜその解決策を選んだのかという理由も明記します。

③将来性は書いてあるか

市場は伸びます、という定性的な言葉だけでなく、定量データと定性情報の両方で裏付けます。業界団体や調査会社が公表している市場規模の推移など、客観的な数字を添えることが重要です。

④なぜ当社がやるのかは書いてあるか

自社の特許技術や販売網、ブランド力といったアセットをどう活かすかを具体的に書きます。自社の中期経営計画や事業方針との整合性も言葉にします。短期的な収益が小さくても、将来的な事業領域の拡大につながる展望があれば、それも記載する価値があります。

⑤実現性について触れてあるか

新規性が高い事業ほど実現性は語りにくくなりますが、必ず触れておくべき項目です。たとえば大きな倉庫を一棟借りるのではなく、まずは他社の倉庫の空きスペースを間借りするというように、投資規模を小さく始められる形にできないかを考えてみてください。スモールスタートできることを示せれば、承認のハードルは大きく下がります。今の時点で完全な答えがなくても、どう実現に近づけていくかの手順を示すことが評価者の後押しになります。

⑥どうやって売るのかは書いてあるか

良いアイデアでも売り方が定まっていなければ事業として成立しません。高度で洗練された営業戦略である必要はありませんが、どうやって売るのかを徹底的に考え抜いている姿勢を評価者に示す必要があります。新規事業開発において、ここは最も見落とされやすく、同時に最も難しく、そして最も重要なポイントです。クラウドファンディングを使ったテスト販売など、ハードルの低い検証方法を組み込むのも一つの手です。

経営層が納得する新規事業企画書のポイントについては、以下記事も参考にしてください。

経営層が納得する新規事業の企画書を作るポイントは?

Q. 経営層が納得する新規事業の企画書を作るポイントは? A. 色々あるが、最も重要なのは「なぜ自社がこの事業を立ち上げるのか」の理由とその理由の説得力が高いこと。 要素を分解すると以下の3点 ・自社のアセットを有効に使 […]

8. 番外編:プレゼンで評価を勝ち取る方法

企画書の中身がどれだけ練られていても、最終的な審査はプレゼンテーションを通じて行われることがほとんどです。審査員はロジックだけでなく、起案者の熱意も見ています。新規事業は不確実性が高く、これはいけるという確信を持てるかどうかも評価の一部になるからです。

うまく話せないこと自体は問題ではありません。緊張して噛んでしまっても、自信なさそうに見えても、それ自体が評価を下げる決定打にはなりません。「緊張しない人はダメだと思う」というのは、かつてイチロー選手が語った言葉です。適度な緊張はむしろパフォーマンスを高めるという指摘は、『いい緊張は能力を2倍にする』という書籍でも紹介されています。

プレゼンの場では、次の2点を意識してみてください。

  • 書いてある内容を上から順にすべて話そうとせず、強調したい点だけを選んで話す
  • 強調したい点では声を大きくし、審査員の目を見る。目安として3回以上は目を合わせる

企画書の完成度と同じくらい、この場での伝え方も通過率に影響します。

9. 新規事業企画書で経営層・審査員が最も見ているポイント

これまでも繰り返しお伝えしてきましたが、極めて重要なポイントであるため、改めてお伝えします。unlockが150社以上の支援をしてきた中では、企画書のあらゆる項目の中で、経営層が最終的な判断で最も重視するのは、市場規模やトレンドの魅力度ではなく「なぜ自社がこの事業に取り組むのか」という点です。市場性が高く見える事業であっても、自社のアセットを活かせず、組織としての必然性が乏しければ、投資判断は下りません。なぜなら、それが企業が新規事業をやる理由そのものだからです。ゼロから立ち上げるスタートアップとは違い、企業が新規事業を立ち上げる優位性は自社のアセットを存分に活かせることにあります。そのため、成功確率を高め、自社が取り組む理由になるアセット活用を経営層は非常にシビアに見ている傾向にあります。逆に、自社の強みとのシナジーや中長期的な戦略との合致が論理的に示されていれば、説得力は大きく高まります。自社の技術や顧客基盤、取引先、拠点、人材、地域での知名度といったアセットを活用できること、既存事業とのシナジーがあること、そして自社の理念やビジョンと事業の方向性が一致していること。これらをどれだけ具体的に語れるかが、企画書の説得力を最後に決定づけます。

この点がよくわかる事例が、リクルートのAirレジです。当時のPOSレジ市場は高額な専用機器が中心で、Airレジは無料で使える直感的なPOSレジアプリとして開発されました。POSレジというカテゴリ自体の認知度が低く、市場に浸透するまでには時間を要しましたが、中小事業者のアナログ業務を減らし、本来やりたかったことに時間を使えるようにするという明確なミッションを軸に、既存のメディア事業で培った顧客接点や顧客理解というアセットを活用できる点を示したことで、経営層の理解と支援を得ることができました。結果として、Airレジは決済やシフト管理なども含む十を超えるサービス群へと成長しています。

数字だけでなく、自社が取り組む必然性という定性的な根拠まで揃えて初めて、企画書は経営層を動かす資料になります。

10. まとめ

新規事業企画書には、課題、解決策、ターゲット、マネタイズ方法、先行プレイヤー、ビジネスモデル、なぜ自社がやるのか、市場規模、収支計画、PoC計画、スケジュール、ビジョンという12の要素が必要です。ここまでは多くの解説記事でも触れられている内容です。

一方で、項目を正しく埋めることと、その企画書が実際に社内で評価され、通過することの間には別のハードルがあります。起案者と評価者の視点のズレを理解し、自社の傾向を読み、評価者の目線に立ったチェックを重ね、最後はプレゼンで熱意を伝えきること。unlockが数多くの新規事業支援を通じて積み重ねてきたのは、この「通す」ための一連の視点です。実際にunlockがクライアント企業へ提案したアイデアの採用率は88.9%にのぼります。

新規事業の企画書作りは、うまくいけば自社に新しい収益の柱をもたらし、うまくいかなくても起案者自身の能力を大きく引き上げてくれます。これから企画書を作る方は、まず今回紹介した12の要素を埋めたうえで、6つのチェックリストで見直してみてください。

この記事を書いた人
株式会社unlock
事業プロデューサー 熊田竜次

得意領域
営業 & コンサルティング、Webマーケティング

経験業種
BtoC:人材、製造業、不動産、エンタメ、インフラ
BtoB:人材、AI開発、ソフトウェア(SaaS)、金融、インフラ

経歴
早稲田大学社会科学部 卒業。株式会社マイナビ、株式会社Speeeを経て現職。一貫して営業・マーケティングを始めとしたクライアントワークに従事。unlockでは、顧客が持つアセットと市場ニーズをつなぐ役割を、ビジネスサイドから支援。
支援プロジェクト数 50社以上 (2026年7月現在)。